消えない過去と記憶〜縛られる想い〜グリーン編
小さい頃に、起こってしまった消え失せない絶望の記憶。それが、俺の心を縛る。ある日の事、それはリーフが連れ去られる前の出来事。
「博士!」
「なんじゃ?」
休憩しているオーキド博士に、グリーンは尋ねた。
「いや、やっぱり何でもない!遊びに行ってくる」
オーキド博士はあきれた顔をしてグリーン、息子の走る後ろ姿を見つめるのであった。
「行ってらっしゃい」
そう、呟くオーキド博士であった。
〜2〜
(言えないよ……言えるわけない…俺がリーフとファイアを連れて、近くの森の中にある、小屋まで遊びにいくって…だって、止められるから…)
縛られることが嫌いなグリーン。なに不自由なく元気に暮らしたい。それがグリーンの思い。その思いが自分の思いを絶望の底に落ちるとは、思いも知らない。
「ね、ねぇ…もう帰ろうよ!外…暗いよ?グリーン」
ファイアの腕を掴みながらリーフはグリーンに言う。
「帰れねぇよ……」
「……え?」
リーフが震える声で言った。
「迷子になっちまった」
「だからあれほど言ったのにぃ!」
リーフが怒ってグリーンに言う。
「悪いとは思ってる!リーフだって、最初は行きたいって言ってたじゃないか!」
「喧嘩はやめろよっ!!」
ファイアが叫ぶ。ファイアの声に二人は体をビクッと震わせる。
「喧嘩したって、なにも変わらない…心に傷がつくだけだよ………小屋に戻ろ、リーフ、グリーン」
〜3〜
小屋で一日過ごした三人は朝まで眠っていた。
「ん……」
目を擦りながら、太陽の光が眩しくて目をつぶる。
「おはよう…ファイア、リーフ」
そう言って後ろを振り向くと、ファイアはちゃんと寝ていたが、リーフの姿が見当たらなかった。このとき、はじめてしった。三人で、子供だけでくるんじゃなかったと。言っておくべきだったと。言えば、行にはならなかったと。パニック状態になりつつも、俺はファイアを揺さぶり、起こす。事情を説明して、リーフを探す。だけど、どこにもいない。一人でどこかに行く、リーフじゃないことぐらい、二人は知っている。どこかに行くのなら、絶対に二人を起こしてから探検をする。それなのに、見当たらない。オーキド博士達がやって来て、親達は怒る。それどころじゃない事を、ファイアは冷静に説明した。
この時、俺は意識を無くしそうになった。リーフが居ないなんて、そんなの嘘だ。信じたくない。そう、思うようになる。
深い深い、癒えることのない傷を俺は自分で、自分自身に刻み込んでしまった。
それを昔も今も、後悔するようになった。
癒えることのできない、傷をー