ポケットモンスターFR・LG〜三人の旅〜 - 第一章 悲しい気持ち、優しい言葉
5話
目を覚ますと、変わらない景色。変わらない鉄格子。変わらない…ベッド。そこはいつも自分がいる場所でもあった。そして、何をされるのかも…わかっていた。なぜ、あの人に手を出したのか。敵うはずも無いのに。あの人が歩いてやって来た。そして、牢屋にいた私を捕まえた。

「っ………!い…や…来ないでよ!」

いつものはずなのに。変わらない光景なのに。自分が犯した罪にやっと気づいた。気づいてしまった。気づかなかった方が、自分は傷つかなかったはずなのに。気づいてほしかった自分もいる。でも、気づかずにずっとあのままでよかった自分もいる。本当の自分は…両方でもあった。どらちも自分であり、どちらでも自分じゃない。本当は…本当は帰りたい。自分の故郷…マサラタウンという街に。でも、従わないと、同じことをされる。今の恐怖も罪も全部押し殺して、やらないと…やらないといけない。従わないと。私は、信じる。必ず、助けに来るって。その間…その間はごめんね。ファイア、グリーン。でも、私は何で連れ去られたか、覚えていない。出会うのであれば、三人で旅をして、思い出を…作りたい。

「どうして、また涙を流している?苦しいか?つらいか?」

「…………」

腕を掴まれて、そうあの人は言ってきた。私は無言のまま何も話せない。思いが入り混じって。このまま居たい自分もいれば、帰りたい自分もいる。どう自分と接すればいいのか、わからなくなっていく。そんな自分が怖くて仕方がない。ロケット団の…ボスは、こういった。

「君は必要なんだよ。私たちの組織には」

そういわれて、いつもの自分に戻った。やっぱり必要なんだと。でも、帰りたい。本当にどうしたいのか、まだ決められない。帰りたいのか。はっきりできない。でも…私がここにいると、ファイアとグリーンとは敵となって戦う。けど逃げられない。逃げ道なんてないんだ。私は決めた…。ここに残ると。敵となっても戦うと。私は言った。

「こ、ここに…………残る…」

「いい判断だよ。さすが、部下のリーフだ」

ボスは私の手を放すとそう言い、廊下へ出た。そのあと、リーフを見向きもせず、

「やはり、いい奴だよリーフは…ふ…ふっははははは!」

廊下を歩きながら、笑って言うのであった。



〜2〜


「また………付け込まれた…」

リーフは言った。彼女は心の弱い自分に付け込むボスは…嫌いなんだと。あの言葉を言う羽目になったのは、ボスのせいだと。でも、手を付けられない。リーフは涙を流して囁くようにつぶやいた。

「たすけて……」

モンスターボールの中にいるのはゲンガー。自分のポケモンなのかさえもわからなくなっていく。もう、頭がおかしくなりそうだ…精神的にもつらくて、我慢ができない…だから、早く助けてほしい。何度も助けてと自分に言い聞かせるように彼女は言うのであった。

アラン ( 2015/12/31(木) 01:28 )