青いアンプル
次の日。
私は、アイ、マリ、ラキがケージで温室へ運ばれていくのを見送り、ケースの中でいつもとは違うフードを食べた。その後、別のケージに入ってアキラさんに今まで一度も入った事のない研究室まで運んでもらった。そして私は今、金属製の台の上に居る。アキラさんが、小さい声で
「ごめんよ」
と呟き、私を台に固定した。
怖いと思った。もしかしたら今日死んでしまうかもしれない。その思いを打ち消す様に考えた。サプライズかもしれない。ドッキリかもしれない。白いLEDに照らされた白い実験室には面白いほどに何もない。背後でドアの開く音がした。震えが止まらなくなった。レイさんの声がした。
「アンプルは?」
アキラさんの声もする。
「ここです」
いつもなら聞くだけで安心する二人の声が、恐ろしいものに感じる。怖い。怖い。怖い、怖い、怖い、怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い…!!台の上でばたばた暴れた。逃げられない、動けない、怖くて怖くてたまらない。
「始めましょうか」
レイさんが言った。
「ああああああああああああああああ!!!うわあああああああああああああああああいやだよ!怖い!!助けて!」
私は悲鳴をあげた。アキラさんがレイさんにアンプルを手渡す。注射器が薄い青の薬品を吸い上げる。
そして、レイさんが私の肩のあたりに注射器の針をぶすっと刺し、ピストンをゆっくり押した。冷たい薬品が血管に滑り込む。なにも変化はなかったけれど、怖かった。