私の日常
暖かな春のお昼頃。私達四つ子のイーブイは、研究所にある温室で遊んでいた。温室の中は、暖かいし遊ぶのに最適な木やら芝生やらがあって居心地がいい。私達は本当に恵まれている。朝は研究室のガラス張りのケースの中で目覚め、それからケージに入って研究員さんに温室まで運んでもらう。そこでずっと遊んで、一日三回のご飯を食べて、いつも同じ時間にケージに入って研究室のガラス張りのケースで眠る。三日に一回のお風呂があって、一週間に一回の健康診断がある。何から何まで良くしてもらって、私達は本当に幸せだ。
「みんなー、ご飯の時間よー!」
この研究所の所長であるレイさんのやさしい声がする。私達はまっすぐにレイさんのところへ走っていった。
「ラキ、マリ、サキ、アイ…四匹とも居るわね。…はい、ご飯よ。」
レイさんはそう言って私達のそれぞれのお皿にフードを入れてくれた。私に自分のお皿に駆け寄った。「サキ」と書いてある。私の名前はサキ。レイさんにもらった大切な名前だ。
お昼のあとはまた遊んだ。その生活がいつまでも続くと思っていた。
でも、数時間たっぷり遊んでケージに入って研究員のアキラさんに運んでもらっているとき、レイさんが言った言葉が少し気掛かりだった。
「いよいよ明日ね。」
って。
でも、そんな事気にしない。レイさんは私達を生んで力尽きて死んでしまったお母さんとそのショックが元で病気になってしまい、ついには死んでしまったお父さんの代わりに私達四匹を育ててくれた人なんだもの。嫌なこと、痛いこと、苦しいこと、怖いこと、辛いことはしないで、優しくしてくれる人なんだもの、決して悪いようにはならないはずだ。グレイシアのお母さんが死んでしまって、ブースターのお父さんが死んでしまって、二人の
温くなってしまった体、冷たくなってしまった体を抱いて、二人の死を惜しんで、哀しんで、泣いてくれた人が、二人を悼んでくれた人が酷いことをするわけがない。そうだ。きっとそうだ。
何より、レイさんはいつも私のことを
「大好きだよ。」
って言ってくれるもの。
揺れるケージの中、考えた。