第1話
青かった空も今はすっかり赤くなり、空一面が雲一つない茜色に染まっていた。
空が夕焼けに暮れると、海もまた空を真似するかのように茜の色を反射させる。
そんな夕方の海岸で夕日に照らされている3匹のポケモンがいた。
1匹は倒れており、1匹は心配そうに見つめ、1匹は倒れているポケモンを介抱していた。
「ど、どうしようルド...このままじゃ死んじゃう...?」
「息はあるようだ...でも弱ってるな...」
ルドと呼ばれたリオルのポケモンは倒れているポケモンの口元に手を当て、呼吸をしているのを確認した。
ルドの腕には茶色いポケモン、イーブイが抱えられていた。
イーブイは全身が濡れていて、元々暖かそうな体毛は体にぴったりくっ付き、被毛はたっぷりと水分を含んで持ち主の体温を低下させていた。
「リヒト、ギルドに行くぞ。ギルドに行ってこの子を診てもらうんだ」
「えっ...あのギルド行くの...?」
ルドはぴくりとも動かないイーブイを抱え上げリヒトに顎でギルドの方を示すが、リヒトは戸惑いの表情を浮かべていた。
どうやらギルドに行きたくない理由があるらしい。
「そんなこといってる場合かよ、行くぞ」
「うん...そうだね、分かった...」
ー※ー
草木が生い茂り鬱蒼としている森の中。辺り一面は緑、緑、緑。そんな暗い森中に少し明るくひらけた場所があった。
「なーなー?この状況やばくねー?」
「そうだな、全てコーヨーのせいだが」
ヘラヘラと笑いながらリンゴを齧る女、真後ろにはこれでもかと積まれたきのみの山、その横には女とは対照的に冷や汗をうかべながら周囲を見回す男。
そして女と男の周りには沢山の草ポケモンが逃げ場を無くすように取り囲んでいた。
どうやら女がきのみを集めすぎたせいで森のポケモンは怒り狂い我を忘れているようだ。
「はっはー!私はちょろっとお腹が空いたからーこの森のきのみを集めただけなんだぜ!何も悪いことはしていないんだな!!だからみんなはお家に帰ったほうがいいと思います!というか帰れ!」
「何でお前はポケモンの神経を逆撫でするんだ...」
男の言葉が紡がれる前に草ポケモン達は女に飛びかかった。