集団心理とグループ
二時限目。1-1のみんなはジャージに着替えグラウンドに集合していた。
授業の開始を告げるチャイムがなった。地獄の始まりである。
キーンコーンカーンコーン...
「よ〜し!。せいれーつ!。」
体育の顧問であるヤルキモノ先生の掛け声で綺麗に列を作る。
「俺がお前たちにバトルの厳しさを教え込む!。俺の質問は全てはいかいいえで答えろ!。」
『いいえ。』
クラス全員が即答した。
「見ろ!。あの登り行く朝日!。青い空!。お前たちも強くなりたいか!?。」
『はい!。』
一応ヤルキモノの指示は守っている。だがヨーギラスはやれやれ顔だった。
「先生、速く授業の方を...。」
学級委員長のシャワーズが
急かす。
「それもそうだな!。よーし、手始めにグラウンド10周!!。」
ピーーーーーー!
ヤルキモノが笛を吹くとみんなグラウンドを回り始めた。
「やれやれ、また走り込みか....。」
「なんだヒトカゲ....。朝のダッシュでもうへばってんのか?。」
フシギソウが列の先頭を走る。
「さすがフシギソウだな。体力だけはクラス1かもな。行くぞズバット!。俺についてこい!。」
フシギソウの後ろを走るワニノコとズバット。少し離れた位置にシャワーズ。その後ろは大分混雑していた。勿論最後尾を走るのはミズゴロウ。そして意外にもヨーギラスがミズゴロウの前を走っていた。
「ふん。こんなランニングなんて軽く流すに限るぜ。」
「ねえヨーギラス君。一緒に走っても良い?。」
「...。好きにしな。」
ピカチュウがヨーギラスと並んで走る。みんな
各々走る位置が決まってきた。
タッタッタッタッタ
丁度5周目に差し掛かったところ。列を後ろから見ていたヨーギラスがある事に気付いた。
「おい、前の連中を見てみろ。」
「え?、どうかしたの?。」
ピカチュウはヨーギラスに言われ先頭や後続の列を観察した。
「う〜ん....。特に可笑しな事もないけど....。フシギソウ君とシャワーズさんが独走してるくらいかな。」
今先頭を走っているのはフシギソウ。だがすぐ後ろにはシャワーズが追い上げてきている。
「まあ、目の付け所は悪くないが惜しい。良く見てみろ。同じ速度で走っている連中同士でグループ化している。」
「あ!、ほんとだ。」
最前列を走っているのはフシギソウ、シャワーズ、ワニノコ、ズバット、ヒノアラシ。
その後ろのグループはヒトカゲを始め、チコリータ、エイパム、サンドパン、ポチエナ。
その後ろをニャース、アーボ、マタドガス、ベロリンガ。
他にも4〜6匹でグループ化している集団がある。それはピカチュウ達も例外じゃなかった。
「集団心理って奴だな。同じ速度同士で走れば体力的、精神的にもプラスに働く。見ろ、俺達の後ろ。」
「はあ〜....はあ〜....。あと何周パチか〜?。パチはもう死にそうパチ〜....。」
いつの間にかパチリスがミズゴロウと最下位争いをしていた。
「パチリス!、ミズゴロウ!。いいか良く聞け!。俺の真後ろを走るよう意識しろ!。他の事は考えるな。」
「りょ、了解パチ...。」
「うん...。がんばってみる....。」
ヨーギラスは徐々にスピードを上げる。
(ヨーギラス君...。急にどうしたんだろ....。さっきまで軽く流すって言ってたのに...。)
ピカチュウもヨーギラスの横をキープ。この4匹にはある種の団結心が芽生えてきた。
タッタッタッタッタ.....
7周目に差し掛かった。最初に異変に気付いたのはヤルキモノ先生だった。
(ほお、あの最下位連中、どんどんスピードに乗ってきたな。気付いたようだな。この走り込みの本質...。)
最下位グループは他のグループを抜追い上げるまで前進していた。徐々に徐々にスピードを上げる。
全てヨーギラスの作戦通りだった。
そしてついに最初のグループを追い抜かした。
「凄い!。ヨーギラス君!。いつの間にか順位上げてるよ!。」
「おいピカチュウ!。黙って走れよ!。まだまだ速度上げるぜ!。」
ピカチュウは怒られてしまった。少し凹んでうつむいてしまう。
「前見ろ前!。集中しろよ!。考え出したら着いてこれないぞ!。」
「うん!。」
「いいか。俺とお前は風避けだ。これでミズゴロウやパチリスは少しは楽に走れるだろう。そして頭を空っぽにして酸素を使わない事だ。ただ俺達の背中を目指して走っていれば気付かずに速度も上がる。」
「そ、そうか!。やっぱりヨーギラス君は凄いや!。」
ピカチュウに褒められヨーギラスは顔を赤らめる。
「あ、あんま誉めんじゃねえよ...。意識しちまうじゃねえか...。」
その後もどんどんスピードを上げる。ニャース達を軽々と抜かし、ヒトカゲのグループが見えてきた。
「げ!、ミズゴロウ!。いつの間にここまで来たんだよ!。」
ヒトカゲが追い上げてきたミズゴロウ達に気付いた。
「やばい!。ここで抜かされればフシギソウになんて言われるか....。」
ヒトカゲはスピードを上げた。後ろを走っていたチコリータやポチエナを無視して独走してしまう。
「ちょ、ヒトカゲ!?。あんた何自分だけ速度上げてんのよ!?。」
ヨーギラス達は難なくチコリータを追い越しヒトカゲを追う。
(風避けを無くしちまったチコリータは速度が落ちちまってる。ヒトカゲもそろそろダウンするだろうよ...。)
「はあ...はあ....、なんだ....疲れが急に....。」
抜かされまいと意識してしまい急にスピードを上げたヒトカゲは体力の殆どを使い果たしてしまった。それ見逃さなかったヨーギラスは徐々にスピードを上げヒトカゲを追い抜いた。
「しまった!...。でももう体力が....。」
タッタッタッタッタ....
10週目。既に先頭グループはゴールしていた。少し時間を置いてヨーギラス達がゴールした。
「まじかよミズゴロウ!。お前結構良いタイムじゃん!。」
1位のフシギソウが激励の言葉を言いに来た。
「はあ...、僕は...ヨーギラス君の....背中を....追いかけてただけだよ〜...。」
「パチもピカチュウの尻尾を見ながら走ってたらいつの間にかゴールしてたパチ...。」
そしてヒトカゲもゴールした。少し悔しそうな顔をしていた。ミズゴロウに負けたのは少しショックだったのだろう。
「おやおや〜、ヒトカゲくーん。お早いお着きで。」
「からかうなよ!。」
しばらくして全員ゴールした。ヤルキモノ先生は笛を吹いて、疲れて倒れているポケモン達をを整列させた。
「よーし!。中々良い走りだったぞ!!。15分休憩して次はバトルについて教える!。」
(はあ〜...次はとうとうバトルか....。嫌だな帰りたいな....。)
バトルが相当憂鬱なピカチュウ。それを見ていたヨーギラスは少し驚いていた。
(俺でもへばる速度だったのに、えらく余裕そうなあの表情...。肩で息していない...。それに途中話しかける気力までありやがる...。ピカチュウ...。なにもんだあいつ...。)
続く→