体育の時間
7時のアラームと共にピカチュウは目を覚ました。
「...ハッ!!、いけない!!。」
ピカチュウは瞬間に遅刻と理解し飛び起きた。
次の日の準備もまともにしていない。慌てて目に付くすべての教科書をカバンに入れた。制服を着ながら寝ていたのが幸いだった。
タッタッタ!!!
ピカチュウは勢い良く階段を駆け降りた。
「あらあら〜、階段はゆっくり降りないと駄目よ〜。」
サーナイトの注意にも耳を貸さず急いで学校へ向かった。
「制服にシワが出来ちゃったな〜。可笑しくないよね....。」
制服についた
埃を払いながら重たいカバンを背負って走る。
しばらく走った先にミズゴロウ達を見つけた。どうやらヒトカゲ、フシギソウと一緒のようだ。
「はっ....はっ...追い付いた〜…。」
「おうピカチュウ。おはようさん。」
「お、おはようフシギソウ君。」
ピカチュウはフシギソウの横に並んで歩いた。4匹仲良く学校へ向かう。
てくてく....てくてく....
(凄い...憧れだったみんなと一緒の登校...。)
ピカチュウはいつも1匹で登校していたのでみんなでわいわい登校するのは憧れだった。
「ん?、ピカチュウ....お前その目....。」
横を歩いていたフシギソウがピカチュウの異変に気づいた。
「え?、ど、どうしたの?。」
「お前、目が物凄く腫れてんぞ。どうしたんだよ?。」
(ギクッ!!。)
「あ、ホントだ。結構晴れてるぞ。」
ヒトカゲもピカチュウの異様な目に気づいた。3匹でピカチュウの顔を覗きこむ。昨日の号泣のせいで目が大分腫れ上がってしまったのだ。
ピカチュウは一生懸命言い訳を探す。
(ど、どうしよう....。昨日の事は誰にも言えないし....。)
「あー、さてはー。」
ミズゴロウが口を開いた。
(う"う"!。まさか見られてた!?。)
ピカチュウはリーファンズの件がバレたんだと思いヒヤリとした。
「さては今日の体育の時間が憂鬱で眠れなかったんだなー。大丈夫だよー。僕も同じだよー。」
「えっ!?、あ!!、そう!。そうなんだよ!。あはは...。」
ピカチュウは何とか誤魔化せた。
「なんだピカチュウ。お前もバトルは苦手か?。心配すんなって。ミズゴロウよりトロくて弱い奴早々いねえよアハハハ。」
「もーフシギソウ君はひどいなー。」
ミズゴロウはフシギソウの毒舌に苦笑いを浮かべた。それを見てヒトカゲがミズゴロウの肩を叩く。
「そんなことないさ。タイプの愛称的にミズゴロウの方が俺より有利だよ。逆にフシギソウには負ける気がしないな。」
ヒトカゲはミズゴロウの肩をもってあげた。それを聞いてフシギソウは不機嫌そうだ。
「ふん!。用は実践だぜ。なあピカチュウ。」
「あっ!!...うん...。」
上手く話を
反らせたはいいが体育の話を聞いて余計落ち込んでしまった。
(はあ〜、体育か〜...。憂鬱だな〜。)
体育。ポケモン界でのバトルの練習。バトルでの腕っぷしが良ければ探検家や救助隊。ジムリーダーやチャンピオンにだってなる事が出来る。まさしくポケモン界での優劣を決めると言って良い。ピカチュウにバトルの素質なんて皆無に等しかった。
のろのろ...
ピカチュウの足取りがほかの3匹と比べると遅くなっていた。
「おいピカチュウ!。そんなのろのろだと遅刻しちまうぞ。よ〜し、学校まで競争だ!。」
「えーやだなー。」
「おっ、良いねえ。素早さを鍛えられるし!。やってやろうじゃん!。なっ?、ピカチュウ。」
「え!、う、うん。」
4匹は横一列に並んだ。
「よ〜し!、いくぜ!。よーーーーーい!。」
4匹は助走の構えに入った。
タッタッタ!
「あああ!。フシギソウの奴!!!。」
ドンを言う前にフシギソウは走り出してしまった。完全なフライングだ。
遅れて3匹も走り出す。
「くそ!!。あんなに引き離されたら勝てるわけないだろ!!。」
ヒトカゲが文句を良いながらフシギソウの背中を追う。だがフシギソウに追い付くどころか引き離されていく。フシギソウはフライングしなくても速かった。
タッタッタ
「??!。まじか!?。」
ヒトカゲの後ろからピカチュウが追い上げてきた。
ヒトカゲを抜かしどんどんフシギソウに追い付いていく。
「へへ、真面目に走るかよ!...って!?。」
フシギソウが振り返った時、もうすでにピカチュウはそこまで来ていた。
「やばいっ!。」
フシギソウも全力疾走で走る!。だがどんどんピカチュウが追い上げる。
しばらく走ったらゴール地点の校門が見えてきた。
フシギソウ、ピカチュウ。相当の接戦だ。お互い先頭を譲らない。
(くそお!。ここまでやる奴とは...。こうなったら.!..。)
フシギソウはバレないようにツルをピカチュウの背後に忍ばせた。そしてタイミング良くピカチュウの足をかけた。
「
わわ!!。」
ピカチュウはバランスを崩しよろめいてしまった。
(チャンス!!。悪いなピカチュウ!!。)
一着になったのはフシギソウだった。
「いっちゃーく!!。どうよ俺の神速は!?。」
「はあ....はあ....。凄いよフシギソウ君....。参っちゃったよ...。」
「はあ...はあ....。おいフシギソウ!。ズルいぞお前!。」
少し遅れてヒトカゲが校門に着いた。
「追い付けもしない奴が!、負けよしみは恥ずかしいぜ!?。」
「くっそう!。体育の時間じゃ覚えてろよな!。」
ヒトカゲはガミガミ言いながら学校へ入っていった。
(はあ...。気づかなかった事にしよう.....。)
ピカチュウはフシギソウのツルに気づいていた。だが気を使って本人には言わなかった。
ピカチュウもヒトカゲ達の後を追う。
「あれ?、そう言えばミズゴロウ君は?。」
『あ!。』
続く→