派閥(はばつ)
授業の終わりを告げるチャイムが鳴った。
キーンコーンカーンコーン
午前の授業が終わり休み時間に入った。仲の良いポケモン同士で輪になりお弁当を持ち寄った。皆楽しそうに食べている。ピカチュウはその空気に耐えられずクラスを出て食堂に向かった。
「お弁当も作ってきてないし....、食堂でなんか美味しい物でも買おう!。」
ピカチュウは1階にある食堂へ向かうべく廊下へ出た。食堂へ向かう途中の廊下でヨーギラスを見つけた。どうやらヨーギラスも食堂へ行くらしい。
(あ、ヨーギラス君、話しかけたらまた怒られるかな...。後ろを付いていくだけにしよう。)
ピカチュウはヨーギラスの後ろを付いていった。ヨーギラスはあまり近づいて欲しくなかったようだ。
「おいあれ見ろよ!、あいつヨーギラスじゃないか?。」
「ホントだ!。あんま見てると目付けられるぞ!。」
「噂通りの奴だな。」
「ヤバい....。今目が合った....。」
ヨーギラスの通る道には誰も近づかなかった。皆脇道に逸れていった。ヨーギラスの近くにいるのは後ろを付いて歩いているピカチュウだけになっていた。ヨーギラスは振り返りピカチュウに注意した。
「おいピカチュウ!。あんま俺に近づくなって言っただろ!。離れろって!。」
「ええ...、だって僕も食堂に行くし...。」
ピカチュウの頭は少し抜けていた。ヨーギラスの事情を察してあげられなかった。
ピカチュウとヨーギラスは食堂に着いた。もうすでに沢山のポケモンが列を作っていた。ここの料理長の作る料理は評判が良いらしい。
「ヨーギラスなに食べたい!?。何だったらついでに取ってくるよ?。」
ピカチュウはヨーギラスのご機嫌を取ろうと必死になっていた。
「....、じゃあ、みそラーメン。」
ピカチュウは急いで列の最後尾へ向かった。ヨーギラスは近くの椅子に座り料理が来るのを待った。
「結構例長いな〜。でもこれだけ並ぶほど美味しいんだろうな〜。」
厨房では料理長のベロリンガが1匹で切り盛りしている。けれど物凄いスピードで客を回していた。舌を器用に使い皿洗いをし、カレーをかき混ぜ、お皿によそっていた。
「次ノお客さん、ナニ食べたいアルカ?」
「えっと、みそラーメンとハンバーグ定食を下さい。」
「OKアル。じゃあソコの自販機で食券買うアル。」
ピカチュウはすぐ横にある自販機で食券を2枚買った。その間にすでに注文した料理が出来てトレーに乗っていた。
「うわあ...、早いなあ。」
「後ろが混むから料理持ってさっさと
退くアルヨ。」
ピカチュウは急いでトレーを持ってヨーギラスの所へ向かった。ヨーギラスの近くには誰も座って無かったのですぐに見つけることができた。ピカチュウはヨーギラスの前にみそラーメンを置き、ヨーギラスの前に座った。
「いただきます。モグモグ.....。んん!。ここの料理凄く美味しいね!。ヨーギラスも食べたら?。」
「........。あのなピカチュウ......。何度も言うが、俺の周りに近づくなって.......。」
ヨーギラスは呆れ顔で言った。ピカチュウの口の中はハンバーグでパンパンになっていた。洒落た物はあまり食べた事がないらしい。その目は涙で潤んでいて相当美味しかったのだろう。
「まったく、しょうがない奴だ。標的にされても知らんぞ...。」
ラーメンをすすりながら呆れぎみに言った。
そして放課後。日も暮れ始めた。ピカチュウも教科書をかばんに入れて学校を後にした。
しばらく歩いていると後から何か気配を感じた。
(なんだろう...。誰か後ろにいるような...。)
ピカチュウはマチナカ荘への道を外れ、東の方へ歩き始めた。
大分日も落ち夜になろうとしていた。どんどん人気のない道へ入っていく。そして長い一本道に入っていった。
(やっぱり誰か付いてきてる...。やだな〜....、何か気に触ることしたのかな〜...。)
何故かピカチュウは尾行者では無く自分を責めていた。
(相手は一匹か....。どうしよう...。)
ピカチュウは太陽の沈む逆の方向へ向かい、尾行者の影を伸ばし、それを視界でとらえていた。
そしてピカチュウはいきなり振り向き尾行者に言った。
「
どうもすいませんでした!!。」
(!?。)
ピカチュウは尾行者に謝罪した。その行動に尾行していたキモリは驚いて、ついつい物陰から出てきてしまった。
(しまった!。姿を見られちまった!。仕方ない...。)
キモリはピカチュウの元へ歩きよった。ピカチュウはずっと背中を曲げ謝罪のポーズをしていた。
そんな姿を見たキモリはすっかり闘争心が削がれていた。
(しょうがない。こうなったら....。)
ピカチュウは突然両肩を押さえられると壁に叩きつけられた。
「いた!。」
ピカチュウは少し
呻くと驚いて目を回してしまった。ピカチュウは凄く打たれ弱かった。
「おいお前!、血を見たくなかったら俺の言う通りにしてもらおうか!。」
キモリは脅し口調で言った。
「は、はい!。」
ピカチュウは元気良く答えた。
(こいつ...。本当にあのワンリキーを倒したのか?...。)
キモリはピカチュウの小心さにある意味で驚いていた。
「い、今から俺らのアジトに来てもらう...。いいな...。」
キモリは肩を掴んでいた手を緩めるとそう言った。
「わ、分かりました!。」
ピカチュウは言われるがままキモリの後を付いていった。
続く→