Chapter 2 -まだ見ぬ蒼天の雲の行方-
Episode 44 -Worst combination-
 翌日、カザネたちはヘラルジッククリニックを訪れていた。彼らもレギオンと戦うダイバーになる以上、ヘラルジックを介して繰り出す武器が必要になるのだ。


「最近多いね……要員不足のダイバーが、こうも立て続けに増えるなんて珍しい。この間もカエルと電気モモンガが来たし、その前は山賊男とたまラッコな女の子とお坊っちゃまが来てた。」
「そのカエルというのは、恐らく僕と暮らしている者です。えっこさんといいまして。」

「あー、そうだそうだそんな名前。変な名前だよねー。私も変な名前だけどさ。数字の7って意味だもん、7月生まれだから7。単純明快猪突猛進。ふふっ、ふふふふふふっ!!!!」
「(な、何かやりにくいポケモンだなぁ……。)」

勝手に自分で笑いのツボにはまりながら武器をあれこれ取り出すスェーミを見て、いるかは苦虫を噛み潰した表情のままそんなことを考えていた。
やがてそんないるかに向けて、スェーミは一つの細長い箱を放り投げて渡す。


「それ、あんたに似合ってる。」
「そ、そうなのですか……? 何だろう、この武器……。」

いるかが箱を開けると、中からは金属製の棒のような武器が出てきた。よく見ると蛇腹状になった武器で、節々の部分には伸縮性抜群のゴムのような素材が入っている。


「それ、『ウィップ』……。あんたはビビリの意気地なしっぽそうだから、それが似合ってる。使いこなすのは難しい。でも、近距離で鉄パイプみたく叩いてよし突いてよし守ってよし。遠距離ではムチみたく使えて苦手な間合いがない。ビビリで間合い管理できないあんたには必需品。」
「むーっ、ビビリビビリと余計なお世話ですーっ。でも確かに、どんな距離でも戦えるのは強いかも……。いやっ、そもそも最初から遠距離特価で相手に近付かなくていい奴の方が僕に向いてません? ほら、例えば銃とか。」

いるかがそう答えると、スェーミは真顔のままいるかの元に詰め寄って、顔を近づけて口を開いた。


「ほら、今だって簡単に接近を許した。魔銃はね、魔銃はね、『遠距離で戦える』武器じゃないの。『遠距離でしか戦えない』武器なの。近距離に迫られたら終わり、最低限の抵抗しかできない。だから相手が遠くにいる内に一発で仕留めるの。あんたには無理。多分外すよ、外すよ、一貫の終わりだよ。」
「そ、そうなんですか……? どうしようかな……。じゃあ、そこまで言うならこれに……。」

「毎度ありー!!」

スェーミの意見に押され、いるかはウィップの購入に踏み切った。戦闘の素人であるいるかは、どうやら武器のプロであるスェーミの意見を素直に聞き入れた方がいいと判断したようだ。一方のスェーミは嬉々としながらウィップを箱に戻している。












 「さてとー、軍服君にメイメイ、中の探索は任せたよー!! バッチリリークポイントをカメラに収めてきてねー!!」
「はぁ……何だかなぁ……。」

昨日夕方遅くに神殿へ到着したルーチェたち。そのまま砂漠の極寒の夜を船の中で明かし、朝早くにローゼンとメイが出発する。

船の窓から身を乗り出して手を振るルーチェを背後に、メイは大嫌いな相手との二人きりでの潜入任務に完全にブルーな気持ちになっていた。


「ねーねー、どうしたの、そんなに疲れた顔して? 緊張で眠れなかったのー?」
「お気遣いありがと。大丈夫だからアンタは自分のこと気にしてて……。」

メイはローゼンに対して、鬱陶しそうに力なく答える。ローゼンはそんなメイにはお構いなしにあれこれ話しかけるが、メイはただため息を漏らすばかりだった。


ふと天井を見上げると、神殿を形作る廃墟群は砂埃にまみれ、どれも元の色を失って黄ばんだ灰色となっている。
ところどころの窓ガラスが砕けてなくなっており、ごく一部だけ風や日光や熱にも長年耐え続け、朝日を受けて夕空の星の如く光る窓が、廃墟に点々と見えていた。

ビル群の奥深くにはわずかながら緑も姿を現す。恐らくは砂嵐や直射日光を避けられる遮蔽物がある環境だからこそ、この場所を砂漠に生きる植物たちが、貴重な住処として選んだのだろう。
その光景は人工物によって作られた風景ながら、さながら自然に溶け込んだオアシスのようだ。


そんな廃墟群を地図に沿って彷徨うように歩き回り、各地のガスーリークポイントを撮影していくメイとローゼン。適当な受け答え以外は無言のくたびれたメイに対し、楽しげに一人口を動かし続けるローゼン。
そんな構図は、2匹が鉄道駅だった巨大な廃墟に差し掛かったときに突然壊れ去った。


「ねーねー、メイメイってもしかして、ルーチェちゃんのこと大好きなの?」
「あー、うんそうそう……ってぶぇっ!!!?」

「ははは、大当たりみたいだね。」
「なっ、何言い出すのよいきなり!? そ、そんなこと!! も、もちろん好きだよ、頼れる姉さんとして、チームのリーダーとして!!」

「でも、それ以上に好きなんだよね?」

子供のような混じりけない笑顔で矢継ぎ早に問い詰めるローゼン。そんなローゼンからの不意打ちに、メイは顔を赤くして慌てふためいている。


「そっ、それってどういう意味なのよ!?」
「んー、ルーチェちゃんともっと一緒にいたい、たくさんルーチェちゃんのことを知りたい、ルーチェちゃんと抱き合いたい、ルーチェちゃんと夜を共にしたい、ルーチェちゃんに濡れたい、そんなとこ?」

「こっ、この変態!!!! 何勝手な想像してんのよ!!!! ふざけないでーっ!!!!」
「じゃあ、何で昨日ルーチェちゃんに怒られて異常なまでにしゅんとしてたのかな? あれから急に僕への態度が変わったよね? 頑なに突き放してたのが、取り敢えず拒まなくはなった。僕に冷たく当たってルーチェちゃんに幻滅されるのが怖いから、でしょ?」

ローゼンは他人の気持ちが分からないように見えて、その実メイの本心を見透かしていたのだ。いや、むしろ自然には分からないからこそ、直感ではなく論理により、そんなメイの心の変化を導き出して理解したのかも知れない。











 「絶対、絶対よ!!!! 絶対ルーチェさんには言わないで!!!! ああそうよ、私はルーチェさんのことが好きだわ。彼女のことを考えると、彼女が優しく抱き締めてくれることを想像すると、彼女が私の初めての唇を奪ってくれることを想像すると、それだけで心臓が止まりそうになるのよ……。」
「うん、言わないー!! 僕はこれでも口が固いから大丈夫!! どんな拷問でも口を割らないよ!!」

「恋……なのよね、これって……。世の男どもはダメ……昔から私に告白してくる男は多かったけど、下心丸出しの奴ばっかで、相手を憚る心もない……。私、自分より教養もマナーもなってない男は嫌い。」

メイはとうとう観念して、自分の本心をローゼンに語り始めた。ローゼンはそんなメイの言葉をただただ頷きながら聞いている。


「でも変だよね……女の子が女の子好きになっちゃ……。ルーチェさんはきっと普通のポケモン。好きになるのは女じゃなくて男。私は結局『部下』か『友達』止まりなの……。だって女だから……。叶わないって分かりながら、諦められなくてウジウジしてる自分が嫌になってくる……。」
「じゃあ、思い切ってアタックしちゃえー!! だって誰が決めたの? ルーチェちゃんがノーマルだって。あの子もレズかバイかも知れないよ? いや、性別なんか気にせずに自分の信頼できる相手をパートナーにしたがる、僕にはそんな性格に思えてならないけどなー。」

「考えるだけなら簡単よ……。アンタは普通の男だから分かりっこないよ……。それに、うちの父さんだって本当は女の子じゃなくて男の子が好きなんだけどさ……。私が生まれたってことは、結局母さんを愛したの。ノーマルに流れたの。みんな、そうならざるを得ない。」

すると、ローゼンは自分の服の胸ポケットから何かを取り出してみせた。それは、軍で配布されたと思しきドッグタグだった。少し色褪せてメッキがはがれたそのドッグタグには、1475と数字が刻まれている。


「これが僕の名前。『ザクセン連合国陸軍・第3管区部隊1475番。』またの名をローゼン・フィッツジェラルド。面白い名前でしょ?」
「それって一体どういう……。」

「僕の祖国では、長男以外の男児はみんな幼い頃に軍に引き取られ、兵士として教育される……。1475番は、軍における兵士としての僕の名前。みんな画一の兵士として、みんな同じ厳しい規律の中で押さえつけられて生産される。精密部品の量産ラインみたくね。」
「そんな……そんなことって……。年端も行かない子供を押さえつけて、洗脳して、軍のために……間違ってるよ……。」

その言葉を聞いてローゼンが少し表情を変えた。そこにはわずかながら怒りの色が見える。


「聞き捨てならないなぁ。僕は祖国が僕にしたことを恨んでなんかいない。その育てられ方が僕らにとって当たり前。祖国のために立派な兵士になって、祖国の栄光のために立派に死ぬのが僕らの幸せ。」
「ごめん……。でも、まさかアンタがそんな環境で育ってたなんて……。」

「ま、逆も然りかな。僕も君たちみたく、自由が保証された者たちの喜びや痛みを知らない。だからともすれば、間違っているとさえ思える。それでも、自由の元に生まれ育ったなら、その自由を極限まで活かしてみてもいいんじゃない? それは僕らには決してできなかった生き方、君たちだからこそ享受できる可能性だ。」
「私たちだからこそ……。」

急にシリアスな内容を語り始めるローゼン。その言葉は、メイの心の葛藤を鷲掴みにし、かつてない程にまで揺り動かす。


「手短に言えば、どうせなら突っ込んだ方がいいとは僕は思うんだよねー。オロオロと迷ってる内に、集中砲火食らって壊滅した部隊なんか数知れず。どうせじっとしてたら確実に死ぬならさ、いっそドーンとぶつかったら案外道は開けて生き残るもんなんだ。」
「……ありがと、アンタって奴は意外と話が分かるのね。そのアドバイス、素直にありがたく受け取っとくわ。それから、アンタの推理は半分間違ってるとも言っとく。」

「ありゃりゃ、満点回答じゃなかったかー。ちぇー。」
「その部分じゃない、私がルーチェさんに怒られてしょげてた件。ルーチェさんに嫌われるのが怖かっただけじゃないわ。自分にも正直引いてた。」

メイはローゼンから目線をそらし、目を下に泳がせながらそう呟いた。ローゼンは相変わらずぽかんとした無表情で耳を傾ける。


「言い過ぎたって思った。確かにアンタは会議で空気読まずに笑い転げるわ、極悪な趣味してるわ、はっきり言って最悪。私が今まで見てきた男の中でも一番無教養で嫌い。けどさ、せっかく自分と協力しようと手を差し伸べたそんな相手に、あんな露骨に嫌悪感見せつける態度取った私って、もっと無教養でバカだよね……。」
「あー、それなら気にしてないよー。誰しも嫌いな相手って一人くらいいるもん。僕にもいるよ、昔ある教官に虐められてさ。そいつにムカついたから、夜中に暗殺して一晩中死体を足蹴にした後、近くの河原に埋めたんだ。楽しかったなー!!」

「うーっ……やっぱ悪趣味……。ま、何にせよ第一印象だけで決めつけちゃダメね……私もまだまだだわ。昨日はごめんね、ローゼン。」

メイが昨日の仕切り直しと言わんばかりに手を差し伸べる。ローゼンもそれに応え、笑顔で手を伸ばす。2匹の手が触れ合おうとした瞬間、その動きを止める声があった。


「中々いい雰囲気だな。私もその楽しそうな三文芝居に混ぜてもらおうかな?」











 時を同じくして、今度はローレルがスェーミに武器の相談をする。実はそんなローレルには、他の2匹と違うある事情があった。


「えっ、ヘラルジック禁止令ですか……? しかし、あれがなければ強力な武器が……。」
「ごめん、どうしてもあれだけは許可できない。あの入れ墨を入れる1時間あまりがどれ程の苦痛だったか……。大の男が情けなく泣き叫んで暴れ回り、汚物を垂れ流すのも構わずに気絶を繰り返すんだ……。俺が大好きなローレルに、あんな真似はさせられない。」

「えっこさんがそこまで言うのなら……。しかし、そうなると武器や魔導書をどこに格納すればいいのでしょう? Complusに何でもかんでも収納する訳には行きませんし……。」

そう、えっこが再び頑固にローレルの行動を制限してきたのだ。ダイバーとしての活動には口出ししないものの、ヘラルジックだけはどうしても許可できないらしい。

困り果てた表情のえっことローレルに気がつき、セレーネがゲームをしている手を止めて近寄ってきた。


「えっこお兄ちゃん、ローレルお姉ちゃん、どうしたのです? 困りごとなのです?」
「ああ、何とか武器とか魔導書を簡単に持ち運びできる方法があればなーって思ってさ……。でも中々ないよな、そんな都合のいいもの……。」

「あるのです。」
「えっ、今何て……? そんなものあるのか?」

セレーネは自室にある杖を持ってくると、軽く力を込めながら簡易詠唱を行った。


「『ホワイト・パレット』!!」
「うわっ!? どこからこんなに教科書とかノートが……!? あいたっ!!」

セレーネが使った魔法により白い穴が空中に開き、そこからドサドサと学用品が降り注いできた。それを見て驚くえっこの額に、よりにもよって金属製の水筒が直撃してしまい、えっこは痛みにジタバタしている。


「家電とか生き物は入れられないけど、手で持てる重さや大きさの物なら、何でも保存しておける白魔法なのです。ボクも教科書とかノートとか持つの嫌なので、いつもこうして入れているのです。」
「そ、そんな便利な魔法があったなんて……。僕も使えるのでしょうか、それは?」

「魔導書があれば大丈夫なのです、魔導書店に置いてると思うのです。ローレルお姉ちゃんはボクと同じように白魔法使えるから、きっと大丈夫。」
「なあ、一つ疑問なんだがさ。セレーネはいつも学校行くときカバン持ってるよな? こんな便利な魔法があるのに、何で手ぶらじゃないのかなー。」

すると、セレーネがしまったといった感じの表情を見せて口元を押さえた。えっこはそんなセレーネに、細くした目で問い詰めた。


「確か電子機器とか生き物はダメなんだっけ? 生き物なんかいれる訳ないしなー。」
「えーっと……ボ、ボクそろそろ宿題やらなきゃなのですー。ははは……。」

「お前、学校にゲーム持って行ってるだろー!!」
「ぴぇぇぇぇっ、ごめんなさいなのですーっ!!!!」

セレーネのゲーム好きは齢9歳にして重症のようだ。えっこはため息をつきながら肩をすぼめる。そんなえっこの前で、セレーネは大きな耳を畳んで目と口を強く閉じていた。


「という訳でして……僕はヘラルジックではなくこの魔導書で武器を出し入れする形式にしたいのです。」
「へーんなの。まあいいや、それならモノノケの血による武器の強化ができないし、メイン武器しか装備できなさそうだけど……。カエル君が蒼剣だったから、これにでもしてみる?」

スェーミはそう告げると、3つの細長い箱をローレルに見せた。中から出てきたのは、細身で針のように尖った剣と、至って普通の片手剣と、槌の3本だった。


「これ、『突剣』と『長剣』と『打槌』。突剣は軽くて扱いやすいしリーチも長い。長剣はスタンダードでどんな状況にも対応できる。打槌は斬りつけが効きにくい相手に効果覿面。重いけどね。」
「近接戦闘の武器ですか……? ほ、僕は運動能力はあまり自信が……。」

「知ってる。耳先からつま先までのろまな感じしかしないもん、ふふふ。でも魔導書使うんでしょ? 魔導書の魔法と組み合わせて使えばいいじゃん。炎を刀身に宿して斬りつけるとか、岩の塊を槌に付けて叩きつけるとか。」
「そ、そんなことができるのですか?」

ローレルはスェーミに促されて武器を試してみることにした。木属性の魔法適性のあるローレルは、魔導書の魔力を突剣に集中させるイメージのまま、剣を突き出した。


「行きます……!! 『リーフストリーム』!!!!」
すると、剣の先端から一定範囲内にカミソリのように鋭い木の葉が一瞬で展開され、広範囲を瞬時に切り裂く一撃となった。


「今のが『融合武器』。魔導書や魔法を武器に対して発動することで、魔法の持つ力を武器に上乗せするの……あんたみたいな運動音痴にもオススメ。」
「凄い……!! もしかして他のものも……!!!! 『アース・バレット』!!!!」

ローレルは、今度は土属性の魔法を突剣に込めた。しかし、今度は剣の先端からポロリと岩の塊が落下しただけで、到底攻撃には使えるものではなかった。


「おかしいですね……やり方を間違えたのでしょうか……?」
「いやー、ハズレの組み合わせだっただけ。武器と魔法にも相性がある。悪い相性の組み合わせを発動しても無意味。だからちゃんと練習しとくことだねー、くくくっ……。」

スェーミは地面に転がった今の塊を指さしてくすくすと笑い始めた。どうやら、融合武器は数多くの武器と魔法の組み合わせが存在するが故に、覚えるべきことも非常に多いようだ。
それでも、ローレルはこの融合武器という選択肢に大きな可能性を感じずにはいられなかった。









 「一体何者……!?」
「人間とおまけが一匹か。もっとも、君も我々の求める魂の持ち主ではなかったようだが。」

「そっかぁ、そいつは残念だ。君が噂に聞いてたファイとかいう奴だね? シグレ相手に散々に暴れてくれたみたいじゃないか。まあ、僕はあんなに簡単には行かないけどさ。」

ローゼンが真紅の眼差しを向ける先にはファイが佇んでいた。ファイは不気味な微笑をこちらに向けている。


「なるほど……カムイちゃんたちから聞いてた通りね。見るからにヤバイって感じ……。純粋な狂気しか見えてこない雰囲気だわ。」
「お褒めに預かり嬉しいよ。だが、君たちがハズレくじと分かった以上、私には君たちに付き合う義務などないのでな。」

「でも、僕たちには君を潰して、情報をゲロらせる権利は大アリだよねー。だからさ、レギオンなんて出さずに直接殺り合わない? その翼、片方ずつ圧し折って羽根を毟り取ってあげるからさ。」
「悪趣味……でも私も大体同じとこかしら。正々堂々かかってきたらどうなの? いい加減レギオンの相手も飽きてんのよね、怪我したくなかったら、今の内に大人しく投降しなさい。」

ローゼンとメイがヘラルジックを展開して武器を構える。そんな2匹を見たファイは、一瞬背中を見せた。しかし、次の瞬間には体中に赤いヘラルジックが解き放たれ、膨大なエネルギーが氾濫する川の流れの如くほとばしった。


「二度同じことを言わせるな。悪いが君たちと遊ぶのは面倒でね、コイツと戯れているといい。出よ、『カモミール』!!!!」
「ははっ、結局レギオン頼りかぁ。面倒だけど今はこれ相手に満足するしかないみたいだね。」

「呑気なこと言ってる場合じゃないわ!! Sクラス反応……気を抜いたら即あの世が見えるわよ!!!!」

辺りを覆う圧倒的な白の光の後、ファイは2匹の目の前から姿を消し、体長4m程の鳥型レギオンが雄叫びを上げた。

空を自由に舞う翼こそなさそうだが、長く伸びた脚の先には鋭利な爪が左右2本ずつ付いており、このレギオンがどんな戦闘スタイルを好みそうかは一目で合点がいく。


「間違いないね、あの爪だよ。アイツで何でも串刺しにしてくるね。」
「串刺しじゃ済まないわ、多分一撃で全身がバラバラにちぎれ飛ぶわね。まあ、それならやられなきゃいいだけのお話!!」

「だねー。丁度お喋りにも飽きてきたところだ、悪いけどぶっ潰させてもらうことにするよ。」

メイとローゼンは武器を深く構えて戦闘態勢に入る。砂漠の奥地の色褪せた摩天楼の元、巨大なレギオンはさながら『最悪のコンビ』へ立ちはだかる試練のように、その研ぎ澄まされた爪を地面に食い込ませて唸り声を上げていた。


(To be continued...)



Aiccaud(えっこ) ( 2019/04/13(土) 08:58 )