Chapter 1 -大地に舞う幾多の翼-
Episode 25 -Stone cage-
 前回の依頼から数日。トレたちチーム・テンペストは、新たな依頼へと赴くこととなった。


「最近、地下水脈内で何者かによる窃盗事件が多発してまして……。本当に困りものなのです……。」
「窃盗? 洞窟内に潜み、強盗行為をするとかじゃあなくてです? 何か妙なもんすね。」

「そう、『強盗』というより、ひったくりの類と言いますか……。凄まじいスピードで何かが作業員の持つ金品や精密機械類など、金になりそうなものを掠め取って行くのです。」
「そいつぁチンケなことをやりやがる……。」

リーダーであるトレは、依頼主であるドッコラーから話を聞いていた。
ドッコラーたちはその体力を利用して地下水脈を掘り進めるインフラ工事の作業員であり、謎のひったくり事件により作業の中断を余儀なくされているようだ。


「一つ疑問なのですが、その謎の犯人は地上と空中、どちらを移動しているのでしょう?」
「てめぇは黙ってろ、俺が依頼主と話してんだ。」

「恐らくは空中、ですかねぇ……組まれた足場の上でも掻っ攫われますから。」
「空中かぁ……。洞窟内を自在に高速で飛び回るポケモン……。そんなのいたっけな……。」

トレが不機嫌そうに睨みつける中、えっこは顎に手を当てて考えを巡らせていた。やがてトレは露骨にえっこに向けて舌打ちをすると、ドッコラーに向き直って口を開いた。


「とにかく、そのひったくり事件の解明をすればいいんですね?」
「ええ、その通り。何でもあなたのスピードはダイバーの中でも指折りだとか……。だからきっと、素早い犯人を捕まえてくださると思い、こうしてお伺いしたところなのです。是非お願いします!!」

「もちろん、任せてください。我々チーム・テンペストが、必ずやあなた方の悩みの種を打ち払ってみせます。」

依頼を受けたトレ、ユーグ、えっこの3匹はすぐに地上の地下水脈へと向かう。地上へ向かうエレベータの中で、えっこがふとユーグに尋ねた。


「そういえば、今日はマーキュリーさんは来ないんですね?」
「あー、マークは今日はバイト。彼は兼業ダイバーでね、普段は筋トレがてら日雇いのバイトしてるのさ。工業区の重量物運搬とか、プラント建設の資材運びとか……よくやるよあんな肉体労働……。」

ユーグは少し顔をしかめながらえっこにそう答えた。確かに、並外れたタフネスと格闘タイプをも大きく上回る腕力を持つマーキュリーなら、重量物を扱う肉体労働は最も向いているといえるバイトの一つだろう。

程なくして、エレベータは地上の特定ポイントへ到着し、そこから東に約1km歩くと、草原の中に問題の地下水脈への入り口が現れた。








 「かんぱーい!!」
ミハイルの嬉しそうな声が店内に響く。ミハイルはグラスに入った白ワインを一気に飲み干した。


「ったく、試験が終わったばっかだってのに浮かれすぎじゃねぇか? まだ合格が出た訳でもねぇし……。」
「細かいことは気にしないー!! シグレさんもワイン、飲みます?」

「何か見たことない酒だが……どのみち俺は焼酎しか飲まねぇんでな。つかお前酒飲めたのかよ。」
「ミハイルは一応20歳だしね。私はまだ18歳だから飲めないの。だからこうしてコーラを飲んでるって訳。」

シグレにとってはワインもコーラも初めて見る代物らしく、代わる代わるジロジロと不思議そうに眺めている。そんなシグレをよそに、ミハイルはグラスにワインをなみなみと注ぐと、ピッツァの切れ端を頬張ってワインで流し込んだ。


「お前、いいとこ育ちの癖に食事の作法がなってねぇな……。もっと味わって大事に食いやがれ。それとそんなにガブガブと酒ばっか飲むな、後でどうなっても知らんぞ。」
「んー、ごめんなさーい……。」

「あんた、お説教するお母さんみたいね……。でもシグレの言う通り、あまり飲みすぎたらダメだよ? 君は酒豪体質だけど、いつもとんでもない量飲んで泥酔するんだから……。」
「はぁ!? こいつがか……? このガキが酔っ払うの想像付かねぇ……。」

シグレはいかにも胡散臭そうだと言わんばかりに、ワインを飲み干すミハイルを、肘を付いて観察していた。そんなとき、店の奥に何やら見覚えのある影が見えた。


「あ? あの黄色い奴、確かえっこのところの……。」
「えっこ? ああ、確かこの間連盟本部で会った元人間のケロマツのことだよね? 黄色い奴って、厨房でお皿洗ってるあのピカチュウのこと?」

「ああ。そのピカチュウってのは他にもいるのかも知れんが、えっこと暮らしてるローレルという元人間の女がいてな。そいつもピカチュウなんだよ。」
「でもまさか、こんなとこで皿洗いしてる訳ないですよー、他のポケモンの空似ですってきっと。」

ミハイルは既に4杯目のワインを口に運ぼうとしている。シグレはそのグラスを瞬時に奪い取ると、テーブル上の、ミハイルの手の届かない場所に置いた。


「シグレさん、返してくださいー!!」
「酒ばっか飲むなっつっただろ!! てめぇももう二十歳なら、後先考えず酒をあおるのはやめろっての!! いい加減にしねぇとぶん殴るぞ!!!!」

「もー、やめてよ二人共!! 他のお客さんに迷惑!!!!」
「どうしました? 何かトラブルですか?」

既に酔っ払い始めてタガが外れたのか、ワインを取られてぐずるミハイルを、シグレは身を乗り出して怒鳴りつける。
騒ぎを聞きつけてやって来たのは、店のオーナーであるルーチェだった。


「あー……ごめんなさい、この二匹がご迷惑を……。邪魔でしたら、すぐに出ていきますので……。」
「んあー、いえいえ大丈夫ですよ。アタイの故郷・トリニポリスの観光客向けじゃないトラットリアなんて、そりゃあもう騒がしいですし。」

「何だ、ルーチェか……。悪いな、このクソガキが自制もせずに酒ばかり飲みやがるんで、ちょっと手を出しちまったのさ。」
「いいよいいよ、飲み過ぎて倒れられたりゲロられたりしたら一大事だし……。お酒は程々にね。」

シグレは深くため息をつくと、最後の一杯だからと念を押して、グラスをミハイルの前に返した。ミハイルはすぐさまグラスを握り締め、チビチビと最後の一杯を味わい始める。


「ところで、あっちの方にいた奴……ローレルか? 何でこんなとこで皿なんぞ洗ってやがる?」
「ほえ? ローレルちゃんだって? 何かの見間違いじゃないのかい? あの子がうちで働いてるわけ無いだろ?」

「じゃあ聞くが、あそこで皿洗ってる奴は何者だ? 他人の空似か?」
「そりゃ教えられないね。個人情報保護に関して色々とうるさくてね、最近。」

「……やはりローレルだな。えっこに聞いてみるか。」
「違うってー、『彼』は……。確か名前はカエサル君だよ、そうそう。男子高校生だ、ローレルちゃんは女の子だろ? 性別からして違うよ。」

シグレは訝しげに目を細めてルーチェの顔を覗き込む。ルーチェは冷静に見えてすぐ顔に出るタイプらしく、どことなく焦りの表情が伺える。


「そうか、人違いか。そうかもな、うんうん。ところで、ローレルって確か左耳と尻尾に黒い紐巻いてたんだよな。間違いねぇ、間近で見たから覚えてるぜ、左側の耳だった。」
「あっ、うわ……。」

「巻いてるね、あの子……。シグレの言う通り、左の耳と尻尾に黒いリボン着けてる。」
「ピカチュウの間で流行りの格好かな? そうは思えねぇけどな。」

「あー、男子高校生のピカチュウの間で流行ってるよ……!!」
「……何故隠す? とっくにバレてんだぜ。あそこの厨房の壁に貼ってある紙だ。勤務表か何かだと思うが、ここから何とか見える、ローレルと名前が書いてあるんだよな。」

シグレはちらりと厨房の方に目を向ける。カムイやミハイルには全く分からなかったが、弓を使う山賊とだけあって抜群の視力を誇るシグレは、初めからシフト表にローレルの名前があることを見抜いていたのだ。


「バレちゃあ仕方ないね……。そうさ、あの子はここで働いてる。ダイバーになりたいんだって。青蛙君に何もかも頼るのは嫌だからって……。ダイバーになるための費用をこっそり自力で稼いでんのさ……。」
「どうして隠れてコソコソと? ダイバーになるのくらい自由にすればいいのに。」

「青蛙君がそんなの許す訳ないってさ。ダイバーになるなんて言い出した日には、絶対動揺して自分を家に閉じ込めるって。そりゃあそうさ、ローレルちゃんは青蛙君にとって何よりも大切な相手。ダイバーになって、危険な目に遭うかも知れないなんて耐えられないだろうからね……。」

ルーチェはいよいよ観念して、シグレたちに事情を語り始めた。そんなルーチェのことを知る由もなく、ローレルは一心不乱に溜まった皿を処理している。


「愛する故に縛り付ける、かぁ……。難しいもんよね…。」
「だから強硬手段で、先にダイバー免許取ってチーム組んじまう作戦らしい。そうすれば、さすがに口出しもできなくなるからね。免許取ってチームに所属する以上、活動しなきゃだし。」

「ねぇ、もしかしてこの間バイトに入ってきた子って……!!」

ミハイルが突然思い出したように声を上げた。カムイとシグレも何かが頭の中で繋がったかのように、納得の表情を見せる。


「えっ!? 何何!? 何のことなのさ?」
「ボクたちの楽器屋に、最近新しくアルバイトが入ったんです。男子高校生だけど10歳のときからサックスやってるらしくて、楽器全般に詳しいしリペアもできるから、修理サポート要員としていいかなーって思って。」

「その子、カザネ君っていうんだけど、ダイバーを目指す資金が欲しくてバイトしたいと言っていたんです。単なる偶然かも知れないけど、まさかローレルちゃんと一緒にチームを組もうとしてるんじゃ……。」

カムイとルーチェは、互いに難しい顔をして見つめ合った。お互いえっことは面識や繋がりのある間柄だけに、ローレルやカザネのバイトの目的がダイバーになるための資金であれば、素直に応援だけするという心境でもいられなくなる。

もちろん、自分も力になりたいと願うローレルの思いは、二匹には痛いほど分かる。しかし同時にえっこが抱いているであろう、ローレルを危険に晒したくないという気持ちもまた、二匹には自分のことのように感じられるのだ。


「とにかくだ。俺たちはローレルのことはあの小僧には黙っておいてやる。愛だか何だか知らねぇが、ダイバーとしてやってくやってかないは本人たちが決めるべき問題だ。俺たちの関わることじゃねぇ。」
「トリ目君……。」

「だが、ローレルがダイバーになるために頑張ることを邪魔する権利も、俺たちにはないと思うがな。物事なんてなるようにしかならねぇ。変に首を突っ込んで拗らせても、いいことなんぞないんでな。」

シグレは一同の迷いを打ち払うかのようにそう告げると、ミハイルの真似をしてグラスにワインを注いで口を付けた。しかし、すぐにむせてしまい、顔を床の方に向けて咳き込んだ。


「何だぁこの酒……!? 酸っぱいじゃねぇか!! 腐ってんじゃねぇか?」
「失礼な、トリニポリス近郊の平原で作られた白ブドウ100%使用の自然派ワインだよ、つか発酵させて作るワインに腐るとかないし。」

「ブドウかよ……。南蛮にそんな酒があるとか聞いたが……妙な味してやがるぜ……ゲホッゲホッ……うぇっ……。」

飲み慣れないワインに悶えて咳き込むシグレの様子は、それまでの複雑に絡み合った緊張と葛藤を打ち砕くのに十分なくらい滑稽に思えた。
ともかく、シグレたちはローレルのことはえっこやカザネには内緒にすると約束し、ルーチェは店の奥へと戻っていった。









 一方洞窟の中で、えっこは一人不満そうな表情を露骨にちらつかせながら、トボトボと細い通路を歩いていた。

微かに差し込む地表の光が岩による反射と陰によって絶妙に色を変えられ、洞窟内は全体がぼやけたようなダークブルーに染まって見えた。

この洞窟にはドッコラーの説明通り地下水脈が存在し、近隣の村の水道インフラの安定供給を目指すべく、公共事業による水脈の掘削工事が行われてきたそうだ。


「何で俺がおとり役なんてやらされる羽目になるんだよ……。」
えっこは誰にも聞こえぬよう、囁き声をさらに小さく低めて呟いた。


「おい新入り、お前に仕事をやる。大事な大事な役目だぞ、喜べ。」
「えっ!? 俺がですか……!? 一体どんな……。」

「餌になるんだよ、奴らの。」
「餌、ですか……?」

地下水脈入り口にある事務所小屋の中で、30分程前にこんな会話が繰り広げられた。えっこはトレの話に対し、何のことやらさっぱり分からないという顔付きを見せていた。


「コイツは依頼主から渡された、廃棄予定のジャンク品のダウジング端末だ。どうせ捨てるから、盗られてもいいとさ。」
「それを持って、俺に中でひったくりに遭ってこいと……?」

「ああ。現れたところを、俺とユーグで協力して捕まえる。それとついでに自分の財布も持っていけ。金目のものが端末だけだと奴らも来ねぇかもだしな。」
「ちょっと、何で自分の財布持って行かなきゃならないんですか!! 嫌ですよそんなの、盗まれたらどうしてくれるんですか!?」

「知らねー。それとも何? 嫌ならいいんだぜ、ユーグにやってもらうから。ユーグが捕獲側に回れないから、作戦変更しなきゃだがな。お前は汚れ役を先輩に押し付けて、自分は高みの見物決め込むタイプか? へー、情けねぇのー。」

トレはわざとえっこをコケにしたような言い方で挑発する。えっこはバカにされると、割と簡単に頭に血が上るタイプらしい。すぐに手の平を机にバシリと叩きつけて、トレに向かって捲し立てた。


「黙って聞いてりゃ……あなた、この間も俺のこと子供扱いしてバカにしてましたよね? 俺がそんな情けない性格に思えます? というか、他人に押し付けてるのあなたじゃないですか!! 俺のこと云々の前に、自分が率先して名乗り出たらどうなんです!?」
「あー、怖い怖い、逆ギレしやがった。キレるのは、自分がその役目やり遂げるだけの自信ないからだろ? ブルっちまってるんだわ。」

「ち、違いますっ!! 俺はただ……。」
「ただ…何? せっかくお前ができそうな仕事見つけてやったのに突っぱねやがってよ。そういうとこが甘いんだよ、お前はよ。一度はお前を拒絶してた俺が、今はお前を求めてるんだぜ? これ、名前売っとくチャンスじゃねぇのか?」

「うっ……そ、それは……。」
「そうやってせっかくのチャンスを無にして、先輩のメンツまで潰して、汚れ役やらせて……。気が付けばお前はチームのお荷物。そうなるに決まってる。ああ、因みに言っとくが、俺は高みの見物なんてしてねぇからな。何せこの自慢のスピードを活かして、犯人を直接確保しに行くという一番危険な役割を果たすんだからな。」

結局えっこはトレに上手いこと言いくるめられて、このおとり役を渋々引き受けてしまった。
後になって思い返してみれば、トレの言い分など詭弁だらけの主張に過ぎなかったのだが、上手く丸め込まれた今となっては後の祭りだ。


「こちらえっこ……。後30mで地点T……。」
「よーし新入り、そのまま地点Tに足を進めろ。心配すんな、財布はちゃんと俺が取り返してやるから…………多分な。」

えっこがひた進む細い通路は、チューブのように細長い道が100m程度続く場所であり、その出口は別のチューブ状の道路に接続する関節部分になっている。
その地点を地点Tとし、ここに現れるであろうひったくり犯を確保する予定なのだ。

地点Tは開けた10m四方程の広間になっており、8m程上空の壁には、いくつか他のチューブ状の横穴の入り口も見える。
これだけ横穴の通路が交差していながら、地上を歩くポケモンが使える通路は2つだけであるため、予め上空の穴に潜んで獲物を見つけた犯人が、地点Tに出てきた被害者から金目のものを掠め取り、被害者が出てきた穴とは逆の穴に逃げ込むのが最も多い手口なのだそうだ。









 「よーし……後少し、もう出口が見えてきた……。財布だけはスられませんように……。」

えっこは神妙な面持ちで地点Tに差し掛かった。天井には微かに隙間が開いているらしく、通路内部とは打って変わって日光の差し込む薄明るい空間となっていた。

日が当たるところには、苔にふんわりと座るように白い透明の花が咲いており、差し詰め洞窟内のオアシスとも呼べるスポットだろうか。そんな風景を眺めているとき、一瞬何か風のようなものがえっこの肌を撫でた気がした。


「もしや……。あっ……財布が!!!!」
「いた、バッチリ見えたよ!! 『クロノカース』!!」

ユーグが魔法を使うと、えっこの財布を盗んだ犯人が、目視できるくらいゆっくり飛ぶのが確認できた。蝉のような見た目のテッカニンは、自分がユーグの魔法でスローになっていることに気付かぬまま、通路内へと飛んで行った。


「ありがとうユーグさん!! よくも、俺の財布を返せよっ!!!!」
「待ってえっこ、奴に触れるのは危険だ。今、僕の魔法で奴にはある呪いがかかっている。そいつの影響下にあると自身が周囲より相対的に遅くなり、なおかつ生命力が徐々に奪われる。」

「相対的……。じゃあ周囲に他に動くものがなければ、気付かないということです?」
「鋭いね、そういうことだ。君が追いかけたら、自分がスローなことに気が付いて何かしらの策を講じるかも知れない。それと、あの呪いは伝染性でね。触ると同じ効果を受ける。」

「ひぇっ、迂闊に触ると大変ですね……。」

えっこはのろのろと飛んでいるテッカニンを見つめながらそう呟いた。テッカニンは駆け足くらいのスピードで飛行しており、暗い通路を見ている故に、自分にかけられた呪いには気付いていないようだ。


「でも、いくら遅くてもあのままじゃ……!!」
「通路内にトレがいる。彼がComplusで合図した瞬間、僕が術を解く。そうすれば、トレが攻撃するときには呪いは伝染しないし、ギリギリまで奴をスローにしておけるって訳。」

ユーグはそう告げると、トレがテッカニンの姿を捉えて合図を送るのを今か今かと待っていた。しかし、次の瞬間予想だにしない出来事が3匹を襲う。


「うわぁっ!!!? な、何だこの音!!!?」
「えっこ、通路が塞がった……!!!! 岩だ、上から岩が落ちてきたんだ!!」

突然の地響きと鈍い衝突音が二匹を貫く。ユーグがテッカニンのいる通路を見ると、大量の瓦礫でその入り口が閉ざされてしまっていた。


「こちらトレ!! 目標を確認、だが入り口が両方共封鎖された!! これじゃあテッカニンをぶちのめしても出られねぇ!!」
「まずい、ひとまず詠唱を解いてトレさんの救出を……!!!!」

「ダメだ、逆だよえっこ……何故こんなことになったか考えてごらんよ。敵は他にもいる。そして何らかの理由で、トレだけを通路に閉じ込めるつもりでその岩を上の横穴から落とした。そう考えられないかい?」
「そうか、それならせめてテッカニンだけでも足止めしておかないと……!!」

ユーグが冷静に状況を分析したお陰で、安易に行動して危険を招くことは防げた。しかし、ユーグの推測する通り、テッカニンに協力者がいる可能性が高く、依然気の抜けない状況が続く。


「とにかく、僕らはあの瓦礫をどかすことを最優先にしましょう。通路を開けることが、わざわざトレさんを隔離した敵の思惑を崩すことに繋がるでしょうから。」
「それは僕も同意だ。何とか通路を解放せねば……!!!!」

ユーグはえっこの提案に深く頷き、二匹は瓦礫へと駆け出して行った。狭い洞窟内という閉鎖空間で突如訪れたピンチ。えっこたちは、その知恵と能力でどのように打開していくのだろうか?


(To be continued...)



Aiccaud(えっこ) ( 2019/03/17(日) 20:46 )