Chapter 1 -大地に舞う幾多の翼-
Episode 22 -Blazing Fists-
 「……何故俺がこんな真似をしなけりゃならんのだ……。」
「そりゃあ、生きるにはお金が必要ですから。お金を稼ぐには働かなきゃ!!」

「下らん……畑耕して野菜でも作って、後は旅人襲って身ぐるみ剥いでりゃ何とかなるだろ!!」
「あのねシグレ……あの竹林じゃ土地が痩せててタケノコ以外採れないし、他のポケモン襲って強盗したら警察に捕まるって!!」

シグレは店の奥でリードをプラスチック製のケースに手作業で入れながら、不満そうな表情を見せていた。眼鏡をかけたカムイは客から預かったクラリネットを解体して修理しており、ミハイルはレジに待機している。

そう、シグレはカムイたちの勧めで葉桜楽器店で働くことになったのだ。本人はあまり納得していないようではあったが……。


「つかこんなことしてる場合じゃねぇだろ!! 次は筆記試験とやらが控えてんだぞ、それに備えるのが筋って奴じゃねぇのかよ?」
「だって、過去問解いたらみんな楽々合格点取れてたし……大丈夫でしょ?」

「ただでさえカムイの怪我と実技試験とで長らく店を閉めてたんですから、その分の遅れを取り戻さないとですよ。」

シグレは二匹の反応に悪態をつきながらも、リードを梱包する作業を再開した。


「あっ、いらっしゃいませー!!」
「こんにちはー、実はちょっと相談事があって……。」

店の扉が開けられ、客が来店したようだ。シグレはちまちまとリードを梱包するあられもない姿を客に見られまいと、店の更に奥に身を隠すように移動した。









 施術から約1週間、どこかのチームからのスカウトを待つえっこに、待ちに待った吉報が舞い込んできた。

「よーし!! チーム加入依頼のメールが届いてる!! えーと、チーム・『テンペスト』がえっこさんの加入を心待ちにしております。連盟本部2階、2-18号室がオフィスです。」
えっこはComplusに届いたスカウトメールに目を通す。一度正式なダイバーになると、試験の際に用いたものとは別の、個人用のComplusが支給されるのだ。


えっこは早速真新しい紫色のマントに身を包み、身支度を整え始めた。紫を意味するパーピュアランク故に、連盟側から購入と着用を勧められていた冒険者用のマントらしい。


「おや、えっこさんもお出かけするのですか?」
「うん、やっとチームからの勧誘があってな。ダイバー連盟本部まで行ってくるよ。ローレルも確か出かけるんだったよな?」

「え、ええ……。セレスさんが特訓に付き合ってくださるそうで、トランペットの練習に励んできます。一日も早く戦力になりたいですから。」
「真面目だなぁ、ローレルは。大丈夫、君ならきっとすぐに吹けるようになるさ。ピアノとバイオリン、上手だったしさ。」

中間試験が終わってから、ローレルも本格的に部活関連の活動が忙しいようだ。この日も日曜ながら、一人で外に出かけていくらしい。


「じゃ、俺はもう行ってくるよ。出るときに鍵かけるの忘れるなよ。」
「ええ、お気を付けて行ってらっしゃい。」

ローレルはドアを開けて肩越しにこちらを見るえっこに手を振り、その姿を見届けた。窓際からこっそりとえっこの行方を確認し、えっこが付近から見えなくなってから、こっそりと家を後にした。


「えーと、メールに書かれてた部屋ってここだよな……。何か緊張するな……俺みたいな初心者を受け入れてくれるなんて、どんなチームなんだろう……。」
連盟に所属するチームには、本部ビルの各部屋が安い賃料で貸し出されるため、そこをオフィスにしていることが多い。このオフィスで事務処理をしたり、作戦会議をしたり、依頼主と話したりするのだ。

「あのー、すみません……!! 今日からお世話になるえっこと申します!!」
えっこはオフィスのドアをノックしてそのように声を上げた。すると、何者かが緩やかにドアを引いてえっこを招き入れた。

えっこは息を呑みながらも、部屋の中に足を踏み入れる。











 「よぉ、えっこ!! ダイバー試験合格おめでとう!! 今日から俺たちの仲間だからな、よろしく!!」
「えっ、あれ!? 俺を受け入れてくれるチームって、あなたの……!?」

えっこの姿を見て駆け寄ってきたのは、ハリマロンえっこの長男であるマーキュリーだった。片手に大きなダンベルを持ちながら、マーキュリーはえっこを笑顔で迎え入れる。


「僕もいるよ、この間の酒場では大変失礼をしたね。」
「あなたは確か……ユーグさん?」

ソファーに転がってハードカバーの分厚い本を読んでいたのは、ハリマロンえっこの弟子で黒魔法使いのニンフィア・ユーグだった。彼もマーキュリーたちのチームの一員のようだ。


「それじゃあ、あなた方二匹を含めて、これからは三匹のチームになるってことなんですか?」
「いや……実はまだもう一匹いてね……。というか彼がリーダーなんだけどさ……。」

「なあ、もういい加減受け入れろよな!! えっこはそんなヤワな奴じゃねぇよ、すぐに俺たちの一員として活躍できるようになるって!! それにリーダーのお前がいねぇと収まり悪いじゃねぇか!!!!」

マーキュリーが誰かを無理矢理机の裏から引きずり出す。青い身体と大きな耳に黒い後ろ足を持つその正体は、せんこうポケモンのコリンクだった。


「ほら『トレ』、こいつが新入りのえっこだ。ちゃんと挨拶してやんなよ。」
「お前が新入りかよ、お前みてぇな足手まといが来ると、チームの格が落ちちまうだろうが。」

「あ、あの……。そう言われても……。」
「お前なぁ……!! 初心者抱えたら大変になるのは分かるけどよ、そんな言い方することねぇだろ!! 一度決めたことなんだから、ちゃんとえっこを歓迎してやるのが筋ってもんだろ!!!!」

「決めた? 多数決でお前とユーグが勝手に決めて、勝手にスカウトしてきたんだろうが。俺は反対してたんだぜ? 冗談じゃねぇよ、こんな使えなさそうなの拾ってきやがって……。」

トレと呼ばれるコリンクは、いかにも面倒そうな顔をすると、えっこを一瞥することもなくソファーに寝転んだ。


「申し訳ないね……トレはああ言ってるけど、僕とマークは君のことを歓迎してるよ。『チーム・テンペスト』にようこそ。」
「あ、ありがとうございます……。まあ、別に俺は大丈夫なので……。」

えっこは呆れ顔のユーグに苦笑いでそう答えた。マーキュリーとトレは、机の裏で喧嘩を始めていた。


「てめぇなぁ……言っていいことと悪いことがあんだろ!!」
「何? 俺が悪いってのかよ? 第一、こんな訳の分からん奴なんて信用できるかよ。何考えてるかも分からない、何やれるかも分からない、そんな奴が俺たちの現場入ったら、マジ邪魔にしかならねぇ。」

「ふざけんなよ、ぶっ飛ばすぞコラ!!!!」
「やるなら来いよ。てめぇの方こそぶっ潰すぞ!!!!」

「はぁー、二匹とも落ち着きなって。オフィスで暴れちゃダメだよ全く……。」

呆気に取られるえっこをよそに、マーキュリーとトレの二匹は一触即発の状態になっている。そんな二匹を前にしたユーグは、ヘラルジックを発動したのか、いつの間にか一冊の魔導書を構えている。


「『ソウル・スワップ』!!」
「あっ、ユーグてめぇっ!!!!」

「君たちを対象に発動した。分かるよね? この魔法の影響下だと、相手の身体は自分の精神にも通じている。つまり、相手を殴れば痛み分けになるって寸法。」
「チッ、面倒臭ぇことしやがって……。」

ユーグの黒魔法のお陰で取っ組み合いの喧嘩は防げたようだが、依然トレはえっこにまともに目すら合わせてくれない。マーキュリーはため息をつくと、えっこに向かって語りかけた。


「悪いな、初っ端から見苦しいもん見せちまって。あいつも悪い奴じゃないんだが、まあ自己中でな……。」
「いえ、突然俺みたいな余所者が入ってきたらそう思っても不思議じゃないですし……。」

「そんな畏まることはないよ。君は既に僕たちのチームの一員なんだから。それに、開始等級がパーピュアなら期待大だしね。試験で相当高得点を取ったと見た。」
「えっ、やっぱり中々取れないものなんですか?」

えっこがマーキュリーとユーグに尋ねると、マーキュリーはマフラーの留め具を、ユーグはフードの縁に入った刺繍の線をえっこに見せた。


「俺はこの通り、アジュールランクからスタートした。まあ、バカだから筆記試験で9点しか取れなくてよ、あはは……。それで、今はアージェントランクまで上がってる。現場叩き上げって奴!!」
「僕はギュールズから始めて、今はブロンズランクだね。僕もマーキュリーも、これまでにいたランクのシンボルはこうやって常に身につけてる。他のダイバーも普通はそうだよ。」

マーキュリーのマフラーの留め具は純銀でできているが、その周りに付けられた他の留め具には様々な色の宝石が付いていた。青色以外の同じ色の線がユーグのフードにもあり、一番内側に青銅色の線が付けられている。


「お前と同じパーピュアからスタートしたの、うちだとトレだけだ。今じゃオーアランクにまでなってる。あいつは本当に何をやらせても優秀だからな……。女たらしなナンパ野郎なとこを除けばな。」
「でも俺は期待に添えるかどうか……。」

「それは今後次第だね。心配しなくても、きちんと僕らでサポートするし、君は君なりに歯を食いしばって全力を尽くしてくれればいい。そうすれば、自ずと結果はついてくるよ。」

ユーグもマーキュリーも、えっこに優しく微笑みかける。トレのことは気がかりではあるが、このチームでのポケモン関係は良好に行きそうだ。


「んあ、っせえなクソ……。はい、チーム・テンペストですが。……何だって、そりゃまた厄介な……。了解、すぐに急行します!!」
「緊急依頼みたいだね。出動準備をしようか、緊急事案につき1分以内に出発するよ。」

「ええっ!? ちょっ、いきなりですか!? まだ心の準備が……。」
「こんなんダイバーならよくあることだ、お前もダイバーになったからには常に腹括っとけ。甘ったれた口聞く暇があったら急いで支度しろ、お前のせいで遅れたらぶん殴る。分かったな?」

トレが電話越しに真剣なトーンで話し始めた。その様子を見て、寛いでいたユーグが一気に動き始め、マーキュリーは狼狽えるえっこを一喝する。あくまでダイバーとしての心構えや姿勢に関しては、厳しく指導されそうだ。


「マーク、ユーグ、新市街のペルシアン銀行で強盗が立て籠もってる。人質が一匹、犯人に捕まっちまったみたいでな。警察が説得を試みているが、実力行使しかなさそうだ。」
「まーた人質かぁ……好きだね、どいつもこいつも……。」

「警察の説得中に、俺とマークの二匹で内部に潜入する。マークは正面から犯人を捻じ伏せろ。俺が人質を掠めて救出し、道中に待機しているユーグに引き渡し、ユーグが建物の外まで護衛する。」
「了解、えっこは何してもらうんだ?」

「お前はこれでも舐めて見学してろ。ついて来ると足手まといになる。」

トレはえっこにペロペロキャンディを投げ渡した。露骨にお子様扱いされてさすがに頭に来るえっこだが、何とか怒りを飲み込んで呟いた。


「……若く見られるけどこれでも20歳ですー。」
「うっせぇ、くれぐれも勝手な行動起こすなよ、犯人ごとぶちのめすぞ。作戦は以上、すぐに現場へ急行して依頼に取り掛かる。」

トレの指示で一行は連盟本部ビルから外に飛び出し、予めビル外に待機していた緊急依頼用車両に飛び乗って現場へと向かう。同じ新市街とだけあって、5分弱で野次馬の群がる銀行が見えてきた。








 「警部さん、人質の状況は?」
「うむ……無事ではあるが膠着状態が続いて疲労してきている。銀行内の事務員の女性が一匹、囚われているようでね。」

「ゲスな奴だね、か弱い女性を盾にして強盗とは。」
「ああ、そんなクソ野郎は早くこの手で叩き潰さねぇと気が済まねえよ……。さっさと任務に取り掛かろうぜ。」

警部のシュバルゴとトレが状況確認する中、マーキュリーは拳を固く握り締めて、今までえっこが聞いたことのないような低い怒りを交えたトーンでそう呟いた。

やがてマーキュリーは銀行の裏口から犯人のいる地点へ慎重に向かい、その他のメンバーは各持ち場に待機する。


「おい、彼女を離してやれ。強盗するならせめて正々堂々と向かってこいよな。俺ならいくら殴っても構わねぇからよ。」
「何だお前!? 近付くとこいつの首をへし折るぞ!!」

犯人のオコリザルは、銀行員のミミロップを羽交い締めにしてマーキュリーに脅しをかける。しかし、マーキュリーは怯むことなくゆっくりと距離を詰めていく。その怒りに満ちた深緑の目つきは、オコリザルを思わず後ずさりさせた。


「来るなって言ったのが聞こえねぇのか!? こうなったらこの女を……あがっ!! 」
「レディへの扱いがなってねぇんだよ、豚猿野郎が。お嬢さん、もう安心だ。君の研磨され、洗練されたルビーのように清らかで美しい瞳を間近で眺めていたいところだけど、ここは危ない。銀行のことは彼に任せて退散しましょう。」

突然、一筋の電流がオコリザルの膝付近を掠めて足を挫かせる。その電流は手元からミミロップを掠め取り、オコリザルから十分離れたところでトレへと姿を変えた。


「さて、タイマンをおっ始めようか? お前から来なよ。俺はお前と違って、弱い者虐めは嫌いなタチだからな。俺とやる度胸があるならお前が先に殴りな。」
「ぐっ……こいつ……!!」

オコリザルは何とか立ち上がり、マーキュリーの顔を睨みつけた。マーキュリーは担いでいた巨大な丸太を投げ捨て、拳を鳴らした。


「お嬢さん、お怪我はないですか?」
「ええ、ありがとうございます……。」
ユーグとえっこは、ミミロップを無事に外へと連れ出し、警察へと引き渡して保護した。そのとき、ユーグの触手がえっこの肩を引き止める。


「せっかくだから中を見てく? あそこまでキレたマークが戦うとなると、誰か見てないととんでもないことになっちゃうし。」
「え、それってどういうことです? 確かに何か様子は変でしたけど、マーキュリーさん……。」

「多分実際に見た方が早いよ。それじゃ、行ってみようか。」

そう告げると、ユーグはえっこを連れて再び銀行内へと駆け出して行った。









 「『弱い者虐め』だぁ? 俺のことを弱い者呼ばわりするってのか!?」
「その通りだぜ。人質なんて取って、ギャーギャー騒ぎ立ててよ。男のやることじゃねぇだろ。それも全てお前が弱っちいからだよ。」

「弱いかどうか……試してみやがれ!!!!」

えっこたちが到着したそのとき既に、逆上したオコリザルがマーキュリーに襲いかかろうとしていた。


「まずいっ、オコリザルなら岩タイプの技が使えるはず……!! 炎タイプのマーキュリーさんが食らったらひとたまりも……!!」
「食らえ、ストーンエッジ!!!!」

オコリザルが拳を地面に叩きつけると、コンクリートの床の破片が凄まじい勢いで舞い上がり、マーキュリーを次々と突き刺さった。マーキュリーはその場に片膝を付く。


「マーキュリーさんっ……!!!!」
「大丈夫だえっこ、よーく見てみなよ。」
ユーグが得意気にマーキュリーの方を見て呟いた。えっこがマーキュリーの表情に目を凝らすと、そこには微かな笑みが見て取れた。


「やっぱり弱いな、お前……。この程度の技で俺を止められると思ったのかよ? まあ、ちょっとは肌がチクチクするかな。」
「なっ、確かにストーンエッジを直撃させたはず……!!!! 物理防御が低く、炎タイプのてめぇが何故平然と……!?」

「ふーん、まだ分からないのか。お前と俺じゃ、戦いに臨む姿勢も覚悟も鍛え方も、何もかももまるで違うんだよ。お前みてぇに自分の欲のために関係ないポケモンを、それも女を人質にする、そんなゲス野郎の覚悟なんて、たかが知れてんだよ!!」
「うるせぇ、それなら何発でも叩き込んでやる!!!!」

オコリザルは得意技のメガトンパンチやみだれひっかきをマーキュリーに叩き込むが、マーキュリーは一歩もその場を動かず、攻撃を避けることさえせずに全ての攻撃をその身に受けた。


「ちっ、畜生っ……!! 化け物かよこいつ……!!!! 仕方ねぇ、奥の手だがこれならどうだ!! インファイト!!!!」
「効かねぇっつってんだろ。そろそろ一発くらい殴ってもいいよなぁ? 病院のベッドでてめぇの行いを反省してやがれ!!!!!!」

マーキュリーの放ったパンチはオコリザルの顔面に深々とめり込み、オコリザルはぶひゅっという声にならない叫びと共に真後ろに吹っ飛ばされ、そのまま建物の窓を貫通して外に放り出された。

突然潰れた顔で吹っ飛んできた犯人の周りに群がる野次馬たち。しかし、そんな野次馬たちに構うことなく這いずって逃げようとするオコリザルは、へこんだ顔面が弾力で少しだけ元に戻ると同時に、大量の鼻血と共に気を失って突っ伏してしまった。










 「あーあーあー……実力行使命じられてるからってやり過ぎ……。あれじゃあ下手すりゃ死んじゃうって。」
「まあ腐っても格闘タイプだし死なねぇだろ多分。それにしても、気分がスッキリしたら腹減ったなー、えっこの歓迎兼ねて後でラーメンでも食いに行く?」

「いや、その前にその見た目何とかしないとホラーですって……!! というか、大丈夫なんですか? まず病院行かないと……!!」
「あー、そうだった悪い悪いー!! 怪我なら大したことねぇよ、一日で治るわこんなもん。けど面倒臭ぇことしやがって……岩の破片が全身に刺さってるから、抜くのに時間かかるじゃんか……。」

いつものような軽々しい豪快な性格に戻ったマーキュリー。全身に岩の破片が突き刺さり、殴られた顔面からは顔の下半分をびっしりと覆うくらいに鼻血が垂れている状態だが、本人は全くもって気にしていないようだ。えっこはただただぽかんと口を開けて固まっている。


「これがマークなんだよ。彼は物理攻撃なら一切避けようともしないし、迷わず全部その身に受ける。それでも全く怯むことなく相手に馬鹿力の一撃を食らわせるんだ。テールナーとは思えないよ全く……。」
「どんな身体してるんですかそれって……。」

「僕に聞かないでよ、あんな戦い方する奴他に見たことないし……。あの丸太も50kgはあるみたいだよ、片手で楽々ぶん回すけど。」
「うわぁ……そんな腕力で思い切り殴ったら、そりゃあそこまで相手も吹っ飛ぶ訳だ……。」

マーキュリーは投げ捨てた50kgの持ち手付き丸太を、倒れているビニール傘でも持つかの如く、片手でひょいと拾い上げる。その後、一仕事終えた爽快感に肩や首をポキポキと鳴らしてから、建物の外へ向かって歩き始めた。

豪快かつ大胆な炎の拳の使い手・マーキュリー。あまりにも心強いチームメイトの力を初日から見せられたえっこは、ダイバーたちの高いスキルに驚かされるばかりだった。


(To be continued...)

Aiccaud(えっこ) ( 2019/03/17(日) 14:04 )