02 マスターボール
彼は後悔していた。
またこの罪を犯してしまった。
手のひらにある、紫色のボール。
白いMの文字。
このボールは、どんなポケモンでも、捕まえてしまう。
相手のポケモンの自我を壊し、完全に「下部」に変えてしまう。
存在してはいけない道具。
禁断のボール。
ギリシア神話の「アンブロシア」のように、人が持っていいものではない。
これだけは量産してはいけない。
しかし、作ってしまった幾つかのボール。
これは迂闊に始末出来ない。
下手をすれば、破片からですら再現する者がでてくる。
誰かに…信用出来る誰かに託そう。
誰か、信頼できるトレーナーに渡してもらおう。
ポケモンと心通わせる、そんなトレーナーに。
彼は後悔している。禁断のボールを作ったことを。
だがそれは既に起こったこと。彼はその償いをするべく、道具を作り続ける。
それを手にするに値するものが手に入れるように、願いながら。