企画短編

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追記 土用丑の日にハクリューを食べたのですが
 病院に行ってきました。
 ええ、病院です、病院。ホスピタル。
 すいません、待ち合わせに遅れて。
 病気?いえ、私は至って健康です。この通り、五体満足で病気もありません。
 先輩は私をバカだバカだと言いますが、バカは風邪ひきませんから安心してください。
 ほら、行きましょう。デート、付き合ってくれるって話じゃないですか。
 ぇ、デートじゃない?またまた、照れちゃって。先輩ってば可愛いんですから。
 ほら、早くしないと電車が行っちゃいますよ?急いで急いで、切符買わなきゃ。
 今日は全額先輩のおごりでお願いしますね?…よし、やった!


 ですから、病院に行ってきたんですって。その話はいいじゃないですか、わざわざライモンシティに着いてから話すことですか?
 何で病院行ったかって?
 聞かないでください、どうでまたアホだのバカだの言われますし。
 …言わないから言ってみろ?
 誤魔化されませんよ、そういった人はみんな大笑いするか真顔で「バカだろ」って呟くのがお約束じゃないですか。
 言いません、女の子の秘密です。
 …お前は女らしくない?
 ぶっとばしますよ、先輩?


 …観覧車の中でもそれ聞きますか、先輩。勘弁してください。
 ええ、はい、話しますよ。話せばいいんでしょう、話せば。
 昨日、土用の丑の日だったじゃないですか。
 よく言うじゃないですか。土用の丑の日にハクリューを食べるといい、って。
 ビレッジブリッジで安売りだったので、つい同居してる後輩ちゃんの分も買っちゃって。で、昨日食べ忘れちゃって、今朝慌てて…
 …言わなきゃ、ダメですか?
 ………。
 わかりました、わかりましたから!
 ………ハクリュー丼食べてたら骨がのどに引っかかりまして。
 さあ言いましたよ、笑うなら笑え!
 …何で自分ののどをさすってるんですか。
 …何で今度は私ののどをさすってるんですか。先輩って変です、ヘン。
 というかくすぐったい。やめてください、近いです。
 痛そう?
 ええ、そりゃ痛かったですよ。かなり太かったですから、もうパニック。
 水飲むとか考えたんですけど、後輩ちゃんに「余計に悪化したらいけないから病院行きなさい」…って言われちゃいまして。
 パニックのままソウリュウシティの病院行ってきて、診察してもらって、ピンセットで丁寧にとってもらって。
 本当に焦ったんですから。
 で、とってみたらこれがまた少し太めの骨で。
 先生が言うに、幼いカラカラの骨じゃないか、って。
 何でハクリュー丼の中にカラカラの骨が入ってたのか、さっぱりです。ハクリューが食べちゃったんですかね、カラカラ。
 まあでも、ガラガラの太い骨とかじゃなくてよかったです。
 そもそものどを通過しない?
 あはは、そうでした。確かに私の口じゃ、カラカラの細い骨までしか入りませんよね。
 しかし、本当に不思議ですね。ハクリューは骨も柔らかいし、食べやすいことで有名なのに。よりによって、カラカラの骨なんて。
 今度、ビレッジブリッジに行って聞いてみます?
 …行ってらっしゃい、じゃないですよ。先輩も行くんです。
 何でって、先輩、私に恥かかせましたからね。
 あんなこと言わせて。
 だからほら、もう一回デート、してください。
 …ついでにグライオンでも探してみるか?
 先輩はポケモンバトル優先ですね…ま、いいですよ。
 ぁ、ほら、そろそろてっぺん。
 …なんですか、先輩。
 え、今は夏だからトラウマ?
 何があったんです。
 …以前話した?…もしかしてあの、山男や、女装した男と観覧車に乗った、っていう…
 ……わ、私はれっきとした女です!

■筆者メッセージ
1525文字。
ふっと思いついたので投下。
前に出した短編とは無関係でありたい、と願います。
真偽?…さあ、僕もわかりませんね。
永遠にわからないままであってほしいです。
abyss ( 2016/11/19(土) 16:55 )