第零話 悲しき定めは廻る
この世界は、残酷だ。
ただただ理不尽に、残酷で、残虐非道だ。
どうして、こんな世界になったのか。
どうして、幸せが許されないのか。
神は答える。貴様らの努力が足りないと。
無知な者どもは嗤う。貴様らの行いが悪いのだと。
だが、人々は叫ぶ。努力した、必死に善くあろうとした、と。
それを神は、無知な者どもは、言い訳だ、所詮は詭弁だと切り捨てる。
理解などされない。
人々は世界を呪う。恨む。
その禍根の渦は、消えない。
人々は明けない闇夜の曇天の下で、見えない星を望む。
このままではこの暗闇に呑まれ、潰えてしまうと、必死に天を見上げる。
いつまでも与えられない救いを求め、人々は手を伸ばす。
その薄汚れ、血にまみれ、どこまでも黒く染まった手を、誰も握ろうとしなかった。
やがて、人々の目的は変わった。
救いを求める手は、いつしか怨念が込められ、幾年も経ってからやっと救おうと伸ばされた手すら引きずり込む厄災となった。
悲劇の輪廻は、廻り続ける。誰の理解も得られず、ただただ孤独に。
救われぬ物語は、既に始まっていた。