第二十一話 ようこそ未来へ
side アビス
今は、時空ホールでタイムスリップ中。人生でまず経験できないレアなことだ。
でも、オススメはしない。100%酔うぞ。
……!?
後ろから、衝撃波。痛い!悪いことして…してるけど、なんでこんなことすんの!?
ソフィアの<時空の波動>ってことは判った。
Q、で、何か状況変わるか。
A、変わるわけない。
ただ、そのまま吹っ飛ばされるだけ。
うわああああああああああ!
side ミオ
……どこだろう、ここ。
柱に、縄で縛られているみたい。
真っ暗。
怖いよお……
「アビス…どこ?」
その問いに答える者はいない。
「お前も捕まっていたか」
隣から、聞き覚えのある声が。
確か…ジャスティス、だっけ。
「……ここは?」
「処刑場だ」
意外だった。答えてくれるなんて。
でも、処刑場?
「……殺されるほど悪いことしたっけ…?」
「知らん」
無慈悲。でも、反応してくれた。
……あれ?なんか声が…
聞き取りづらいなあ…
「……牢屋で気絶したままとはな…しかし、もう一人…ピカチュウはどうした?」
「い、いませんでした」
「なに?……まあ、いい。見つけ次第殺せ。…そろそろ、処刑の時間だ」
……アビスは見つかっていないのか…え?処刑の時間?
「…ひそひそ(今、処刑の時間だって…)」
「!?……ひそひそ(不味いな…ヤミラミ達は<邪悪な爪>を使った<乱れ引っ掻き>を繰り出す。その威力は、凄まじい…)」
「(ええ!?どうしよ……)」
「処刑、開始!」
フィストの声に、ヤミラミ達が飛びかかってくる。
『ウィ〜〜〜〜〜〜!!』
もう駄目……アビス…!
スッ
風が吹いた。
「ウィ……イ?」
ハラリ
私とジャスティスをそれぞれ縛っていた縄が切れ、ほどける。
ヤミラミ達の爪は……
綺麗に切られ、ネイルを付けられている。
しかも、かなり豪華で重そう。
「……その処刑、取り止めてもらおうか」
風が吹いた先。そこには、黒いコートに身を包み、藍色のスカーフをマフラーのように巻いたピカチュウが、剣を手に立っていた。
side アビス
…ソフィアに感謝すべきか分からない。
タイムスリップ中に食らった一撃。あれが、到着時刻を多少であるが狂わせ、俺に自由時間を作ってくれた。処刑場の近くで身を伏せ、待ってたところだ。
…ネイル?ああ、遊んでみた。〇〇せんせーってマンガにあったのを再現しようかと。
無理だろうけどな。マッハ20とか、ピカチュウが行ける域じゃないし。
何事も遊びから。
……あ、緊迫した場面だったな。
「<フラッシュ>!からの…」
「<光のタマ>!」
ジャスティスの持ち物を予測して、その上で重ねることが出来る技を放つ。
昼間よりも眩しい光が目を眩ませる。目を伏せなかったフィスト達はもろに食らっている。
今のうちに隠れなきゃ…
「……!?奴ら…逃げたな!?」
フィストが叫ぶ。はい、逃げました。
「見つけ出せ!」
『ウィ〜〜〜!』
走っていくヤミラミ。
あれ、フィストは残って……
「……騙されると思ったか。そこだ!」
少し盛り上がっている地面に<冷凍パンチ>をする。
「………って〜〜!!」
おうおう、痛いでしょうとも。地面を真面目に殴ったんだから。
「……いなかったか」
そういうと、ヤミラミの後を追い始めた。
「………行ったな」
柱の陰から、そっと見てみる。
都合のいいことに、3本…俺の分もだろうが、隠れるのに最適な柱があった。
少し考えれば、分かるんだけど……ありがたいな。
「……オレも急がないとな。…お前ら、行くあてあるのか?」
「……いや。お前についていく」
「……ふん…勝手にしろ」
奇妙なパーティーが出来た。