第二十話 未来へ
side アビス
……やれやれ。どうなってるんだ?
ジャスティスの話と俺の推測が正しい、というか噛み合った。
コラボ組にも話をつけた。
その直後これかよ…
広場で、ジバコイルとコイル、フィストがいる。
周りには、様々なポケモン達。《タベラレル》も《ポッポボー》もいる。
ギルドの皆も。ユクシーとエムリットも。皆が揃ってる。
演説のようにも見える。プラズマ団のゲーチスの姿を探してしまった。
…演説じゃない。
フィストの背後で黒い何かが渦巻いている。
フィストの隣に、ヤミラミが二体。その間で、縄に縛られてるのは…
「ジャスティス!?」
あのジュプトルが捕まっている。ってことは、フィストがなにか真実を曲げてるんだろう。
……俺の名前、ばれてないよな?誰も言ってないよな?
「……ということでして…」
あ、話の続きか。…どうやら、未来からジュプトルを追ってきたこと、ジュプトルは指名手配犯であること、ジュプトルは時を止めようとしていること。それらを話していたらしい。途中まで真実だが…途中からは自分のやろうとしている事とフィクションを混ぜている。
こっそり、皆の後ろにまわって聞く。
その傍ら、ユクシーとエムリットが、アグノムと話している。
「体は大丈夫なの?」
心配そうなエムリットの声ににっこり笑って返すアグノム。
「もちろん」
「時の歯車は?」
不安そうなユクシーの声に力強い言葉で返す彼(彼女、ではないよな?)
「水晶の壁で覆っておいた。簡単には捕れないよ」
……それ、俺が今持ってるよ。
でも、言うわけにもいかない。この場で広場の皆殺しはちょっと…
この時、俺の頭の中に「捕まる」「殺される」「負ける」の文字はない。
フィストは、もがくジャスティスを渦…周りの考えから、時空ホールと言うらしいことがわかった…に放り込んだ。
「……寂しいですが、お別れです。最後に…」
振り向いたフィスト。なんかやな予感。でも、ジャスティスは、ほっとくと殺される。
どうする……考えろ…
「《希望の深淵》お二人に、挨拶を」
…え?…ええっ?何?一瞬注意を逸らした瞬間に何か言われたが、反応出来ずにとっさに何か言う。
「あ、ああ」
「う、うん」
警戒心むき出しってわけにもいかない。力を抜いておく。リラックスリラックス。落ち着け…
軽く深呼吸なんてしてみる。そして、フィストに訪ねる。
「お別れ、でいいのか?」
「いえ……きてもらおうか!」
荒い手つきでこっちの腕とミオの前足を握ってきた。痛い。てか力強い。力入れすぎ。骨が悲鳴をあげてるじゃあないか。
「俺が何したってんだ!?(名前は知らないはずだろ!?)」
「ふっ…ピカチュウの貴様、貴様は知りすぎた。知らなくても良いことまでな」
……あ、あれか。
心を読むというのは災難。俺の人生教訓が弘津増えた。でも、後悔しか残らない。
今さらどうにもならない。抜け出したいけど、力を抜いたから無理。……俺のバカ…詰めが甘過ぎだ…
名前は、隠せてる。でも、「考えを知られた」方は考えてなかった。
そのまま、時空ホールへ、ミオと共に引きずられていく。
くっ……
sideout
「あっ……アビス!?」
ソフィアが、真っ先に気づいた。
アビスとミオが、フィストに引きずられていくところを。
「アウラ、ティアラ、ミコ、クオン!《真実》を…伝えておいて!」
ウォルタが叫ぶ。珍しく、鋭い声。…あ、そっか。《真実》の英雄だから、《真実》が塗りつぶされるのが嫌なのか。
「《真実》の名を持つ者として………絶対に許さないよ!!」
瞬時にウォーグルへと変じ、消える寸前の時空ホールへと向かう。
広場は、騒然となっていた。
その中を矢の如く、突き進むウォルタ。素早さは半端じゃない。が…
「…間に合わない…っ!」
消える“寸前”だからな。
「<時空の波動>!」
とっさにソフィアが、凄まじい威力の波動を放つ。その群青の波動が群衆の間を縫って動く。ウォルタの下を通過し、そのまままっすぐと…
時空ホールのド真ん中、狙撃手顔負けのコントロール。見事に命中し、時空ホールが一時的に静止する。
「今だ!」
「ええ!」
ウォルタとソフィアは、漆黒の穴へと飛び込んだ。