第十九話 捕り物
side アビス
「あと少しか…」
お決まりとなっている「フロア二枚卸」をやってから、ふと呟く。
何故向かってるのだろう。
時の歯車を守るわけでも、奪うわけでもない。
何のために向かってるんだろ。
「ストーリー進めるため?」
「メタは控えよう、ミオ」
なんでか分からない。けど、行かなきゃ。なにか……大変なことが起こりそう。
早く。早く。
速く。速く。
「す、凄い…」
現在最深部。
周りは、エメラルドグリーンの湖。
そして、つき出す水晶の柱群。
所々に点在する小さな島。
見事な光景。
「あ、アビス、あそこ!」
ミオが、正面にある島を差す。
「誰かいるみたいだよ?」
「……ヤバい……急ごう」
「死んでもこれは渡さない……!」
「残念だが、こっちも事情があるんだ」
ああ、遅かった…
もうちょい早ければ特等席でジャスティスVSアグノムが見れたのに…
「そんなこと言ってないで、いそご?」
ああ、そうだな……
バトルは惜しいが、仕方ない。
「おい、ジャスティス」
「!?」
俺の呑気ともとれる言葉に息を呑むジャスティス。
「手合わせしてもらえるか?」
「……足止めのつもりか?」
………説得ムズいな…なんだよ、"この世界に味方はいない"的な目で見てきて。
「…フィストなら、自室で珈琲でも飲んでるだろ」
そこまで言うと、《エクスカリバー》を構える。後にミオに聞いたところ、"問答無用!勝負しろや臆病者!"という気迫が、伝わってきたらしい。
「……仕方ないか。受けて立つ」
戦闘開始。
「<リーフブレード>」
初手から、必殺技かよ。
かなりの威力を誇る草の刃が唸る。
「効くかよっ!」
《エクスカリバー》で受け止める。
ガツッ!
ダイヤと鋼鉄級の硬さの葉がぶつかり、お互いの刃が悲鳴をあげる。
「…<水平斬り>!」
押し合いでは終わらない。そう判断し、力を込めて剣をふるう。
異常な威力。受けきれず、吹っ飛ばされるジャスティス。
衝撃波により、土煙が立ち込める。
「<放電>!」
電気を調節し、絶対必中の電気の波と成す。
いっきに放つ!
「ぐはあっ!?」
ドサッ
何かが落ちた音。
「…俺の勝ちだな」
シュワン!
急に光が一筋天に昇り…
「ここで諦めるわけにはいかない…」
ジャスティス、復活。
「<復活のタネ>か」
「…ま……て………」
あ、倒れてるアグノムから声が。
「い……命にかえても…歯車は守る!」
その声に反応するかのように、湖が光輝く。
そして。
音もなく、硬い結晶が成長し、ジャスティスの行く手を阻む。
「くっ……だが、諦めるわけにはいかないんだ…!」
「そこまでだ!ジャスティス!」
突然、どこからか声が。
「なにっ!?」
いきなり、ジャスティスの背後にフィストが現れた。どっから出てきた!?
「さあ、きてもらおうか!」
「くそ…離せ!」
抵抗するジャスティスを抑えながら、フィストは消えた。
……一体?
アグノムを送ってから、水晶の壁に近づいた。
「…時の歯車、貰っとこうっと」
水晶を切り裂き、取り出す。
多分、必要になる。
「よし。帰還だ!」