第十八話 水晶の洞窟へ
side アビス
……今、パルダに事情を説明した。
ただ、真実を少し曲げて。
(俺は、嘘つきだな…)
この世界に来てから何度も嘘をついた。隠し事をしてきた。
フィストに、ジャスティスに、パルダに、ギルドの皆に。
そして、ミオに。
今度機会があったら、全てを話そう。
事の成り行き全てを。
「……そうか、<北の砂漠>は盗られたか…」
一応、「ジュプトルに盗られた、アイテム使われて何も出来なかった」としておいた。
怪しまれてグル扱いされんのは面倒だ。
「…まあ、仕方ない。遅かったということだ。何より、お前たちが無事で良かった」
……ううっ……ごめんな、パルダ。ちゃんと話すからな、いつか。
……俺から話す前にストーリー終わりそうとか言うな。
で、他の皆は……収穫無し。
「全く、お前ってやつは…」
「気付きませんでしたわ…」
否、一人収穫があった。
ディーザだ。
<水晶の洞窟>で綺麗だからと拾ってきたらしい。
怒られたり呆れられたりと散々な目にあってる。
……そうだ。砂漠も仕掛けがあった。なら、仕掛けで通れないところがあるんじゃないのか?
ただ、改めて向かうのも手間。どこがそうなのか調べる必要がある。
あ、そうだ。手っ取り早く出来る方法あった。
「ディーザ、その水晶、見せてくれないか?」
「え、ええ!?…いいでゲスけど…」
「ありがとう」
透明なその石を手の中で転がす。そこそこ大きい。
しばらくすると。
「うっ……」
目眩がする。
「また貧血?…部屋に戻ろ、アビス」
ナイスフォローミオ。
ディーザに神秘的なその宝石を返すと、ミオに助けられながら部屋まで戻った。
「疲れてるんでしょうね」
「そっとしといてやるか」
フィストもパルダも、疑いすらしなかった。
ベッドに横になると同時に、世界が暗転した。
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「そうか……水晶の色が鍵か…」
「ああ。アグノムは意思、青。ということは……」
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「死んでもこれは渡さない……!」
「……残念だが、こっちも事情があるんだ」
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今回はこの2つか。
最初のは声だけだ。ジャスティスの声に、俺の声が答える。
次のは、水晶の山の前に立つジャスティスと、それを阻むアグノムというポケモン。
アグノムは、ユクシーエムリットの青バージョン。
「どうだった?」
除き混むミオに、説明する。
ついでに、ジャスティスから知った事実も。
「……てなわけで。俺は、未来からジャスティスと一緒に来て、何故かポケモンになった。来た目的は、未来を変えるため」
「え?ええ!?」
混乱している。…当然だよな……
「あの、さ、アビス。もし目的が達成されたら、未来に帰るの?」
…そっか…
言いたいことが痛いほど伝わる。でも。
「…否、ここにいるよ」
また、嘘をついちゃった。
未来を変えたらどうなるのか、分かってる。
でも、ミオを悲しませたくない。
でも、いつかは悲しむことに、この時は気づけなかった。
「フィスト、パルダ。<水晶の洞窟>へ行ってくる」
「は、はい…」
「無理するなよ?」
……下手に教える訳にはいかない。
念のため俺とミオだけで行く。
<水晶の洞窟>
どうにか抜けた。
目の前に3つの水晶の柱が立っている。
それぞれが、正三角形に対応して並んでいる。
触れると、冷たさを感じず、ふっと色を変化させる。
(……時空の叫びによれば、ここで色を…一色に揃える。揃える色は、青。アグノムは、水晶の如く真っ直ぐ意思を持つ。水晶…透明…否、青)
何度か触れるうちに、全ての水晶が紫を帯びた青へと変化する。
バチバチバチ…
3本の柱の天辺…そこから真ん中に向かって、電気が集中する。
「下がったほうがいいんじゃないかな?」
ミオに言われ、慌てて下がる。…ぼーっとし過ぎたか。
やがて、柱は色彩を失い、中心から小さな山ほどの水晶の塊が出てきた。
「あ、あそこ!穴が…」
「入っても良いらしいな」
水晶の山は、大きな穴があった。
<大水晶の道>
「……これは……」
「……綺麗……」
…凄い。周りが、水晶しかない。
道も床も、色様々な水晶で構成されている。
……でも。見とれている場合じゃない。
早く、行かなきゃ。何か、大変なことになりそうだ。