第十三話 有名探検家
3:00 side アビス 海岸
遠征も終わり、やっと普通(?)の生活に戻れる。
「わざわざ朝早く何よ…」
ソフィアに特訓の手伝いをしてもらおうと、この時間に起こした。
ピタゴラスイッチみたく、ドミノでバケツが降ってくる仕掛けで。…まずかったな……
「できれば貴方とは戦いたくないんだけど…」
気持ちは分かる。 俺が普通で、今の俺の能力を持っている奴に会ったら、すぐ逃げる。
「とりあえず…バトルスタート」
人生押しが大切だ。今、ポケモンだけど。
「<水の波動>!」
「<ダイヤシールド>」
青の波動とダイヤの壁がぶつかり、煙が立ち込める。
「<龍の波動>!」
「…試すか…」
群青色の波動が迫る。エクスカリバーの柄で受け止める。正面から。
エクスカリバーが群青色の力に包まれる。ドラゴンタイプの剣が完成。
「<水平切り>」
切りつける。
「!?」
残念。間一髪で避けられた。
「お返しよ!<時空の波動>!」
周りの時空が歪み、とてつもない力が迫る。
「危ないっ」
左手だけで左に側転。回避。
後ろの景色がなんか凄いことになった。どうなったか?ご想像にお任せする。
「ほらほら、来いよ!<癒しの波動>!」
「嘗めてるのかしらっ!?<時空の波動>!」
「相殺する。<時空の波動>」
時空の力を掌に集め、少し溜めて放つ。同時にソフィアも<時空の波動>を放つ。
二つの波動がぶつかる。ぶつかった所の時空がかなり歪み、七色に輝く。
……ドーン!
少しすると、お互いに相殺しあう。
またもや煙。お先真っ暗。ちょっと違うか。
「五刀流<無双>…<五段水平切り>」
「ぐ……」
<無双>は、最高難易度ダンジョンですら楽々の最強技。ただ、体力が持ってかれる。
煙のなかでも当たる技、全体攻撃の<水平切り>を五段で撃つ。
ドサッ
命中したのか、倒れる音。
……煙が晴れる。ソフィアが倒れ……寝ている。しかもボロボロ。
…多分。水平切りが命中すると同時に寝不足で寝た、と。斬られても寝ているとは…
とりあえず運ぶ。こんなとこで寝かせて烏山さんに怒られたくはない。
あれ?かなり時空が歪んでいるところから、誰かが出てきた。ラルトス、みたいだ。本の形をしたペンダントをしている。気絶寸前。抱えて運ぶ。
……重い。両方♀だけど。
「………」
無言で台車を造り、乗っける。
5:00 ギルド
「アビスさんとお客さんです!」
「入ってくれ!」
台車を階段前で回収、そのまま担いできた。
「ソフィアさん!?」
「寝てるだけだ」
「この人は?」
「別世界からのお客」
淡々と答え、自室に。朝礼はパス。
「うっ……」
「クー…クー…」
ソフィアはともかく。ラルトスの方が気がついた。
「大丈夫か」
「ここは?」
「お前がいたところとは別の世界」
「そう…私、クオン」
「クオンか…よろしく。どうせいくとこ無いだろ。一緒に行動しよう」
先読みで、滞在場所をつくる。…ホテルのボーイじゃないぞ、俺は…
「アビス、誰?そのラルトス」
ミオが聞いてきた。他の皆は調べもの。
「クオン・リッケンドルフ。別世界から来た」
「そっか…よろしく、クオン!」
「……よろしく…」
自己紹介終わり。なんで名字を知ってたか?当然、思考を読んだに決まってるじゃないですか。本人、気付いてないけど。
意思表示苦手そうだな。
「足形発見!足形発見!」
「誰の足形?誰の足形?」
「足形………判りません!」
「なんだって!?足形を見分けるのがお前の仕事だろ?」
「だって……」
なんかトラブってるみたいだ。ドームとタクだな。
「ちょっと見してくれ。……」
「おい!?……行っちまった。やれやれ」
穴に飛び込み、進む。
いつも通りに見る。ついでに考えを調べる。
「これは…ゴーストタイプで浮いているから仕方ないな。ヨノワールだ。…………ま、いっか。通してもいいぞ」
気になる考えだった。「未来」がどうこうって……ま、いいや。
しばらくすると、その人物が入ってきた。
side ミオ
ヨノワールが階段を降りてきた。
腹に口がある時点でシュールだ。やっぱり怖い。
「こ、この方はっ!?」
パルダが叫ぶ。知っているらしい。
「有名探検家のフィスト・ウィンズさん!?なんでここに…」
有名探検家が何の用だろう…
「あの、親方様に会いたいのですが……」
「はい、少々お待ちください」
「かの有名なギルドに来れて、光栄です」
……知らないなあ……
「ねえ、ドーム。あの人は?」
「!!???…知らないのか!?」
「まあ、仕方ないですわ。この頃、彗星の如く現れて、一躍有名になった、最近の方ですから」
彗星の如く……ドカーン!?……痛そう……
「ミオ、違うと思うぞ」
「でも、それくらい探検家としての能力は凄いらしいですわ」
「そんなに?」
「ああ。確か、チームを持たず、単独で行動するのが特徴だ」
「ひ、一人だけで!?」
「ああ。そうとう腕に自信があるんだろう………だが、その知識の多さがもっとも凄いらしい。世の中に知らない物事はないというぐらいの博識らしい」
「あくまで噂ですけど。でも、その知識で成功を修めているみたいですし。いまでは、尊敬したり、崇拝したりする人がそろそろ100000人を超えるとか…(ある意味凄いですわ)あながち、嘘ではないと思いますわ」
「だが、ここにくるのは初めてじゃないか。タクに分からなかったくらいだし。親方様とも初対面だと……」
ふと、親方のほうをみる。社交的で仲良しこよししている。
「ま………ああいう人だからな……」
「そうですか…失敗ですか…」
「うん。ごめんね。なにも解らなくて」
「いえ、これも何かのご縁。私はしばらくトレジャータウンに滞在する予定ですので…ときどきお伺いしたいのですが、よろしいでしょうか。情報両も多彩ですし、これからの探検に役立つと思うので」
「それなら、ぜんぜんオッケー!大歓迎だよ♪」
そっか。聞きたい事が聞けるかも。
「みんな、有名だからって、迷惑はかけないでね♪」
ですよね。
「皆、有名だからって、間違ってもサインとかねだらないよいにな!」
その心配はないと思う。
「パルダ、『とか』の具体例を頼む」
「ええと……サインとか、サインとか、サインとか、…………」
「お前、もらう気満々だな。…フィストさんとやらは、別に大丈夫らしいし……」
手品のようにサインペンと色紙をだす。まさか。
「さっさと貰え、ミーハーが」
「「………えと。あの……」」
あーあ。さきよみし過ぎ。
「パルダの用事も済んだら、仕事開始な。多分フィストは、質問までならOKなはず。じゃ、仕事開始!」
『お、おー!』
アビス凄い。
「フィストは、そこら辺の散歩でも行ってきて。…あ、あと……」
「な、何ですか?」
?……なんだろう。
「…未来が消えると困る、消えたくはない、奴の好きにはさせん…そればっかり考えず、他のことも考えな」
「なっ……貴方は一体…」
「話も終わったし、行くか」
「あ、待ってよ!」
慌てて追いかける。…なんの話だろう?
side アビス
「この依頼で全部か」
懐かしいな、依頼。2日ぶりか。
「カクレオン商店に行くべきか…」
「報告も兼ねて行こうよ。あと、倉庫も」
「……そうですか。今回は失敗ですか」
「たいした物は手に入らなかった。残念だが…」
「そういうこともありますよ」
佳供さん、レオンさんと話す。ユクシーに言われたし、歯車があると知られたら何かありそうだからな。
「じゃ、この頃切れてきたオレンとピーピーマックス、二つずつ頼む」
「はい、毎度!」
「レオンさん、不思議ダマの在庫見せてくれ」
「はい。…どうしました、突然?」
「いや、ちょっとな」
不思議ダマをいくつか買って、店を離れる。
依頼を全てこなした。
やっぱり疲れる。しかも、ランクが上がっている。全部をやるのは難しくはないけど…移動が疲れる。
最初の頃、かなり広かった部屋へ。
「じゃ、寝るか……にしても、いつの間にこんな人数が…」
ソフィアにウォルタ、アウラにティアラ、クオン…そこに俺とミオ。あと3人は大丈夫そうだが…
「宿がとれなくてな」
「たまには、と思ってね〜」
この頃は調査先で一晩、ってのも珍しくなかったからな。
久しぶりに日記書いとくか。サンやディーザもやってたけど。
【○月◎日 クオン、フィストと遭遇。フィストの方はまだ何かありそう。焦りと使命感の他に「ジャスティス・シャープ」って名前があったが…関係あるかどうか。……独り言だが、ドクローズどした?】
あ、インク切れた。買い足しておこう。
……チャット、ギルドのハシゴで寝るの止めてほしいな…いちいち窓から出ずに済むのに。
次回 相棒の能力