第十二話 遠征 後編
side アビス
「「!?」」
どっかで聞いた声………えっと………
「「どなた様でしょうか?」」
「「「《ドクローズ》だっ!」」」
あー、居たな、多分。
「謎を解いてくれてありがとな、ケケッ…ゲホッ、ゲホッ……」
「「アニキ!?」」
………聖なるタネの乱用と不足、階段周りのポケモンの攻撃、他いろいろあってこのザマか。やっぱ「ドクローズ惨状」。そのうち「山上」になるかも……
「あとはお前たt……」
「お前達を倒してお宝もらってトンズラ、って訳か」
「分かっているなら話は早い。お前達は毒ガススペシャルコンボに耐えられな………い………あれ………?」
うんうん。普通あそこでは倒れるのに、防がれたよね、<ダイヤシールド>で。
「……えーと、さいなら!」
「………」
緊迫した場面。しかし……
「まって〜♪」
コロン。
急に、セカイイチが転がってきた。とすると。あの人もいるよな。
「ボクのセカイイチ〜♪」
ああ、やっぱり。ウィリフ。グラードン像の正面から来た。
ちなみに、俺たちはグラードン像の左から来た。《ドクローズ》?気づいたらいた。
「よかった〜♪セカイイチがなかったら…ボクは、ボクは……ウルッ」
……………
「「「「「………………」」」」」
「あれ?君たち、何やってるの?」
急に話題をふる。行動は読めるのに、何考えてるか分からん。
「「え?」」
「探険してこいって命令だしたよね?ほら、行って行って♪」
「「は、はい……」」
(もしかして、《ドクローズ》関連か?)
思考が読めなきゃ確かめられないが。
「急ごう!」
「うん!」
………………
「親方様、私達も……」
「邪魔しにいきます、かな?♪」
「「「!?」」」
「顔に出てるよ?♪」
(ヤバイ……)
「ヒソヒソ(アニキ。抹殺しましょう!)」
「ヒソヒソ(毒ガススペシャルコンボで、か…仕方ない)」
「ヒソヒソ(準備できやした!)」
「……おい、ウィリフ」
「?」
「悪いが貴様には……ここでくたばって貰う!毒ガススペシャルコンボ!!」
ドーン!
辺りが煙に覆われる。
「凄い凄い♪」
「え?」
効いてない。元気元気。
「お返しで…<メガトンパンチ>♪」
「「「グハッ!?」」」
相手を縦に積み、上から制裁。潰れかける。
「でぇ……」
スウウウウゥッと、息を吸う。体が1.5倍になる。
「たああああああぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「「「グギャアアアアアア!!」」」
鼓膜破けかける、HP1、状態異常全部より厳しい耳鳴り。そのままグラードン像の視線に沿って転がり、15mで止まり……崖から落ちた。
ドサッ、ドサッ、ドサッ………
木がカバーになっているらしい。が、絶対痛い。霧が晴れているので、その様子はよく見えた。
ドッスーン!
あ…最後まではクッションはなかったみたい。20mほど落ちた。
「じゃあ、行こうっと」
《ドクローズ》シカトで進む。
side アビス
なんか凄い声聞こえたな。ま、いっか。
今、グラスでいう足の部分、入り口を見つけて入ろうとしている。
「なんか暑そうだな」
「水蒸気吹き出しているよ?」
入り口は岩の塊。しかし、その岩のあちらこちらから水蒸気が吹き出している。見るからに暑そう。
「暑くないの、アビス?」
「え?」
聞かれて気づいた。コートだ。が…
「なんか知らないけど平気」
クーラーでも入っているのだろうか。暑くも寒くもない。一体どういう仕組みか。
「じゃあ、行こう!」
「ああ」
<熱水の洞窟>
「暑いね……」
「大丈夫か?」
暑いらしい。コートのおかげで少し暖かいぐらいに感じるが……
「試しに脱ぐか」
………………
「暑い。暑い以外のコメントできない」
「アビス!?」
慌てて着直す。
いや、コートあってよかった。そういえば、人間のころ暑い中コートは自殺行為だったな…
「にしても、暑苦しいポケモンが多いな…」
「炎タイプ?」
性格も暑苦しい。「燃えるぜ!」とか言われたし。その前は「もっとやる気だせやァー!」だったか?
いつも通り話しながら進む。傍若無人とかいってもいいくらい。
「壊さないでよ?」
「分かってるって」
思えば、少しフレンドリーになったか?今までだったら「ああ」で済ませているはず。
…………
「なんだかんだで中間地点か」
「かなり長いダンジョンだね……」
持ち物の整理もせず、出発。
「<平行切り>!」
「<アクアボール>!」
ミオは<エナジーボール>の水verを放っている。確か他にも全タイプ使ってたな。<フレイムボール>とか<フェアリーボール>とか。しかもPP消費してないし。
本家で言えばチートのすり抜けを使用しているような進み具合。ブーバーだろうがなんだろうが蹴散らす。
「ここが最終階かな」
「………………」
今いるのは、谷間と言うような所。周りはちょっとした崖で、向こう側に向かって……北か。そちらに道が延びている。
「…………なに、ここ……」
「……………誰だ?」
得体の知れない違和感。恐怖に近い。。
ミオも感じるのか、小さくなっている。
「展開的に来るのはグラードン。しかし、こんなところに出てきたら可笑しい。とすると…」
「グギャアアアアア!」
「な、なに!?」
「………ハァ。やっぱりか……」
ドシン!ドシン!
なにか(正体分かってるけど)が近づいてくる。重そう。
「グギャアアアアアアアアア!!!」
………勘弁してくれ。
sideout パルダご一行
「本当に親方様がいたのかい?」
「ヘイヘイ!途中でセカイイチとおいかけっこしてるところをすれちがったからな!」
「本当なのか!?」
「ああ、だから何度も……」
パルダ達が話しながら走る。器用なことで。
「あ、あれだぜ!ヘイヘイ!」
グラードン像までたどり着く。息切れしていない。持久力たっぷりだ。
「こいつの謎を解いたらこうなったのかい!?」
「ヘイヘイ!そうだぜ!」
「…これはグラードンだ。伝説に伝わるポケモンだよ。…かつて大地を盛り上げ、陸を増やしたポケモンだ」
流石情報屋である。博識。
「ヘイヘイ!もし、このグラードンと戦うことになったら……」
「その時は…そのポケモンの命はないようなものだ!」
side アビス
今、パルダ達は「命はない」的な話をしているんだろうな…弟子がその状況だってのに。
「お前ら…何しにきた?」
「ヒソヒソ(ミオ。俺が話すから)」
「ヒソヒソ(うん、お願い)」
下手に禁止ワード言うよりは、と。
相手の考えは、湖の守護。しかも、平和主義ではない。俺たちはそこに行きたい。となると。
「バトルだ、グラードン!」
「ええっ!?」
「…命知らずが」
「勝ったら…<霧の湖>まで通せ!」
「なんだとっ!?」
「なに言ってるの!?」
「それとも伝説のポケモルなのにクズだとか?赤いアルマジロさん」
「うぐぐっ……貴様ぁ……」
「じゃあ………バトルスタート」
伝説のポケモンは怒らせないほうがいい。触らぬ神に祟りなし。
「グオオオオ!!!」
<地震>だ。溜めている。絶対俺はくらったら確一。気合いをそらせば…
「ミオ、地面タイプに効果抜群の技頼む。水、氷、草辺りだ」
「うん!<エナジーボール>!」
緑の弾はグラードンに着弾。
「もう一度!<エナジーボール>!<アイスボール>!」
効いている。一回のダメージは増えている。溜めていた<地震>も、集中が切れたのか、力が抜けている。
「グググ…この程度では倒れんぞ!」
「じゃあ、これはどうかな」
《エクスカリバー》を抜く。右手で構え、左手と口元に集中してふたふりの剣を造り出す。
尻尾を硬質化させ、<アイアンテール>にする。ロードコピーで習得した。
さらに、空中にも剣を浮かべ、<サイコキネシス>で操る。これで5本の剣。
「五刀流……<無双>」
少し前に<海岸の洞窟>で試した合体技。結果、S級ダンジョンですら無双できる技となった。
「<斬撃の舞>」
これは、<剣の舞>と斬撃を組み合わせた技。表すなら、「微塵切り」や「めったぎり」が相応しい。
斬!×100 割愛させていただきました by abyss
「グアアアアアア!」
……幻だよな、やっぱ…なんか手応えがないし。
「もう一発!」
斬!
………ドーン!
倒れた衝撃が凄い。幻でこれか。
シュン!
「「!?」」
眩しい光。まともに見られない。それが、倒れたグラードンから放たれた。
………
やっと、目が復活。
………消えているな、グラードン。
「倒したの?」
「いや…チェックメイトにはまだ早い」
気配は……グラードンのいた所から左斜め前、か。
「そこだ」
まだ気づかれていない、と油断している。好都合。
相手の喉に当たる場所に《エクスカリバー》をつきつける。
「……チェックメイト」
「………あの、剣を下げてくれませんか?」
「いいが、お前の体も切り裂くぞ?さっさと姿をみせろ…ユクシー」
「「!?」」
剣の先に、ポケモンが姿をみせる。ユクシーだ。
「何故分かったのです?」
「気配を消して心を閉じなければ、絶対わかる」
「……アビス。ユクシーから剣退けてあげて?」
………ああ、なるほど。ユクシーは冷や汗まみれ。既に水溜まりが……半径30cmくらいか。
仕方ないので退けてやった。
「………あ、ありがとうございます……ええと、悪い人じゃない…ですよね……?」
「もしそうだったら?」
「アビス、苛めないでよ……」
「だ、大丈夫みたいなので、<霧の湖>まで案内します…」
面白かったから悪乗りしてしまった。
「そういえば、ここに人間、もしくはアビスと名乗るピカチュウがきたことは?」
「いえ…ありません」
ここで記憶を消された説はなしか。
「いままでここに来た者は、この…」
グラードンがホログラムのように瞬きながら出てきた。
「グラードンの幻で追い払い、それでも駄目なら、私の力でここに関する記憶を消します。そうして、<霧の湖>を守ってきたのです」
………
「着きました」
かなり拓けた場所に着いた。大きな湖が広がっている。中央には……何かが光っている。
「あの青緑に光っているのは何?」
「あれは、時の歯車です」
「「!?」」
まさか、こんなところで…時の歯車が……
でも、何だろう。時の歯車を見ていると、胸騒ぎが…自分がこれを探していたかのような感覚がある。
(…そのうちわかるか)
トコトコ♪
「うーん、残念♪時の歯車は持ち帰れないよね♪」
「ウィリフか」
「親方様〜!」
他の皆も来た。
「ヘイッ!?オ、オイラは食っても美味しくないぜ!?」
グラードンに反応している。出しっぱなしだったからね。
……かに鍋もいいな。
「ほら、そんなことより♪」
ウィリフが呼ぶ。
「今始まったよ♪」
………凄い絶景。
間欠泉が、50mほど吹き出ている。それが、時の歯車の光でエメラルドグリーンに輝いている。その回りでは、たくさんのバルビートとイルミーゼが光りながら舞い踊る。幻想的だ。
『凄い!綺麗!』
なんか皆楽しそう。
「ねえ、アビス」
ミオが話しかけてきた。
「私、ここでアビスと一緒にこれを見たこと、ずっと忘れないよ…」
「……俺もだ」
一生忘れないでいたい。
「じゃあ、今回の遠征は……♪」
『大成功だー!』
「皆さん、ここでのことは内密にお願いしますね」
「分かった。じゃ、ギルドに帰ろ♪帰ろ♪」
皆、歩き出す。何やってんだ?
「探隊バッジ使わないのか?」
景色を楽しみながら、では無さそうだが。
「!?」
「え、えっと…」
急にごそごそしだす。忘れてたのか。
忘れていると言えば……誰か忘れている気も……まあ、いいか。
バッジをかざす。
『帰還!』
「ううっ…誰か……」
「気づいてくれ〜………」
その後しばらく、霧の中、うめく幽霊がいる噂が立ったらしい。
次回 有名探険家