第十一話 遠征 前編
side アビス
遠征へ行く準備をして、現在ギルドB2F。トレジャータウンは遠征の話題で持ちきりだ。
「パルダ、準備完了」
「こっちもでゲス!」
「こっちもですわー!」
「よし、皆用意出来たな。今回の目的は<霧の湖>だ。霧がこく、見つけづらい故、伝説だけがいきている……そういう場所だ。ギルド全員で動くと機動性に欠けるため、幾つかのメンバーに別れて行動する。メンバーだが、一組目はサン、ドーム、ディーザ、タク」
「足を引っ張るんじゃねーぞ!」
「こっちのセリフですわ!」
「お、落ち着くでゲス……」
「大変そうですね……」
「続いて二組目、パリム、クラド、トリオ、クラブ」
「ヘイヘイ!よろしくな!」
「こちらこそ」
「良いメンバーだ」
「グヘヘヘヘヘヘヘ………」
『怖い!?何!?』
「となると、私と親方様ということでよろしいですか?」
(よろしいですかって、決定権ないんじゃ……)
「えええええぇ〜〜〜〜〜?パルダと一緒ぉ〜〜〜〜〜?つまんな〜〜い!」
「親方様、これは作戦なんです……」
「………………」
「………………」
「………………」
「………………」
「………………ケチ」
(ケチで済むんだ!?)
「あとはドクローズの方々で一組、あとは……」
「俺たちは六人か」
「ああ。そうだ。新人だからな」
((絶対他の意図がある……))
(ダンジョンの崩壊を防ぐためとか言えない……)
どうやらギルドを四分の三、75%壊したからリミッター役らしい。
「じゃあ、遠征に出発するよ♪」
崖の上
「ポニョいるかな」
「フジモトも来るのは嫌だな」
「「「「………」」」」
ボケはこのくらいにしておいて、今俺たちは洞窟の前にいる。
「うわー、凄い高いよ!」
「遠足じゃないぞ」
今回はかなりの距離だ。海沿いのコースで、このダンジョンともうひとつのダンジョンを越えてベースキャンプまで行く。二日が他のメンバーの目安だ。
「この像は…」
「ガルーラ像のこと〜?ガルーラ倉庫に持ち物を預けたり、引き出したり出来る便利な施設だよ〜」
「銀行みたいだな」
ATM、だったか?
「あれ?入り口が二つあるよ?」
ミオがのぞきこんで言う。
「多分<小さな横穴>は戻ってくるコースだ」
「<沿岸の洞窟>ならビンゴか」
アウラが予測。俺がまとめる。
「じゃあ行こう!」
ティアラが早速動く。
「じゃあ行くか。チーム《希望の深淵》、出発!」
<沿岸の洞窟>
「手応えないなー」
「そうだね〜」
「まあ、いいんじゃない?」
ウォルタ、ソフィアと話しつつ近づいてきたクラブを吹っ飛ばす。
「そういえば……別の世界から来たんだよな、四人とも……どうやって来たんだ?」
「<時空の波動>で開いた穴にとびこんだけど」
「なんか虹色の穴があったから入ったらここにいたよ〜」
「俺たちもウォルタと同じだ」
えーと、だいぶ凄いことになっているな。理由は似たようなものか。
「にしても、本当に弱いな……」
「アビス、地形変えてる」
「バンギラスみたいだね〜」
ほめているのか?
しかし、事実。何気なく振るった《エクスカリバー》の衝撃波がキャモメとトリトドンを貫通し、壁に穴をあけ、そのまま見えなくなる。
さっきは、階段を見つけたら既に真っ二つになっていた。上れたからいいが、うっかりしたら階段を粉砕しかねない。
勿論、地形が変わるのは俺だけのせいじゃない。
ソフィアは遠慮なく<時空の波動>を繰り出すし、ウォルタも止めない。というか、<地震>で悪化させる。ミオはミオで、何故か技カウントされてない<シャドーボール>や<エナジーボール>を乱射する。血筋が関係しているらしいが……
アウラとティアラも、容赦なく<竜の波動>を乱射。
結果はご覧の通り。あんなに狭かった通路が、今じゃフロア最大の広場に。ポケダンのマス目でいうと……20×50の、千マス。チート使ってもこうならない。
「次で抜けるよ!」
階段を見つけたミオが叫ぶ。
まさかの八等文された階段を上ると、ひらけた場所に。
「半分まできたか」
「次も二つ入り口があるよー」
「ああ、<ツノ山>が当たりだ」
十分ほど休憩したあと、出発。
ここまでに費やした時間、約90分。
「さて、行くか。目指せ一番乗り!」
気合いを入れ直し、<ツノ山>へ。
「抜けたか」
「はしょり過ぎだろ!」
アウラに突っ込まれる。
現在、<ツノ山>を抜けたすぐのところ。誰もいない。半日足らずで来てしまった。
今までの道中を振り返る。
(ウォルタは70Lvだし、ソフィアは時空の波動放ちまくるし、ウァールス兄妹は伝説だからか無傷だし。ミオはシャドーボール乱射するし。壊れかけて崩れ出したダンジョンから脱出する以外苦労してないっつうか、なんつうか……)
壊れた理由は単純明解。俺たちの技にダンジョンが耐えきれなかったのだ。
(まさかのタイムリミット付きとは)
まあ、おいておこう。
数十分もすると、ウィリフとパルダが来た。
「楽しかった〜♪」
「ゼェ、ゼェ……ハァ、ハァ……」
……ウィリフは無傷。元気いっぱい。でも、パルダはボロボロ。<ツノ山>から出てきたから、とばっちりを受けたんだろう。
「あ〜♪早かったねえ♪」
「ゼェ、ゼェ……お、お前たち、何をやらかしたんだ!?」
((((((ダンジョン崩しました。))))))
言いたいけど言えない。
「バンギラスのせいじゃないですかぁ?」
敢えてしらばっくれる。
「そ、そうか……」
しばらくして、他のメンバーも揃った。新入りが一番乗りだったのは驚かれた。ダンジョンを潰したのは黙っていることにした。理由?皆が巻き込まれたらしい。申し訳ない。欠片も思っていないが。
「では、皆が揃ったので作戦会議をする♪」
いよいよ遠征の目的、探険か。
「ここには、見ての通り森がある。これから、ここを調べてもらう。各自で行動するように。親方様とワタシはここに残って情報整理だ」
俺たちは分かれるべきか?
「ヘイヘイ、にしても、ホントにあるのか?<霧の湖>?」
「まあ、クラブ、そんなこと言ったら夢が無いですわ!」
あとロマンと勇気と希望と……あ、関係無いのも入れてしまった。
「多分<霧の湖>が見つからないのは、この霧が原因だと思われる。<霧の湖>の発見、もしくはこの霧を払う方法が見つかったら報告してくれ」
<霧払い>誰も覚えてないのか?
話は変わるが、<霧払い>が秘伝技じゃなくなったんだよな……
「そういえば、ワタシ、ここに来るまでに伝説を聞きましたの……」
パリムが切り出す。
「<霧の湖>にはユクシーと呼ばれるポケモンがいて、そのユクシーは…」
「「「相手の記憶を消すことが出来る」」」
パリムの後を、俺とウォルタ、ソフィアが紡ぐ。
「伝承は粗方調べたからね〜」
「このくらいだったら調べ済みよ」
「俺も聞いたことがある」
記憶は消えているが、日常的なことや、元の世界の何割かは覚えている。
まあ、置いとくとして、だ。
「確かに、<霧の湖>が見つからない理由にはなる。覚えてなければ見つけていないことになる」
「まあ、こんな所には噂が憑き物さ」
パルダ、少し違うと思う。文字が。
「フフフ、心配は要らない。今度もまた、大発見があるさ♪皆、がんばろ♪がんばろ♪」
「それでは、散策開始!」
ウィリフが励まし、パルダが出発の号令。
早速森へ駆け出す。
「私達はここに残るわ」
「頑張ってね〜」
「応援している」
「行ってらっしゃーい」
今回は二人で攻略だ。
「あれ?何か落ちてるよ?」
ミオがなにか見つけた。
赤い石だ。
「うわー、綺麗。……あったかい。溶岩でも無さそうだし……」
「炎の石か?」
「違うと思う…もって行こう!」
なんなんだ?
<濃霧の森>
「…………………………」
霧が濃い。電気技使いづらい。イラつく。結果、ダンジョン破壊率がいつもの七割増(当社比)。
効かない技より斬撃。<サイコキネシス>を上乗せして、思いきり放つ。
ダンジョンが一つの大きな部屋に。ポケモン?真っ二つ。地獄絵図そのもの。
「階段、また壊した……」
階段も真一文字に切れている。
なんだかんだで最終回。
「アビス、こんなとこで終わると中途半端過ぎだって」
………最終階。
霧が濃くなり、1mより先が見えない。周りは何故か水が上から落ちてきている。
「何も見えないね」
「ああ」
とりあえず前(と思われる方向)に進む。と……
「「!?」」
ポケモンの像の前に来た。デカイ。
「な、なんのポケモンだろう……」
「グラードン。神話に語られる伝説のポケモン。かつて大地を盛り上げ、陸を増やしたとされる。ポケモンの中では重さはトップクラス、いや、最も重かったと思う。ゲンシカイキできる」
「…な、何で知ってるの?」
……聞かれても困る。
「じゃあ、調べてみるね」
早速グラードン像を調べ始めるミオ。
「あれ?これ………」
側面になにかある。
「足形文字か?でも、俺が教えてもらったのと形が少し違うが……」
「古代の足形文字だよ。ええっと、『グラードンの命 やどりし時 霧は晴れ 宝の道開くなり』………やった!これだよ!」
「命宿りし、か。無機物ならばスイッチか?命……心臓。ん?……!ミオ、あの石を出してくれ」
「え?は、はい」
ミオに渡してもらい、グラードン像をくまなく調べる。
胸元に窪みがある。これか?
その時。
急に視界が不安定になる。暗転。
(……またか、謎も解けたのに……)
…………
何故か、今回は真っ暗なままである。
声だけ。
「そうか!ここにッ!……ここに、…………があるのかッ!」
ただ、その一言が聞こえた。そして、またさっきの景色に……
グラッ
(またかよ……二回連続より繋げて欲しい……)
また、景色は見えず。声のみ聞こえる。
「グラードン像に日照り石をはめれば、仕掛けは動くはず」
「霧が晴れるかも、ってことか?流石オレのパートナーだな」
……………
また、普通の状態に。
(さっきの声……二回目の前者は俺の声のような……一回目と二回目の後者は聞き覚えのある声……一体誰だ?)
「……よし」
気をとりなおし、石をはめる。
「ヘイヘイ!なんか見つけたか?」
ナイスタイミング、クラブ。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……
地鳴り。ヤバかった時を想定して、俺自身で来たのだが……ビンゴか。
「離れて伏せろ!」
「う、うん!」
「ヘ、ヘイ!?」
全員(実際三人だけ)5m離れて伏せる。
ピカーーン!
石像の目が光り、そして………
「「「!?」」」
霧が……晴れた……
「こ、この事を皆に伝えて来るぜ!」
「頼んだ」
にしても、大掛かりな仕掛けだ……!?
空をあおいで、気づいた。
「!?」
隣でミオも驚いている。それもそのはず。
「今まで見つからなかったはずだよ」
「これは……」
天空の城ラピュタよろしく、巨大な岩が上空にあった。巨大な複数の滝は、ここから溢れた水が原因か……
岩の根本は、一応地に着いている。しかし、細い。例え?シャンパングラスかな。細い支柱、上にある水源。
「クククッ、ご苦労様だったな……(ゼェ、ゼェ)」
!?
続く!……はず!