番外編 剣との出会い
これは、ストーリー的に入れられなかった第八話の依頼の物語。
side アビス <トゲトゲ山>
今、俺達はとある依頼で洞窟を疾走している。洞窟内に俺たちの足音が高く響く。
依頼内容はこんな感じ。
『私達ギルガルド三兄弟は武器を作ったりして生活を建てています。しかし、そのための大切な道具と材料が盗まれてしまいました……取り返してください!お願いします! 報酬:7000P+???』
この『?』のところが気になるが、武器商人か。気になる。剣とか作って貰いたいな。この世界に剣があればいいけど。
何故剣か?…男の浪漫だ。
「いたよ!!」
あいつか。盗人は。種族はサンド。他のシリーズに出て来そうな奴だ。
「待て!このっ!」
怒って石の礫を投げる。
「痛っ!」
足が止まったところで剣を出して斬る。刃が掠り、血が飛び散る。けど、この程度だったなら病院で包帯巻けば二日で治る。
この程度なら平気だ。普通。
「¢△仝□⇒※▼!?」
パニックするサンド。そのまま、自分の血を見てパタンキュー。普通じゃねーのかよ…
「「気、弱すぎ……」」
仕方なく応急処置して連れ帰る。
引きずって。
「す、すいません!!」
「いいですよ、道具が帰ってくれば。事情があれば仕方ないです」
ここはギルガルド工房。トレジャータウンの地下にある。入り口はヨマワル銀行の近く。
依頼主のギルガルドがサンドを慰める。どうやら、いじめられて逃げていて、咄嗟にこの家に飛び込んだらしい。一息ついて鞄を降ろした途端見つかり、慌てて確認せず道具を持って行っちゃったと言う。
同情。今回は逮捕無し。てか出来ない。
「しかし、本当にありがとうございました。お礼といっては難ですが、お好きなものをお作りします」
願ったり叶ったり。ポケッターリモンスターリ。踊りたくすらなる。
「剣を作って欲しいんだ。材料はこっちが用意する」
「はい、かしこまりました」
しばらくして、家が工房っぽくなってきた。用意できたみたいだ。炉に灯が灯る。
「よーし、頑張るぞ!」
「兄さん、やろう!」
「作成開始だ!」
ヒトツキ、ニダンギル、ギルガルドの順に言う。武器家族。
手際よく剣を作成している。しかも、刄はダイヤモンド。世界一固い鉱物。燃えやすいはずだが、そこは彼らの技術でどうにかするらしい。
なんで加工出来るの?聞いてみたら企業秘密と言われたけど、気になる。
足りないダイヤモンドや鉄を俺が造り、ミオが運び、それをギルガルド達が加工する。
5時間もすると、形になってきた。150cmほどの刄。俺の二倍以上。(俺の身長は通常より大きい55cm強)しかし、鞘に納めると60cmくらいにまでなる。鞘も150cmあるけど、縮む。何故?…聞いたら長くなりそうだな。そもそもここで何故なんて聞いて答え出るはずがない。
手に馴染む。使いやすい。しかも伸び縮み可能。柄は持ちやすく、ダイヤモンドとブラックダイヤモンドがはめこまれている。彼ら曰く「まだ何か能力が眠っている」らしい。
持ってみると手に馴染み、軽く振ると空気が斬れる音がする。
「ありがとう。感謝してもしきれないよ」
「いえいえ、お礼の用なものです。材料も提供していただきましたし」
作っている途中、錬金術のことも話した。数少ない理解者だ。
「アビス、剣に名前とかつけるの?」
ミオが話してきた。名前か。それなら、候補が一つ。
「もう決めてある。エクスカリバー」
「エクスカリバー?」
「ああ。俺が人間だった頃の世界で、とあるお伽噺に出てきた伝説の剣。いつかこいつと伝説を作りたい、と思って」
「いいね。伝説かぁ…」
夕日に新しい剣を掲げてみる。
「これからよろしくな、エクスカリバー」
声に応えるように、紅い夕日に反射して剣は鈍く光った。