第九話 毒とリンゴと遠征と 前編
5:00 side アビス
「……挨拶の前に、皆に伝えたいことがある」
急にパルダが切り出した。
「なんでゲス?」
「キャー、気になりますわー!」
「静かに!…ここから東にはまだ未開の土地がある。近々そこへギルドで遠征に行く予定だ。…今回は、普段入れない新人も候補に入っている♪」
パルダ…マジ?
「この頃頑張ってたからね〜♪」
「特にこの間のドロウ逮捕は見事だったぞ♪」
なるほど。あれか。
「じゃあ、皆、仕事にかかるよ!」
『おおー!!』
遠征か。ストーリー動きそうだな。
「展開読むなァー!」by abyss
作者はシカト。
「お前達は依頼を頼む」
いつも通りパルダが話す。
「じゃ、じゃーな………」
後ろ向きにかなりの速さで遠ざかる。
……いつも通り。
「アビス、パルダかなり冷や汗かいてたよ」
「スルーしよう」
昨日の事が影響したか。
依頼掲示板まで来た。学者組は調べもの。
「あ、あいつら……!」
ミオが誰か見つけた。ドガースとズバット。最初のダンジョンで一撃で倒れた悲しい奴等だ。
「お前ら、なんでここに!?」
「?…なんだ、お前らか。探険隊が掲示板の前にいておかしいか」
まさかの事態。こいつら探険隊だった。しかも、単品じゃどーしよーもないクズ。心を読むまでもなく、誰か頼りなのが推理出来る。…推理か。探偵やろうかな、暇なときに。
「俺の苦労増やすな!やらんでいい!」
「拒否する。…作者!?」
なんか今作者のクレーム聞こえた。…無視。
「ええ〜〜!?こんな奴等が探険隊!?」
ミオが驚く。
「ミオ、俺も驚いた。まさかこんな、弱くてクズでストーカーと強盗未遂しか出来ない探険始めたばかりのドシロウトにすら負ける救いようのないポケモンの風上にどころか風下にすら置けない奴等が探険隊だなんて。こいつらの頼りにしてる奴も苦労多そうだ」
「アビス、良く息継ぎなしで噛まずに言えたね…」
「グサッ……バタリ」
「な、何故アニキの事を!?」
上からミオ、ズバット、ドガース。どれから反応しようか…
「へん、アニキは強いんだよ!」
強がるドガース。止めろ、むなしくなるだけだぞ。
「……言ってるそばからむなしくなってきた」
「そういえば何でお前らがいるんだ?」
「探険隊が掲示板の前にいておかしいか」
そっくりそのまま返す。
「へ?…え〜〜!?」
「弱虫のお前も、か!?」
「おい、こっちこい!」
ミオを端に引っ張って行く。そんなことしても聞こえるのに。
「お前臆病だろ?」
「心の底から止めとけって!」
「い、今だって遠征に行けるように頑張っているんだから!」
…また禁句言っちゃったか。
「良いこと聞いたぜ」
………アニキとやらが来たら最悪。
その時、微かに異臭が。
「お、アニキの参上だ」
ゆっくりと階段を降りてくる。スカタンクだ。危惧してた展開。
「どけ」
思いきり異臭のするガスを吹き付けてきた。
「<ダイヤシールド>」
俺達の周りにシールドを張る。まともに喰らう筋合いはない。
周りに煙が。他の被害に遭っている方々は原因に気づかない。
「キャー!オナラ臭いですわー!」
「お、おいらじゃないでゲスよ!?」
キマワリのサン・フローラが悲鳴をあげる。ディーザ、お前じゃないことは分かっているからな。
「ケケケッ!あいつらも終わりだ!」
「ヘヘッ、やりましたねアニキ」
煙の中、思い込みで話す奴等。
お、煙が晴れてきた。
「「「!?」」」
そーとー自信過剰だな。
「倒れたとでも思ったか」
ミオを背中でかばいながら話す。
「アニキ、こんな奴らより耳よりな情報が……」
ズバットが囁く。どーせ遠征のことだ。邪魔してくる、と言うより邪魔しかしないだろう。
「……そうか。おい、そこのお前ら!今日はこのくらいで勘弁してやる」
…いつ俺らが負けた?
捨て台詞を吐き、さっさと退散する毒3人。
えーと、疲れたなぁ。
依頼を全て選び、十字路へ。
「あれ?パリム」
チリーンのパリムが十字路にいる。食事係が何故?
「ちょうど良かった!お二人にお知らせがあって…」
((知らせ?))
「私、この度編成所を開きました。これからは他のポケモンも仲間に出来ます。ただ、仲間となったポケモンはお二人を合わせて四人までしかダンジョンに入れません」
「新しい仲間?(キラキラ)」
「ありがとう(ミオの目がキラキラしてる…)」
「あと、<パッチールのカフェ>がオープンしたみたいです。よかったら見てきては?」
「ありがとう、パリム」
カフェか。
「行こう、アビス」
カフェから出てきた。
「凄かったね〜」
「ああ」
マスターと名乗るパッチールに案内され、店を見てまわった。
交換所とか、くじ引きとか。
でも、
「ドリンク、あと何回も行きそうだな」
「うん!」
リンゴとオレンを二人で試したが、どちらもとても美味しかった。他とはケタ違いだ。
他を知らないけど。
「じゃ、ダンジョン行くか」
「うん!」
side ウォルタ
ボクサイドは初めてかな〜。
今日も、この地域の伝説を調べたよ〜。各地に散らばる時の歯車伝説はボクの世界にもあったけど、なんか翻訳不可能な文が一文あったな〜……シルク達の使っていた文字とも違うし、なんなんだろう?
ソフィアの方は、何か予言?みたいなものを見つけて解読してる。ボクが見つけた一文と似ているんだけど〜……
そのうち分かるかな〜。
22:00 side アビス
「アビス、寝てる?」
起きてます。
「遠征、楽しみだな…」
遠足みたいなニュアンス。
「明日も頑張ろうね」
「ああ」
「!?…アビス、起きてたの?」
気付かなかったのか。
「お休み…」
「お休み」
……寝るか。……………?何か暑い……コート着てないのに。
目を開けて、コートを見ようとした。見ようとして、気づいた。
「ミオ……」
まただ。抱き付かれた。毎朝「どのタイミングで?」と思いつつ外していたが、俺が寝た直後とは。
外そうと思ったが、また抱き付かれるので諦め、寝た。
5:00 sideout
「皆、仕事にかかる前に……新しい仲間がいる」
『なかま?』
「ああ。……来てください♪」
(誰だろう…!?)
嫌な予感がして、<ダイヤシールド>を張るアビス。
「キャー、オナラ臭いですわー!」
「だから、あっしじゃないでゲス!」
来たのは、毒トリオ。<ダイヤシールド>を張っている≪希望の深淵≫以外が被害に遭う。
「この方々は、弟子ではなく遠征の助っ人だ」
「ケケッ、ドガースのフィングだ」
「ヘヘッ、ズバットのノスだ」
「そして俺様がチームドクローズのリーダー、スカタンクのモーフだ」
偉そうな態度に怒ったのか、ミオが怒鳴る。
「お、おまえら!」
珍しいな。その呼び方。
「ん?既に《希望の深淵》とは顔見知りか?」
「まあ、そのようなものです」
いい子ぶるモーフ。
カチ。
「カチ?」
「なんですの?」
「なんでゲス?」
臭さに悶えていた弟子たちは、周りを見渡す。
「<エレキショット>」
バシュッ。
アビスが《ドクローズ》を指差す。指先に電気が集まり、ノスを銃の如く貫く。
「…………」
エクスカリバーを抜き、電力全開にし、錬金術を解放する。怒りスイッチだったか。
無言で近づき、斬りまくる。しかも、剣を二本造りだし、三刀流で。ワ◯ピー◯のゾ○?
血が周りに飛び散り、壁が削れ、天井が少し崩れ、床が落ちる。
「み、皆、仕事にかかるか避難しろ!」
『お、おおー!』
パルダ神様。弟子に優しく、弟子に厳しく。
しばらくし、《希望の深淵》が依頼をこなす頃、《ドクローズ》は描写したくない有り様になっていた。ただ、崖の上にあったギルドが崖から落ちそうになるくらい壊れたことだけ記しておく。
23:00 sideout ギルド 食堂
ほとんどのポケモンが寝た頃、食堂の貯蔵庫に三人分の影が。
「アニキ、何するんだ?」
「あれっぽっちのメシじゃ足りねえから、ここから戴こうってことだ」
「なるほど〜」
「さっすがアニキ!」
全身に包帯を巻いた《ドクローズ》だ。一命はとりとめたらしい。
「じゃあ食うか」
ガツガツムシャムシャ……
「アニキ、これも飲みましょう!」
ノスが差し出したのは酒。しかも、ギルドありったけの日本酒や西洋酒全て。
「よっしゃ!」
「流石アニキ!」
「俺もいくぜ!」
一気飲み。他の二人も続く。
「今夜は酒盛りだァ!飲みまくれェ!」
酔い尽くしている。怒鳴っているが、囁き声なので聞かれていない。
3:00 side アビス ギルド 食堂
なんか食堂でありそうだ。見に行くか。
そーっと慎重にミオの腕を外し、部屋を出る。
「……れは…………だ…が………」
「ま………れら…や…………」
誰か話している。再現するとこんなとこだろう。
『…これはいったいだれが………』
『まさかかれらがやるはず…』
《ドクローズ》関係か。
「どうかしたのか」
「ああ、アビスか」
パルダが話してきた。
「これ…心当たりあるか?」
貯蔵庫を指す。
なんと、貯蔵庫が空っぽ。誰だ、こんなことしたの。
あれ?この壁にあるサイン………白いインクでドクロマーク。下には『ドクローズ参上』とある。
微かに酒の匂い。あいつら、そーとー酔ってるな。
「あの方々がこんなことするはずないし、一体誰が……」
パルダよ。誰かの擦り付け、という訳か?
「奴等呼んだらどうです」
十分後、ドクローズが来た。
三人とも顔真っ赤。足もふらついている。昨日の夕食に酒は出てない。
「『ドクローズ参上』と言うより『ドクローズ惨状』だな」
「心当たりありませんか?」
「す、すいません…昨晩喉が渇きまして、食堂の水らしきものを飲んだら…間違えていたみたいで、そこから記憶が……」
上手い言い訳だ。
「ま、まあ、仕方ないですよ……酒の失敗なんて誰でもあることです…」
パルダ、顔ひきつっているぞ。
「ほら、朝礼朝礼!」
誤魔化すか。
5:00 朝礼
「……ということで、何者かによって貯蔵庫が空になったため、食料調達に行ってきて貰いたい」
誰のせいかはぐらかしたな。
「希望の深淵は親方様の好物<セカイイチ>をとって来てくれ。<セカイイチ>は<リンゴの森>にあるはずだ」
「「分かった」」
十字路
「<セカイイチ>ってなんだろ?」
「ウィリフが食事の時頭の上で回してる大きいリンゴ」
「よくそんなの見てたよね」
だいたいの弟子は食事に専念しているが、自分は少食なので他の人を観察している。例えば、ディーザの食事はリンゴに傾いているとか、ドームはオレンの実を確認せず勢いで食べるとか。
ウィリフは<セカイイチ>で遊んだ後食べる。
雑学タイム終了。
<リンゴの森>へ行くか。
「クククッ、奴等の邪魔…もとい、手助けしてやるか」
「ヘヘッ」
「ケッ」
十字路
あれ?あのポケモン……
赤い竜と青い竜。少し前にも見たな…
「どうかした?」
「いや、あのポケモン、一度見たことあると思って」
「ふーん」
あの種族は伝説ポケモンの…
「ラティオスのアウラ・ウァールスだ。それと」
「ラティアスのティアラ・ウァールスです」
向こうから話してきた。アウラとティアラか。兄妹だな…用件は…行動を共にしたい、か。
「そうだ」
ああ、そっちも心読めるのか。
(別に仲間が増えて欲しくない訳ではないし…)
(ありがとう!!)
(感謝する)
「か、会話(?)についていけないんだけど…」
………え?会話して………心の読みあいしてたのか?
<リンゴの森>
名前通りリンゴだらけだ。出るのは虫タイプがメイン。ウァールス兄妹はギルド。
「一番奥か……」
何か嫌な予感。
(この間から嫌な予感が当たるのは気のせいか?)
気にしても仕方ない。階段見つけてどんどん奥へ。
「次が最奥部かな?」
「……(嫌な予感するけど…)ああ、行くか!」
次回 毒とリンゴと遠征と 後編