第七話 目覚めた術と新たな出会い
side アビス <トゲトゲ山>最上部 VSドロウ
「錬金術だと!?」
パニックるドロウ。当然の反応。「ふーん」とか言われても困る。
「バトル…スタート」
相手が右に動こうとする。その動きの先、どこで立ち止まるのか…5メートル先で立ち止まり、技を使おうと右手を下げる…そこまでが頭の中で分かる。
理論そっちのけで近づく。これは好機。
<サイコキネシス>で迫る岩を片手剣で切り捨て、<電気ショック>を浴びせる。
大きな割れた岩の間から白い閃光が走る。
相手が痺れたその一瞬で間合いを詰め、相手のバッグもろとも切り裂く。
青い果実の欠片と幾つかの種の破片が宙を舞う。
「ぐはっ!」
鮮血が視界を紅く染める。
「ぐ…しかし、甘いな。オレにはまだバッグいっぱいのオレンの実と復活のタネが残って…!?」
切り裂かれたバッグを見て驚く。さっきの一動作でバッグのアイテムを全て使用不能にしたからな。次の動作が「バッグから道具を出す」だったし。
「ああ、もったいない」
全国のダンジョン攻略者から文句が聞こえるが、無視。
「チェックメイト」
相手の腹を剣で切り裂く。ドロウは崩れ落ちた。紅い鮮血がしぶく。
スカーフの色が元の藍色に戻り、剣は消えた。否、吸収された。体の中に。
(そうか…)
side ミオ
「どうしたの、アビス…」
アビスの瞳が氷色になり、スカーフが灰色になった。しかも、剣とコートを取り出して。ど、どこから?
アビスは無慈悲に切り裂く。しかも、道具ごと。オレンの実がボロボロになって落ち、種の残骸がバラバラと散る。もったいないよ……
「チェックメイト」
切り裂く。紅い花びらが視界を彩る。
ドロウは倒れた。紐が切れたマリオネットの如く。何だったの?
side アビス
「アビス、どうやったの?」
ミオが気づいたらしい。吹っ飛ばされて平気だったのか。
「錬金術?だっけ。やりたい放題なの?」
そうだったらどこまでも反則無敵だな。
「否。体内の原子を使っているみたいだ。体力も使うし、ステータスがコロコロ変わる」
「ふーん、えっ、大丈夫なの?」
大丈夫ではない。
「体力残量40%」
でも、まあ当たり前か。科学では、[原子は他の原子に変われない]訳だし、体内や空気から採るしかない。都合良く空気中に剣一つ分の鉄が浮いてはいないし。
「じゃ、帰るか」
外に出るとリルがいた。
「ルリは寝てるぞ」
戦いの間空気だったのはそのせい。ほっとして気が緩んだらしい。すやすやと可愛らしく規則正しい寝息。おぶってきた。
ドロウ?ダンジョンの頂上から突き飛ばした。すぐそこに転がっている紅い物体がそうだろう。
「ありがとうございます!このご恩は忘れません!」
忘れても怒らねえけどな。
「そういえば、俺の名前何で知ってたんだ?」
「話してるのを聞きました」
立ち聞きスキル高いな。
なにはともあれ、解決!あれ、俺今何ランク倒した?
十字路に差し掛かる。あれ、見ない顔だ…ミズゴロウ、かな。見覚えあるような…
ギルドに帰ると、ジバコイルが待っていた。
「オタズネモノノケンキョニゴキョウリョクイタダキ、アリガトウゴザイマス」
「それはいいんだが、そのカタカナ止めてくれるか?作者が書きづらいってうるさくて」
「分かりました。今回の報酬です」
おお、物わかりが良くて助かる。
300000P貰った!!!一割でも30000P!!
「いいのか?」
「放火・強盗・スリ・誘拐および殺人の容疑でランクじゃ示せないくらいのやつだったんです」
「……」
「それはそうと。ドロウは何でこんな形に?」
「……」
逆鱗に触れたからとか言えない。
ともかく、パルダに270000P渡して寝ることにした。パルダ、驚いてたけど。
そう言えば、俺のコート。消さず、ずっと着てた。寒がりなものでして。
コートを掛け、ベッドを敷いて、寝転がった。ミオに聞いてみる。
「ミオ。ダンジョンは、ダンジョンになった理由とかあるのか?」
「うん。この頃、時が壊れていて、その影響でダンジョン化が進んだりドロウみたいな悪いポケモンが増えたりしてるみたいだよ」
時間のイメージが、流れる水から崩れやすい岩に変わった。壊れるのか…
「その原因が、時の歯車と言われているの。…森の奥や洞窟の中、湖とか、色々な所にあるらしいよ。全部で五つ」
「それを取ったら?」
「わからないけど、大変な事になるだろうから、どんな悪党も触らないの」
そうか。日記帳を作って纏めよう。
錬金術でペンとメモを作り出し、今までの事を纏める。
【一日の終わりに日記が入る事があります】
ガラガラドシャーン!!
「キャアッ!」
嵐が来ている。大荒れ。台風みたいだ。雷が落ちるたびに強くしがみつくミオ。第一話の予想が当たったか。
「そういえば、アビスと会う前の日も嵐だったよ。思い出せる?」
残念ながら無理。嵐か…関係ありそうだな。
「お、お休み、アビス」
「お休み、ミオ」
そっとミオを抱き、眠りに着いた。あれ、よく考えたら異性と同じ屋根の下!?か、考えないことにしよ…//
sideout <キザキの森>
「…これが、そうなのか。聞いてはいたが、初めてみるな」
森の奥。誰かが時の歯車に触れている。と思ったら、外し、<穴抜けのタマ>を取り出す。
鮮やかな無駄の感じられない動き。
「まずは…ひとつ目!」
素早く<穴抜けのタマ>を使い、離脱。
歯車が取られた森は、時間が止まるかのように固まっていく…
3:00 side アビス 海岸
技の練習をしてると、後ろ側から誰か来るのが分かった。
「あの、」
「ギルドならここをひたすら真っ直ぐ、トレジャータウンは十字路を左」
予測したので聞かれる前に答える。
「え?あ…ありがとう」
にしても、色違いのハクリューなんて珍しいな…ここに来るまでに十字路でラティオスとラティアスも見たし。なんかあったか?
「さあ皆、仕事に掛かるよ♪」
「お前ら、今日は此方を手伝ってくれ!」
早速ドームに呼ばれた。相変わらずの大声。
「なんだ?」
「今回は見張り穴をやってくれ。担当のタクが用事で出来ないんだ」
用事が気になるが…
「「見張り穴?」」
「ああ。ギルドの前に穴があるだろ?あれを下から見て、来客に乗ってもらう。その足形を言い当ててくれ」
「「ああ(うん)、わかった」」
ドームに指示され、穴に入る。真っ暗。一寸先は闇。
「ミオ、少し待ってくれ」
集中して、掌に火を作る。電気をいじって錬金術で調節。<火炎放射>出来そうだな。口じゃなく掌から。…何かカッコイイぞ、それ。
「すごい、熱くない?」
「何故か平気」
…なんでチート能力もってんだろ。便利だけど。
「あ、そろそろじゃない?」
「着いたよ〜」
天井には、格子型の影が。そこからしか明かりが入っていない。
「じゃあ、始めてくれ!」
えーと、まずは…チコリータか。なるほど…依頼届けに来て、その内容は友達の捜索。
「足形はチコリータ。友達の捜索依頼提出が目的」
「「「へ?」」」
チコリータもドームもミオも驚く。あー……読み過ぎた。
「少しまて。……………せ、正解だ…何なんだお前…」
そうこう言ってる間に、次の客だ。
「次はバルキー、ギルドの崩壊目的。お尋ねものCランク、腹が弱点」
「「なにぃ〜〜!?」」
「す、すごい」
ドカバキグシャッ!!
騒音が収まり、しばらくしてドームが息を切らして戻ってきた。
「つ、次は?」
「パルダ。ドームの失態の説教。親方様の部屋に行けば助かる」
「…本当か?」
「おい、ドーム!(怒)」
「や、やばい!」
えっと、心を読みつつ答えること3時間。今度は…さっきのハクリューか。
「哲学者の色違いハクリュー♀、20歳。目的は此処等一帯の調査」
「!?」
相手から反応。心読まれて驚かないのも凄いだろうが…
今度は、ミズゴロウか。何か訳ありだな。
「考古学者のミズゴロウ、♂14歳。此処等一帯の調査目的」
「よくわかったね〜」
さ、サラッと!?こいつは大物かも……
「おーい、戻ってこい!」
ドームに呼ばれて戻って来た。
「まだ12:00だが、タクが戻って来たから終わりだ」
「ありがとうございました」
ディグダのタクが入っていった。
「さて、お前たち。足形だが、細かい所までパーフェクトだ!家族構成や身の上話まで当てたときは驚いたぞ」
「「いや、驚きっぱなしだっただろ」」
Wツッコミ。そこにパルダが来た。
「今回の報酬だが、ほい♪」
500Pとカテキン、命の種に幸せの種をもらった!
「す、凄い!レアな<命の種>まで!」
「頑張ったご褒美だ♪それとこの間、かなり稼いでくれたし、今度から報酬二割になるよ♪」
「「パルダ神様!!」」
「おい、お前ら、呼び出しだ」
午後になって、誰かに呼ばれた。誰だ?無名探険隊に用事なんて…こないだ有名になったけど。
「こんにちは。私はソフィア・レイシア・フィルシリー。ご存じ、哲学者よ」
気が強そうだな。あ、このハクリュー…
驚き。見張り穴と海岸で会ったハクリューだ。ピンクの。てことは…
(二度も心を読まれて驚き、呼び出した。今から試す、か)
「アビス・ナレッジだ。試すまでもなく、心は読めるぞ…えっと、ソフィアでいいよな?」
「「!?」」
ミオとフィリアが驚く。ミオはばらしたこと、ソフィアは読まれた上、先回りされたことで驚く。
(えっと、じゃあ、円周率は?)
「3.14159265358…までかな、言えるのは。後は無限に続く」
条件反射で即座に答える。
「!?……決めた。やっぱりここに残って、もう少し調べる」
「あと、宿に困っているなら、ギルドに泊まりな。行動は俺たち《希望の深淵》と。合ってるか?」
「え、ええ…」
ソフィアか。手合わせしてみたいな…
side ソフィア
しかし、驚いた。この世界にきて、道を聞いた人に考えを読まれ、調べ物でギルドに来たら、また読まれた。
「あの、そこの貴方。ここのポケモンは心を読めるの?」
そこにいたペラップに聞いた。
「え?いや、本当に一握りの者だけだと思いますが」
…とんでもない人物がいるのかも。
「今日、そこの穴にいた人を呼び出してくれる?」
「はい、少しお待ちください」
誰なのかしら…
しばらくして、コートに藍色スカーフのピカチュウと桃色スカーフのイーブイが来た。
「こんにちは。私はソフィア・レイシア・フィルシリー。ご存じ、哲学者よ」
(確か、海岸と穴にいたのはピカチュウよね。心は本当に読めるのかしら。試して…)
「アビス・ナレッジだ。試すまでもなく、心は読めるぞ…えっと、ソフィアでいいよな?」
「「!?」」
驚いた。先読みされるなんて。イーブイの方も驚いてたけど、あまり話してないのかも。
(えっと、じゃあ、円周率は?)
「3.14159265358…までかな、言えるのは。後は無限に続く」
「!?」
これはいい研究対象かも。何か面白そうだし。
「……決めた。やっぱりここに残って、もう少し調べる」
「あと、宿に困っているなら、ギルドに泊まりな。行動は俺たち《希望の深淵》と。合ってるか?」
また、台詞奪われた…いろんな意味で戦いたくない…
side アビス
「君、見張り穴にいたよね〜」
気がついたらさっきのミズゴロウに話しかけられた。白いスカーフ?を着けている。
「ああ」
「早い話、僕も一緒に行動していいかな?」
な、なんと1日に二人と!?
「いいけど、まさかソフィアみたく『研究対象』扱いしないでくれよ」
「い、いつ私がそんなこと…」
「別に、面白そうだからね〜…僕はウォルタ、よろしく〜」
「ソフィア、心閉じてから言おうか。ウォルタ、よろしく」
side アビス 弟子の部屋
ベッドの予備があってよかった。
二人の分も用意して、寝る準備。の、前に……
「二人とも、何か特殊な何かあるだろ」
「「うん/ええ」」
「そっか。今度のダンジョンで教えてくれよ」
「「もちろん」」
よし、これでOK。
【○月●日 本日は見張り穴を担当。報酬二割に!!パルダマジ神。今後ウォルタ、フィリアと行動。但し、探険隊のメンバーではなく、もしこちらがさらに二人メンバーを入れても彼らは参加可能】
「「「「お休み」」」」
明日が楽しみだ………
ソフィア、ウォルタが(ミオから)抱きついて寝ているのを見て赤面したのは別の話。
次回 初探険