サイバネティック・パートナー - 第一章 『胎動』編
第八話 激突 アクアVSシルバーハイランク、デフェール
ライトと入れ替わる形で『フレイムジム』のフィールドに立つこととなったアクア。

観客席にいた時には感じることのなかったポケモン同士の真剣勝負の場独特の緊張感にアクアは圧倒されかけていた。

ジムのメンバー達全員がこのフィールドに、自分と対戦相手の一挙手一投足に注目しているのだと思うと緊張で体全体が固まってしまう。

極度の緊張の中、向かい側の登場ゲートから一匹のポケモンが姿を現した。

燃え盛る炎を背中に湛える鼬のようなポケモンは、ヒノアラシとバクフーンの中間態にあたる存在、マグマラシだった。

その瞳は対戦相手であるアクアに射抜くような視線を投げかけてくる。思わず地面に視線を逸らしてしまうアクアとは対照的に、堂々とした態度のままマグマラシはフィールドの中央に移動し、チャレンジャーと向かい合った。

「よう、チャレンジャー。俺はシルバー・ハイランクのデフェールだ。よろしくな」

「あ、えっと僕はアクア。ミナモ・アクアです・・よろしく」

デフェールと名乗ったマグマラシの首輪には銀製の紋章がぶら下がっている。だが、先ほどイグニスが身に着けていた紋章とは何かが違う。

そういえば、シルバー“ハイ”ランクって・・。

そんなアクアの視線に気が付いたのか、デフェールは微かに笑った。

「気にすることはねぇよ。ジムリーダーがお前の連れの奮闘ぶりを見て、俺を選出したってだけの話だ。一応、シルバーランクのリーダーをやっているが、まぁ気にすんな」

「そう言われても・・」

アクアはライトの健闘ぶりをこの時ばかりは恨めしく思った。彼の戦いぶりを見て、ジム側も本気を出してきたという事なのだが、皮肉にもアクアはバトルが得意ではなかった。

親友のピカチュウの付き合いとして、少し自分も参加してみるかな、ぐらいの気持ちでフィールドに立ってみれば、いきなりシルバーランクのリーダーが相手というハードルの高さ。

バトルが始まる前から腰が引けているアクアに対し、デフェールは口角を少し上げ、ぼそりと呟いた。

「――バトルの結果は変わらねぇんだからよ」

開始の合図と共に、先に動いたのはマグマラシのデフェール。

「先手必勝!火炎車!」

自身を炎に包み、相手に突撃する技。『火炎車』。その目にも止まらぬスピードにアクアは成すすべなく激突され、フィールドの後方まで吹き飛ばされてしまった。

「うう、痛い・・」

「ほらほらどうしたァ!まだバトルは始まったばかりだぜ!」

『火炎車』を解除して、不敵な笑みを浮かべデフェールは挑発してくる。どうやら、イグニス以上に好戦的な性格らしい。

対するアクアは既に涙目。痛みをこらえて立ち上がるのがやっとだった。

が、立ち上がった所に今度は『火炎放射』が襲い掛かる。

そのまま丸焼きにされてしまうアクア。目元の涙もすっかり蒸発してしまい声も出ない。

幸か不幸か全く良い所が無いままゲームセットにならなかったのは、彼が水タイプで炎タイプの技の影響が相性的に半減していた事が大きいだろう。

試合開始1分と立たず既に満身創痍のアクア。白熱していた観客席にも、一方的な試合展開に微妙な空気が流れ始めていた。

「はぁ、僕バトル得意じゃないんだけど・・仕方ない、抵抗ぐらいしておこう――『白い霧』」

既に自嘲気味な笑いを浮かべていたアクアがぼそりと呟くと、周囲を高濃度の霧が覆いだす。

最後の一発をかましてフィニッシュといこうとしていたデフェールは、いきなりの補助技に驚きを隠せない。

「目くらましか、セコい手使いやがって」

直球勝負を好むデフェールはアクアの変則的な手に思わず舌打ちをした。この『霧』に潜む罠をまだ彼は知らない。

                ****

「『白い霧』ねぇ。一時的な時間稼ぎで何をするつもりなんだろうね」

波紋ポケモンことリオルのソウルはフィールド全体を覆う濃霧に醒めた視線を投げかけていた。

“波導”使いの彼にとっては霧による目くらましなどあって無きがごとしであり、既に試合開始早々2発の大技を喰らったあのゼニガメに勝ち目があるとは思えず、アクアの出した『白い霧』の事も単なる時間稼ぎとしか思ってないようだ。

が、横で観戦しているライトの表情は険しい。親友が敗北しそうなこの状況に対してではなく、寧ろこのフィールドを包む『白い霧』に対して彼の危機感は向けられていた。

「アクアの奴、あれを使うつもりか・・」

その呟きに怪訝そうな表情を向けるソウル。

「あれって、何さ?単なる『白い霧』だろ?」

「フィールドを現在覆っている濃霧に強力な毒素が感知できますね」

全く瞬きをせずフィールドを凝視していたトゥエンティが静かに呟く。

横の2匹は驚いたようにトゥエンティの方に振り向いた。

ソウルは『白い霧』に含まれた毒の存在に、そしてライトは――親友の技の秘密をあっさりと指摘して見せたその事実に驚きを隠せない。

そう、アクアのバトルスタイルは俺のそれとは全く違う。恐らくここの炎ポケモン達の誰とも異なるだろう。

俺も個人的にはアクアの戦い方は苦手だが、まぁここのポケモン達があいつの戦術にどう反応するのか・・楽しみだ。

「見てれば分かるさ。俺の親友、ミナモ・アクアは一筋縄じゃいかねぇぜ」

腕を組み含み笑いを浮かべる。その妙な自信にソウルはただ怪訝そうな表情をするばかりだ。

確かに今までの流れで優勢を築いているのはシルバーランクのリーダー、マグマラシのデフェールだ。

その証拠に既に炎タイプの大技を2発アクアに入れている。このままダメージレースに持ち込めば、競り勝つのはデフェールだろう。

「・・随分と信頼が厚いんだね、彼」

「確信がお在りのようですね」

ソウルの横のトゥエンティまでも此方に視線を投げかけてくる。彼らのそんな疑問にライトは笑って返した。

「ああ、俺はあいつを信じてるからな」

         ****

一方、視界を覆う濃霧の中でデフェールは対戦相手の位置を見失っていた。

「クソ、どこにいきやがった・・」

こんな時、どこぞの居候の能力が自分にも使えればどんなに便利かとデフェールの脳内に苦々しい思いが湧き上がる。

どうせ観客席から観戦しているのだろう。“波導”の力をもってすれば、アクアとデフェールの居場所を突き止めることなど造作もない。

「まぁ無いものねだりしてもしかたないしねぇし。それにこの霧だ、俺の位置もあいつには分からないはず。条件は同じってわけだ」

嗅覚にも優れるマグマラシの力を使い、地面を嗅いでアクアの居場所を探ろうとするが、その時デフェールは地面が水浸しになっている事に気が付いた。

「・・匂いも消してやがるか」

霧で周囲の確認は出来ないものの、辺り一面の湿り気具合から見るに、アクアが故意に水を撒き自分の足取りを消してことは明白だった。

このまま地道に探っていても埒が明かない。

比較的短気で地味な作業を嫌うデフェールは、一気にこの状況を打開する方策を思いついた。

「よし、俺の炎で一気にこの霧を払ってやるか」

そしてそのまま深く考える事なく『火炎放射』を口から放った――次の瞬間

ズドン。

彼の目の前で大きな爆発が起きた。何が起こったのか頭の理解が及ばぬうちに、デフェールは零距離の爆発に巻き込まれ、1、2メートル吹き飛ばされた後、地面に叩きつけられてしまった。

「ぐはっ・・な、何が・・どうなって・・」

霧を排除する為に放った炎はその目的を果たすことなく、一瞬で膨張し大きな爆発を発生させデフェールを自滅させた。

「上手くいったね」

予想外のダメージに傷つき、状況の理解に苦しむデフェールの耳にどこからともなく声が聞こえてくる――どことなく幼さが残る高めの声、チャレンジャーアクアのものだ。

「!?お前・・」

アクアの声は明らかにこちらに向けて発せられていた。自信を持って、自分に向かって喋った。その事にデフェールは驚きを隠せない。

つまり、アクアは自分の位置を把握している。此方が相手の居場所を特定できないのに、相手は自分の位置情報を得る事が出来るという事だ。

「ふふ、爆発に驚いてるでしょ。君が炎を使って状況を打開しようするのは予測出来てたけど、少し早計だったね」

「早計、だって?」

何とか立ち上がり声のする方向に睨みを利かせる。

勿論、安易に攻撃したりはしない。先ほどの事を例にとっても分かる通りこのアクアというゼニガメはどんな罠を張り巡らせているか分からないのだ。

彼に関する情報が不足している今、無配慮な行動は敗北につながる。

「この『白い霧』には僕のもう一つの技『どくどく』が含まれている。有毒ガスを含む霧と言ってもいい。そして、『どくどく』の毒素を構成する成分の多くは非常に引火しやすいんだ。炎技を使えば周囲の気体が連鎖的に誘爆して自分が自滅することになるよ」

最も、なんで僕が君の位置を特定できるのかはまだ明かせないけどね。

アクアは現在、デフェールの背後から数メートル離れた場所に立っている。

自ら放った『どくどく』入りの『白い霧』が一面を覆い尽くしており、現在視界はゼロ。

アクアにとっても自分の手足を確認するだけで精一杯の状況なのだ。ましてやデフェールの立ち位置を確認するだけの視界的余裕など皆無だ。

だが、彼には視界など無くともデフェールの立ち位置を正確に特定できる理由がある。

それが濃霧で辺りを覆った後、フィールド全体に行き渡るように展開した地面を覆う――“水”の存在だ。

デフェールは匂いを消しより居場所を知られないようにする為の小細工だと考えていたようだが、それは違う。

アクアはその苗字にあるように『ミナモ一族』の出身だ。

水タイプの中でも特に水の流れや動き、その微細な変化を敏感に感じ取る事が出来る能力を一族の末裔としてアクアは有していた。

地面に張られた薄い水の幕が発する細かい振動を彼は肌を通して感じ、波紋の発信源たる相手の現在地や大まかな動きといった情報を取得することが出来る。

「さて、そろそろ毒が回りだす頃かな」

『どくどく』は本来有毒の液体を相手に浴びせる技。

しかし現在『どくどく』は有毒ガスとなってこのフィールド全体を霧と共に覆っている。

“毒”の効果が表れ、全身に効能が表れるまでには原液で使用した時よりも時間がかかるものの、気体になっている分“毒”から逃れる事は遥かに難しい。

「後はどうしようかな、下手に手を出してこっちの位置を悟られるのも嫌だし・・どうせ、このまま放っておけば僕が勝つんだ。それまでゆっくり高みの見物をさせてもらおうか」

どうやらアクアは『白い霧』の中で、気体となった『どくどく』の効果でデフェールが倒れるまで身を潜めるつもりらしい。

一方のデフェールも自分の体の異変に気が付いていた。先ほどの爆発によるダメージとは明らかに異なる体の不調。
吐き気と気怠さ、そしてピリピリとした痺れが徐々に体全体を蝕みつつある。明らかに先程アクアの言っていたこの霧の効能だ。間違いない。

「やべぇな。この霧を何とかしねぇと・・あの野郎の位置を確認することも、炎技を使う事も出来ねぇままだ」

デフェールは歯を食いしばり一歩を踏み出す。体を動かすたびに不快感が全身を駆け巡る。毒が体を犯し始めている何よりの証拠だ。このままだと『どくどく』の猛毒状態に成す術なく倒れてしまう、状況を打開するには今何らかの対策を講じなければいけない――そう直感したデフェールの脳内にある1つのプランが浮かぶ。

成功するかどうかは分からない。だが、あのチャレンジャーはどうやら追撃する気はないらしい。デフェールの位置を彼は把握しているはずだが、下手に手を出すよりも安全圏に留まる事を選んだのだろう・・デフェールやこのジムの他のポケモン達とはバトルに対する根本的な姿勢からして違うようだ。

(時間経過と共に俺が倒れるのを期待してやがるのか・・・)

だが不思議とその戦い方に対して不快感は湧かない。それよりも、この幾重にも張り巡らされた“罠”をどう突破し、アクアの余裕を打ち破れるか・・その為にこの閃きを、自分自身の考えをデフェールは信じることにした。

「見てろよ、その余裕綽々の自信を今打ち破ってやるからな」

そもそも自分は相手の居場所が分からないのに、相手は自分の位置情報を何らかの形で掴む事が出来るというこの情報アドバンテージの差を埋めなければ自分に勝機はない。

視界と匂いが潰されている今、あのゼニガメが自分の居場所を探ることが出来るとすれば、それは自分が動くことによる“振動”を感知し距離を測ることでしかありえない。

裏を返せば彼にとっても実際にデフェールの位置が“見えて”いる訳ではないという事だ。

ならばまだ勝機はある。

「危険な賭けだが、やるなら今しかねぇな・・いくぜ、『身代わり』!」

自分の体力を削り、自らのコピーを作る技『身代わり』。

本来は相手を誘導したり、奇襲を行う場合、或いは純粋に目くらましとしても使用する技だが、体力の4分の1という発動コストはこの毒に苛まれている状況下ではあまりにリスクが大きいと言わざるを得ない。

「ぐ・・やっぱキツいな」

『どくどく』の毒は時間経過と共に与えるダメージが増大する。速攻で勝負をつける為とはいえ、デフェールは体力の更なる減少に危機感を覚える。

しかし、ここで退くわけにはいかない。シルバーランクのリーダーとして、そして何より――ジムリーダーの息子としても。

「行くぜ」

『身代わり』と頷き合うと“2匹”はバシャバシャと水飛沫をあげながら、互いに走り出した。

1匹が2匹になった。つまり、水面を伝わる波紋の振動源が増加した事はフィールドの離れた場所で佇んでいたアクアにも伝わった。

「・・数が増えた?」

アクアは顔を上げ周囲を見渡す。無論濃霧で周囲は見えないが、バトルの流れが変わりつつあることを体が敏感に察知した結果の無意識の行動だった。

「『影分身』・・いや、『身代わり』を使ったのか。でもこの状況でそれは自殺行為だよ」

しかし何故か一抹の不安が拭えない。この霧がある限り、大丈夫だと自分に言い聞かせようとするが、疑念の囁き声がアクアの脳内を駆け巡る。

もし、彼が自分を見つけ出し既に炎技2発を喰らった自分に自爆覚悟で攻撃してくるとすれば・・勝利の女神がどちらに微笑むのか怪しくなってくるだろう。

「もう1つ策を練らないと、見つかった時に僕がやられる可能性がある。どうする、どうしたら安全に彼を倒せる、考えろ・・・そうだ!」

先程フィールド一面を水で覆う為に使った技『水の波動』を使い、両手の中に抱え込むようにして水球を作り出した。

「さらに、『どくどく』」

そしてサッカーボールサイズの水球の中に『どくどく』の“毒”を仕込んでいく。紫色の毒の原液が水の中に溶け込み全体を薄紫へと変化させる。

「どうせ炎技は使えない。僕の位置を特定して物理的に僕を倒すつもりなんだろうけど、この毒入り『水の波動』で反撃の芽も摘ませてもらうよ」

霧の流れを肌で感じ、流れを読む。これで少なくともどこから来るかぐらいは予測できる。

「っ!そこだ!」

霧の中から突如現れたデフェールの特攻に一瞬反応が遅れながらも、『水の波動』を『体当たり』を仕掛けてきたマグマラシにぶつける。

技が当たった次の瞬間、デフェールの姿が歪んだかと思うとその場に崩れ落ちてしまった。

が、それもアクアの想定内。少ない体力でバトルに決着をつけようと言うのだ。先に『身代わり』のコピーをぶつけるのが常套手段だろう。

素早く『水の波動』を再生産するアクア。

そこに再びデフェールの姿が。正面から突っ込んできたのだ。

「それが本体か・・でも、残念!炎技が使えないこの状況じゃ僕には勝てない!『水の波動』!」

「そりゃ、どうかなっ」

放たれた『水の波動』。しかし、デフェールは後ろ足で力強くスナップを利かせ、方向転換をし『水の波動』を避けた。これにはアクアも驚きを隠せない。

(そうか、さっき『身代わり』に襲わせたのは僕の技の発生スピードを見極める為・・)

視界がギリギリ利く場所から『身代わり』を操作しアクアを攻撃させ、彼の技の発生速度や威力を見極めた後、二度目の反撃に備えながら攻撃を仕掛ける。

・・何の準備もなく僕の領域に踏み込む事を避け、策を練り結果的に攻撃を回避するとは・・見た目よりよほど慎重じゃないか。

しかしアクアもここまでくれば負けるわけにはいかない。このまま行けば『水の波動』生成までに一撃は喰らう事になる。元より技のスピードや運動神経全般は明らかにデフェールに分があるのだ。

この距離まで詰め寄られては、全くのノーダメージで反撃するなど不可能。そんな都合のいい計算などアクアはしない。

だが彼には自信があった。

『体当たり』のような攻撃では今の自分を一撃で倒すことは出来ない。

また仮に水ポケモン対策として電気タイプの物理技『ワイルドボルト』を持っていたとしても、反動で彼も大きなダメージを受けるだろう。
そして、自分の隠し玉である技――物理攻撃の威力を半減させる効果を持つ防御壁を展開する『リフレクター』を相手の攻撃が通る瞬間に発動すれば、反動でデフェールを倒しつつ自分へのダメージを大幅に防ぐことが可能だ。
第二波の『水の波動』を避けたデフェールは再びスナップを利かせ今度こそこちらに突撃してくる。彼はもう目前だ。

「無駄な事だよ!『リフレクター』!」

物理攻撃の威力を減殺する防壁を展開したのを見てデフェールは――笑った。

「やっぱ防御技をもってやがったか。だがこれならどうだ、『火炎放射』!」

「なっ・・!?」

デフェールの口内に炎が満ちる。アクアの瞳が驚きに見開かれた。

「しょ、正気なの!?そんなことをしたら可燃性ガスに引火して――」

「“爆発する”。そうさチャレンジャー、お前と一緒にな」

アクアはその時デフェールの本当の狙いに気が付いた。それは『身代わり』からの奇襲でも、物理攻撃で自分を倒すことでもなかった。アクアに接近し、炎技を使い、周囲のガスを誘爆させ自分諸共アクアをも爆発に巻き込もうという捨て身の作戦だったのだ。

「しまっ――」

吐かれる炎。燃え盛る業火は『白い霧』に込められた有毒ガスと反応し爆発的な燃焼を引き起こす。

連鎖する誘爆による爆発がアクアとデフェールを吹き飛ばした。

鼓膜を引き裂くような爆発音と熱風と共に両者が地面に叩きつけられる。

声も出ない両名に会場中の視線が投げかけられる。シン、と周囲の空気が張りつめる中霧の晴れたフィールドの中でポケモンが一匹ふらふらと立ち上がった。

拳を握りしめ、腕を力強く天高く上げ叫ぶ。



「勝ったぜ!皆!」


勝者が高らかに宣言した次の瞬間会場中に賞賛と拍手の轟音が鳴り響いたのだった――








アブソル ( 2013/10/20(日) 15:27 )