第一章 『胎動』編
第六話 激突!ライトVSイグニス(後編)
“とっておきの技”・・・?

自信満々の切り札宣言にライトは眉をひそめた。

確かにバトルの戦況は自分にとって芳しいものではないが、それはイグニスにとっても同じはずだ。

雷撃弾の一発目は確実にイグニスを貫いた上に、雷撃散弾の直撃も彼は受けているのだ。

追加効果の「麻痺」が彼の行動にある程度の拘束力を持っている事も見逃せない。

要するに互いの実力は五分五分だと言う事だ。

その中で彼は溢れんばかりの自信を持っている。

それは戦況の流れを自分に引き寄せる事が出来る“切り札”をイグニスが隠し持っている事に他ならない、。

・・一体何だ、どんな力を隠している・・?

ライトは自分の実力にそれ相応の自信があると同時に、それがまだまだ未熟である事も理解している。

ならば自分と拮抗しているイグニスの力も、強さと未熟さの両面を備えた不安定なものであるはずだ。

事実彼は自分が作り上げた砂煙を逆手に取られてライトに狙撃される事を許してしまっている。イグニスに油断があった証拠だ。

にも関わらず、彼は『フレイムジム』最年少のシルバーランク・メンバーに配属されている。

つまりイグニスにはジムリーダーに認められた“何か”を――似た実力の自分にはない力を持っていると言う事になる。

そして五分五分の状況でイグニスを“シルバーランクの”イグニス足らしめている“力”を使われる事は、裏を返せばライトが一転して不利になる可能性がある事に他ならない。

ライトにも分かっている。しかし彼はこのバトルを楽しんでいる。

勝敗に関わらず今この場で対峙する相手と全力で戦う。それがライトのポリシーだ。

その相手が本気を出すと言っているのだ――高揚感を覚えない訳がない。

・・・いいぜ、見せてみろよ。

お前の“とっておき”ってヤツを!


「燃え盛れ!魂炎より生まれし我が分身!サラマンドラ!」

その瞬間イグニスの全身から煌めく炎が噴き出す。

先程の“技”の炎――『火炎放射』や『炎のパンチ』とは違う。

上手く表現できないが、より活力に溢れたと言えばいいのだろうか・・まるで彼の生命自身を見る様な特別な“炎”だと言う事はライトも本能的に察する。

噴出した業火は集合し、形を成し始める。

イグニスが発した炎はまるで意志を持っているかのように、ある動物の姿へと変貌を遂げた。

驚愕で声が出ないライトに対し、イグニスはニッと不敵な笑みを浮かべる。

「これがオレの切り札であり魂の分身体・・“サラマンドラ”だ」

ライトの目の前に現れたのは巨大なトカゲだった。

伝説上の動物“Salamander”――四精霊の中で“炎”を司る火の精霊として描かれる。

象徴としてのサラマンドラが意味するのは『苦難を乗り越える情熱』、『悪を消し去る炎』であり、正にイグニスの内面そのものと言えよう。

炎で出来たそれは創造主であるイグニスの何倍もの巨体を誇り、彼を護るようにライトの前に立ちはだかっている。

「魂の・・分身体・・?」

「ま、その内分かるさ。お前が一撃で倒されなければな――行け!サラマンドラ!」

業火のトカゲがライトに突進してくる。

横に飛び回避するが、燃え盛る炎に少し右腕が触れてしまう。

「っ!?」

衝撃で、意識が飛びかける。

勿論炎に触れてしまった事も要因の一つだろうが、それだけじゃない。

『熱さ』以外の何かがあの“炎”にはある――ライトはそう直感で感じ取っていた。

「何だよこの炎・・普通じゃねぇ・・」

「お、『サラマンドラ』の攻撃を間一髪で避けるたぁやるな」

イグニスはパチ、パチと軽い拍手を送る。本当に関心したのか、それとも皮肉か。

だがそんな事は今のライトにはどうでもよかった。少なくともこの妙な“炎”に比べれば些細な事なのだから。

・・あの炎に触れた時、確かに衝撃を感じた。

ライトは右腕の先ほど接触した部分に目をやる。

少し焼け焦げてはいるが、特に以上は感じられない。

骨にも肉にも深刻なダメージがある訳でもなさそうだ。

じゃああの衝撃は一体何なんだよ・・・!?

あの時確かに自分の意識が飛びかけた。少し接触しただけだと言うのに。

それ程の衝撃を受けながら、何故肉体にダメージが無いのか・・。

・・分かんねぇ。

少し顔を上げるとイグニスが半笑いで口元をピクつかせている。

どうやら先ほどから種明かしをしたくてうずうずしている目の前のヒトカゲに問うてみるしかないようだ。

「おい、種明かししてぇんなら手短に頼むぜ」

ぶっきらぼうなライトの口調にイグニスは指を横に振る。

どうにも一々の挙動が芝居がかっているのは、恐らくカッコを付けているつもりなのだろう。

「ふっ。さっきお前が『サラマンドラ』に触れた時、衝撃を喰らっただろ。でもお前は気づいてるはずだ。その衝撃は肉体に与えられたものじゃねぇって事をな」

肉体に与えられた衝撃じゃない――

・・俺はあまり自信を持っていない自分の頭をフル回転させる。

さっきイグニスは何て言っていた?

“魂炎”

“魂の分身体”

そう自分の技を形容していた。

加えて自分が感じた違和感――彼の全身から溢れ出した炎を見た時、自分の本能は見抜いていた。

『あれは特別な炎』だと。

まさか・・。

ライトは一つの答えに思い至った。漠然とした想像だが、辻褄は合っている。

黙りこくっているライトにイグニスは満足げに頷く。

「ま、分からねぇよな。OK。教えてやるぜ。『サラマンドラ』の秘密を」

どうにも秘密を明かして見せるタイミングを見計らっていたらしく、『フレイムジム』到着直後の出会いの時といい、イグニスは最高のタイミングと場の空気の下自慢をする事に命を懸けているようだ。

「これは普通の炎タイプがつかう技じゃねぇ。『サラマンドラ』の燃料、それは――」

「“自分の魂”」

イグニスは目を丸くした。

さぁこれから自分の持っている最も大きな、最も誇るべき“秘密”を披露しようとした時に、横から『答え』が滑り込んだのだから。

ライトは構わずに続ける。

「お前のその技、自分の“魂”を燃焼させて作り出してるんじゃねぇか?お前が言っていた『魂の分身体』って意味、ようやく分かってきたぜ。お前、その技に自分の魂を・・いや、精神力と言った方がいいのか・・兎も角、魂なり精神なりを『サラマンドラ』に移してるんだ。お前の一部を燃料に、その技は燃え続けている――違うか?」

図星だった。

彼の切り札『サラマンドラ』は彼自身の魂を燃料に発動させる技だ。

勿論寿命が減ったりするリスクは無い。

ただ、これを使うと後で疲れ果てると言うだけの話だ。

『サラマンドラ』は彼の魂の一部を継いでいる。

つまり、攻撃力を持った臨時の体を一つ作るようなもので、それはイグニスの意志通りに動くし、イグニスの精神力が尽きない限り燃え尽きることは無い。

これを踏まえて彼は『魂の分身体』と呼称していた訳だ。

技のネタ披露と言う名の自慢を打ち砕かれた彼はしばし口をぱくぱくと動かしていた。酸素を求める魚のようだ。

心なしか『サラマンドラ』の体が萎んだのをライトは見逃さない。

・・やっぱりあのやっかいな炎はあいつのモチベーションと連動してるな。

さらに追い打ちをかけるべく、ライトは顔に邪な笑みを浮かべ続ける。

「で、俺が『サラマンドラ』に触れた時に感じた衝撃。あれはお前の魂に直接触れちまったからだろ?言わば俺の体にお前の精神が一瞬雪崩れ込んできたようなもんだ、そりゃ心もビックリするだろうよ」

またまたライトから放たれる正答。

『サラマンドラ』は一部とはいえイグニスの“むき出し”の魂そのものなのだ。

ライトに限らず、この技に触れた者は発動者の魂そのものが体に流れ込んでくる。

それは心を汚染したり、或いは精神に害悪を及ぼす訳ではないが、異物が瞬間的に侵入する事には変わりなく、心は大きな揺れとそこから来る拒絶反応を示す――それがあの衝撃なのだ。

イグニスが心待ちにしていた披露タイムは完全に潰えた。

このピカチュウは、寄りにもよって自分が披露したくて堪らない事実をべらべらと喋ったのだ――自分より先に。

・・許さねぇ・・・。

ワナワナと全身が震える。

あまりと言えばあまりの暴虐に怒りが底から湧き上がってくる――少なくともイグニスにとって“暴虐”な行為なのだが、それは関係ない。彼にとっては。


オレより先に・・・

「オレが・・オレが・・・」

「ん?」

ギッと此方を睨むイグニス。

ライトは直感した。

『俺はとんでもない失敗をしたのだ』と。

「オレが言いたかったのにィィィーーーー!!!」

その怒号にビクッとライトは肩を震わす。

彼のモチベーションを下げようとは思っていたが、まさかこの程度の事で激怒されるとは完全に予想外だった。

・・つーか、ありえねぇよな。常識的に考えてさ・・。

『サラマンドラ』は先ほど何倍も巨大化し、炎は劫火へと変貌を遂げた。

既にバトルフィールドの半分近く占領するに至った炎の化け物を前に、ライトは立ち竦む。

な・・なんつーデカさだ・・。

轟音を立てて燃え盛る炎の熱に思わずライトは目を瞬かせる。

離れた場所にライトが居るにも関わらず、熱気が体を直撃しているのだ。

熱量がハンパねぇ・・さっきの精神を直接揺さ振る衝撃といい、飲み込まれたらアウトだな・・・。

「テメェさっきから気に喰わねェんだよ!オレの話は無視するわ、挙句の果てにオレが披露したかった秘密をべらべらと喋りやがって・・!」

逆切れ気味のイグニスの言葉に流石のライトも苛立ちを隠せず、つい反論してしまう。

「何言ってんだ!お前の長い自慢話を聞く義理は俺にはねェよ!第一秘密を喋りたいんなら、俺にが解き明かす前にやればよかったんだ!」

「空気が整うのを待ってたんだよッ!ここぞと言う時に披露するから盛り上がるんだろうが!!それをテメェ、台無しにしやがって!」

「そんなの俺の知った事か!」

ハァハァとフィールド上に二匹の荒い息遣いが響く。

イグニスが切り札を出し、それをライトが避ける時に接触しただけの事なのだが、いつの間にか彼らのポケモンバトルはただの言い争いの呈を成し始めていた。

一息つくと、ライトは激しい言葉使いから一転、落ち着いたトーンで喋り始める。

「・・お前の技が強力なのは分かった。なら、俺をその自慢の技で倒してみな。シルバーランクのイグニスさんよ」

どうやら彼も鬱憤をぶちまけて少し落ち着いたのか、瞳に冷静さが戻りつつあるようだ。
しかし『サラマンドラ』の炎は煌々と輝きを絶やさず燃え続けている。

先ほどよりも上質の炎だ。

恐らくは怒りが闘争心に切り替わったのだろう――しかし、この事実はライトにとってはあまり関係が無い。

“怒り”に奮起されていようがいまいが、あの炎に飲み込まれたらゲームオーバーである事には変わりがない。



「・・・・ああ、端からそのつもりだ。チャレンジャー、ライト」

刹那。

『サラマンドラ』がその巨体に似合わぬスピードでライトに突進を仕掛けてくる。

「くそッ」

横に咄嗟に避ける。

「まだまだァ!」

イグニスの号令と共に『サラマンドラ』が尾を振りかざす。

二段目の攻撃に対処しきれずライトは『サラマンドラ』の尾の直撃を受けてしまった。

「がッ・・!」

腹部に炎と衝撃のダブルパンチが直撃する。

剥きだしの“魂”がライトの精神にショックを与えると同時に、炎がその身を焼き焦がす。

思考がイグニスの魂の一部にかき乱され、立って居る事さえ困難だ。

何とか有りっ丈の精神力を振り絞り立ち上がるも、二発喰らっただけで――しかもライトはまだ直撃を受けていないと言うのに――この威力。

「クソッ・・」

巨体の怪物は主であるイグニスを護るかのように自分の前に立ちはだかっている。

“魂”を燃料にした炎はイグニスの闘志が高ければ高いほど威力も持続時間も向上する。

つまり、長期戦は不利だ――なら!

「電撃戦に切り替えて一気にケリを付けてやる!」



ライトは構える掌にエネルギーを溜め――


「雷撃弾(サンダーストローク・バレット)!」

撃ち出した。


雷の弾丸は『サラマンドラ』の体を貫通しイグニスに直撃――するはずだった、ライトの狙い通りならば。

しかし弾丸は炎の壁を貫通できず、途中で消滅してしまう。


「マジかよ・・」

「残念だったな。『サラマンドラ』の炎はそう簡単には突破できねぇぜ?こいつは最強の“矛”であると同時に最強の“盾”でもあるんだからな」



――このままじゃ俺の“弾丸”はアイツに届かねぇ。

燃え盛る業火の燃料はアイツの魂そのものだ。

今のままじゃ『雷撃弾』はあの炎に壁に阻まれちまう。

どうする・・?

このまま逃げ続けても、いずれあの技に飲まれちまうのがオチだ。

遠距離から攻撃を撃ち込みてぇ所だが、イグニスも俺の狙い位分かっているはずだ。

だからこそ『サラマンドラ』を盾にしているんだ・・俺の狙撃を防ぐために。

四面楚歌。今の状況を言い表すにこれ程適切な言葉は無いだろう。

『サラマンドラ』の登場によってイグニスに容易に接近出来なくなったライトは遠距離からの攻撃を――元々ライトは遠距離のバトルタイプであるが、それは別の話だ――行わざるを得ない状況に追い込まれている。

だが、同時に『サラマンドラ』の防壁はその手の技を全て阻んでしまう。

これは・・“詰んだ”か?

・・・いや、まだ諦めるには早い。

イグニスだって俺の弾丸の直撃を二度受けている。

アイツだってこれ以上の攻撃を喰らいたくは無いだろう。

ああやって『サラマンドラ』の後ろに隠れている事自体が、その証拠だ。

「――まだチャンスはある」

俺はもう一度腕を伸ばし、構える。

「雷撃散弾(サンダーストローク・ショットシェル)!」

「いくらやっても無駄だ!」

四方八方に飛び散る電撃は全て『サラマンドラ』に阻まれ、イグニスには届かない。

「こっちの番だ!」

『サラマンドラ』が動き始めた。

大口を開けてこちらに突進してくる姿は圧巻だが、問題はこの攻撃では無い。

・・攻撃の瞬間、“炎の壁”自体が動く。

ならばそこには必ず“隙”が生まれるはずだ。

しかし、そんなライトの計算は脆くも崩れ去ってしまった。

「な・・!」

余りに速い攻撃・・先ほどよりもスピードが上がっている。

ライトは横にジャンプし何とか攻撃をやり過す。

攻撃を終えた『サラマンドラ』は素早く元の位置まで戻ってしまった。

・・これじゃ攻撃の隙をついて反撃するのは無理だな・・・。

成程、攻撃自体は直線的で回避できない事は無い。

しかしその単調さを補って余りある攻撃力と機動性。

隙を縫う攻撃など許さないと言わんばかりのスピード、飲み込まれれば即ゲームオーバーであることを鑑みれば、回避するので“精一杯”なのだ。

「どうした?攻撃の手が止んでるぜ?」

・・・どうする・・・・?

攻撃の際、必ず隙が出来ると思っていた。

だから届かない攻撃をして、挑発したのに。

――その隙があっても、隙を“突かせない”程のスピードを出せるとは完全に想定外だ。
このままじゃ負けちまう・・・。

視線を泳がせるライト。

その時、何かに気が付く。

そうだ、“あれ”がある・・・。

“あれ”を使えば、勝てるかもしれない・・!

チャンスは一度。狙いがバレたらそれで終わりだ。

「ふん、どうやら手詰まりのようだな。ま、これで終わりにしてやるよ」

どうやらイグニスもこの攻撃でフィニッシュするつもりのようだ。

彼とて二度の攻撃を受けた上に精神力を大幅に消耗する『サラマンドラ』を使用しているのだ――これ以上長期戦に持ち込むのは彼の望む所ではないのだろう。

丁度いい。俺もそのつもりだ。

「これで終わりだ!!行け、『サラマンドラ』!!」

猛スピードの突進。

俺は横には避けず、“後ろ”に飛び移ったのだった――





                  ****


――勝った。

イグニスは勝利を確信していた。

『サラマンドラ』は完全にチャレンジャー・ライトを飲み込んだのだ。

あの炎と魂の衝撃の中で意識を保つ事などできはしない。

「予想以上に手こずったが、オレの勝ちだな・・チャレンジャー」

「“誰を仕留めたって?”」

その時不意に後ろから声がした。

凍りつくイグニス。

聞き覚えのある台詞を言われ、体が動かない。

それもそのはずだ。何故なら“自分が”放った台詞そのものなのだから。

そんな・・あいつがここに居るはずがない・・。

「ふざけんなよ・・お前はオレが仕留めたはずだろうが!!」

「残念ながら現実は違うようだな」

バチバチッ

自分の背後で電気が発する独特の低音が聞こえる。

しかし、イグニスは振り返らない。

仕留めたはずの対戦相手――ライトに背を向けたままゆっくりとした口調で問いかけた。
「一体何をした、チャレンジャーさんよ。『サラマンドラ』は確実にお前を飲み込んだんだ・・手ごたえは確実にあったんだよ・・・」

「ま、手ごたえはあったろうな。何せ俺も『身代わり』を使わせてもらったし」

ライトの笑い顔が脳裏に浮かぶ。

直接見ずとも今このチャレンジャーがどんな顔をしているのか――恐らくは所謂したり顔だろうが――、イグニスには分かるのだ。

「『身代わり』か、だが・・お前が俺の背後を取れた理由にはなってねぇ。オレの前には『サラマンドラ』の炎の障壁があった。フィールドを横断する事自体不可能だったはずだけどな・・・」

「お前と同じ作戦を取らせてもらっただけさ、イグニス」

少しだけイグニスの目が見ひらかれる。

オレと同じ作戦・・そうか、オレがライトに奇襲する時に掘った穴を逆に利用したのか・・・。

「俺は『穴を掘る』を使えないけどな、イグニス・・・お前が使った『穴を掘る』の穴で、お前が俺に奇襲出来たと言う事は、俺もその穴を使えばお前の所に行けるって事なんだよ。『サラマンドラ』の障壁が及ばない地中からなら、お前を射程内に入れれるって訳だ」

「・・完敗だよ、チャレンジャー・・いや、ライト。お前の勝ちだ」

バチィ

次の瞬間、雷の弾丸がイグニスを貫く。

地面に倒れ込むイグニスの体。

「良いバトルありがとうよ、イグニス」

最後にライトが放った感謝の言葉を聞き、彼の意識は飛んだ。

口元に微かな笑みを残して

同時に『サラマンドラ』の炎が鎮火していく。

彼が意識を失った事で、イグニスの魂の一部もまた彼の中に帰って行ったのだ。


「シルバーランクメンバー、イグニス戦闘不能!――よって勝者、チャレンジャー、ライト!!」

勝利のコールをバックに、ライトはただバトルの余韻を静かに楽しむのだった――






■筆者メッセージ
次回はアクアのバトルがメインとなります。
アブソル ( 2012/11/01(木) 21:24 )