第三十四話 憑神家の兄妹
「着いたぞ」
ユウタの声と共にジュンは瞼を開けた。半開きの車窓から外の新鮮な空気が鼻孔を擽る。
車から出て周りを見渡すと、そこは今までジュンが見たことが無いほど緑に溢れていた。
木々がさらさらと葉を揺らし、そよ風と共に鳥ポケモン達の囀りが聞こえてくる。
目の前に広がる景観の美しさは見たものにしか分からないだろう。言葉では表現できない何か特別な力をジュンも確かに感じていた。
「俺の故郷にようこそ」
大げさに両手を広げて見せるユウタの顔が綻んでいる。よほど帰郷が嬉しいのだろう。
いつも表情が硬いユウタには珍しい表情だ。
『ここが大尉の生まれ故郷か……』
横ではファオが下あごに手を当てながら周囲を見渡している。
ポケモン語になっているのは、やはり人の言葉よりもその方が自然と出てくるようだ。
「いくぞ」
平静を装ってはいるが、どこからどう見ても浮き足立っているユウタに続いてジュン達も道なりに進んでいく。
森に囲まれた道路をひたすら進むこと5分、ようやく視界が開けてきた。
「歓迎するぞ、諸君。ここが俺の生まれ故郷、カミカワ村だ」
その後ジュン達は村の中央にあるという実家までの道のりを、ユウタの解説を聞きながら進むことになった。
曰く「この村の名の由来は、古くから村民を支えてきた“神川”と呼ばれる川からきており、実際に治癒作用があると言い伝えられており、数々の奇跡をもたらす力がある」らしい。
故に神川。なるほど、納得できる。
(というかユウタの苗字と一緒なんだね)
そんなことを考えながら、ジュンは横目でファオを見やる。微笑を浮かべてはいるものの、どこか上の空な様子だ。
ちらっと目があった。晴天のような蒼の瞳にジュンは思わず目を逸らした。何故だかは分からないが、どうにもこのバシャーモは苦手だ。何を考えているのかよく分からない。
掴みどころが無い性格と言うべきか。優しさと威圧感がない交ぜになった感覚を苦手に思うのは、獲物の力量を瞬時に見分ける必要があるポケモンハンターとしての性がそうさせるのだろうか。
そのまま村の中央まで直進するジュン達。途中、多くのポケモン達が興味深げにこちらを見つめていた。おそらく、人の出入りの少ない村来た余所者が珍しいのだろう。
そうこうしている内に、ジュン達は村の中央へと到着した。
「これが、ユウタの実家…?」
そこにあったのは“実家”というにはあまりに威厳ある建築物――いや、屋敷と言った方が正確か。
門の前には堂々たる家紋が刻まれている。二重円に三角形を合わせた幾何学模様。
何か特別な意味が込められているのだろうか、金彫りの美しさが日光を受けてさらに増している。
「さぁ入ってくれ」
ユウタに招かれるまま屋敷へと入る。その時、ファオが少しだけ目を細めていたのをジュンは気が付かなかった。
横開きの扉を開け、中へと進めば、そこに広がっていたのは金箔を散りばめた豪華絢爛な屏風。
そこには伝説のポケモンの中でも、最も高貴な神格を持つとされる存在――アルセウスが描かれていた。
それも一枚だけではない、廊下にある全ての屏風に、だ。
流石のジュンもこれには驚き目を丸くする。どこを見てもアルセウス、アルセウス、アルセウス……そしてその背後には必ず家紋が彫られている。
「驚いたか?」
ユウタは若干得意げにこちらを向く。ジュンは素直に首を縦に振った。
「そりゃそうだろうな。ここは“創造神の通り道”と呼ばれる我家最大の見どころの一つだ。そう、憑神家のな」
憑神家……?
「ユウタ、つまり、君の本当の名前は…?」
「――俺の本名は憑神雄太。ここカワカミ村に代々栄えてきた『憑神家』の長男だ」
憑神家。この隠れたる名家を知る者はあまりいない。
代々創生神アルセウスを祭る独特の風習と、男系当主を尊ぶ古風な家柄であり、またあまり外界との接触を行わないというある種の閉鎖性と厳格な秘密主義が理由で村民からは、“神憑きの家”などと不気味がられている。
そんな村社会の閉鎖性を凝縮したような家に、ユウタのような合理主義的な思考を持った長男が生まれたのはある意味皮肉であった。
家の仕来りや風習――例えば外界との接触を避ける、長男はある年齢に達すると背中に代々受け継がれてきた彫り物を入れなければならない、女子はなるべく村の外に出てはならない――などを一笑にふしてきたのも、ユウタである。
しかしこの家と故郷には人一倍愛情を持っているのもまたユウタであった。
村から出て生きているからこそ知りえる故郷の良さを彼はよく理解していた――だからこそジュン達をここに連れてきたのだ。信頼を得るという計算に、純粋な郷土愛を混ぜ込んで。
「ほぇ〜、こりゃすげぇな」
ファオは数々の屏風を食い入るように見つめている。
そっと手で触れようとするが、溢れ出る「汚したら殺す」を全身に受け、途中で手を引いた。
「アルセウスへの信仰。創生神を祭る宗教は世界各国にあるけど、この進行深さといい、家の名といい――ここまで来たかいがあった」
ボソッと呟くファオ。その言葉を受け、ユウタは顔をほころばせた。
「だろ?だが、ここは来客用の“憑神の間”への通り道に過ぎない。もっとすごいものを見せてやるよ」
「おお、それは楽しみですッ!」
自慢げなユウタとにこやかなファオ。
そんな二人のやり取りを後ろで見ていたジュンは若干の手持無沙汰を感じながら、ペンダントを弄っていた。
「それにしても、こんな数のアルセウス…初めて見たな」
『ふん、不愉快だな』
「あ、ソル」
いつの間にかボールから出ていたソルが歩きながら忌々しげに吐き捨てた。翻訳デバイスの画面を見るに、どうもこの屏風の絵が気に食わないらしい。
彼の顔がそれを物語っている。元々眼光が鋭いアブソルの目つきはいよいよ殺気に満ちたものになり、それはまるで修羅のようだった。
『出来るならこの爪で引き裂いてやりたい…』
「――爪は立てないでね。たぶん高価な品だから」
今にも屏風を紙屑に変えかねないソルにジュンは釘を刺しておく。言葉を直接理解は出来ないが、全身から憎悪を発しているのは何となく察しが付く。
(いったい、これの何か気に食わないんだか…)
ソルはちらっとこちらを見上げ、舌打ちをし、ふいっと顔をそむけるとすたすたと奥に歩いて行った。
完全に八つ当たりだ。
(理不尽な…)
廊下を渡り切った先に待ち受けていたのは、ソルの八つ当たりも吹き飛ぶほどの、まさに息を呑むような光景。
高い天井には一面に天井画が敷き詰められている。そこに描かれているのは、伝説と呼ばれしポケモン達。
アルセウス、ディアルガ、そしてパルキア。
光の衣をまとった姿で描かれる圧倒的な存在感。彼らの周囲には神に仕える立場と思しきポケモン達がびっしりと書き込まれている。
特に中央に配置されたアルセウスは金箔で彩られた後光がその威厳を確固たるものにしていた。
もはや芸術というよりも、ある種の宗教性、あるいは強迫観念さえ感じる天井画にジュンは目を奪われる。
(これは凄い…)
正直ここまでとは思っていなかった。もっとしょぼいと思っていたのだが、どうやら過小評価が過ぎたらしい。
「………」
『………』
ジュンが天井画に心を奪われている間、ファオとソルは互いに無言のまま天井を見つめていた。時折、視線を下げ互いに見やるが何も言わない。
と、その時
「お帰りなさいませ、お兄様!!」
声がした。声音から察するに十代半ばの少女の声。ふと声をした方を見ると、そこには着物を着た少女が立っていた。
黒を基調に桜をあしらった上品な着物を見事に着こなし、風に吹かれてさらさらと揺れる美しい黒髪と桜色の頬は、見たものを見とれらせる程可愛らしい。
お兄様という事は、彼女はユウタの妹だろう。どことなく古風な雰囲気が漂うが、それもこの家の特色という事なのだろうか。
「ああ、ただいま。レイカ――今日は客を連れてきた。こっちがファオ。そして後ろのが…」
明らかにユウタの口はヨット、即ちジュンのコードネーム“J”と言いかけた。だが、何故だか少しためらった後、再び口を開く。
「ジュンだ。俺の同僚って所だな」
(……ふぅん。コードネームで紹介しなかったのは僕を信頼してるって言いたいわけ?)
だが、本名で紹介されるのは悪い気分ではない。
ジュンは微笑むと、そっと右手を出した。
「初めまして。黒羽準だ。よろしくね」
「初めまして!私は憑神麗華といいます。以後お見知りおきを」
高揚した頬が可愛らしい。指でつつきたくなる頬っぺただ。
憑神麗華こと、レイカは棒立ちのファオにいそいそと近づき顔を見上げた。
彼女の身長は恐らく150センチ半ば。対するファオは190センチ。
40センチの差に若干威圧感を感じつつも、レイカは持ち前の好奇心でファオに手を差し伸べる。
そんな彼女にファオも握手に応える。
「初めまして、レイカさん。俺は――」
ちらっとユウタに目をやるファオ。本名を告げていいのか判断を仰いでいるようだ。
目くばせに気が付いたユウタは小さくうなずいた。信頼があっての事だろう。
「俺はヴィクター・ローレンス=ブレイズィケン(Victor Lawrence=Blaziken)。皆からは頭文字のVをドイツ語読みで“ファオ”って呼ばれてる。だからファオって呼んでくれても構わない」
人間語で流暢に喋るファオ。そんなバシャーモをレイカはぽかん、と見上げていた。
当然だ。ジュン達は慣れてはいるが、普通のポケモンは人の言葉を喋らない。
人とのコミュニケートはもっぱら翻訳デバイス頼りか、あるいは一部のエスパータイプならテレパシーによる会話もあり得るが、大多数のポケモンは人の言葉を話せないのが常識なのだ。
そんな中、いきなりこのバシャーモが流暢に喋れば驚くのも無理はない。
レイカは40センチ上から見下ろすファオをしばらく見つめていたが、驚き顔はやがて満面の笑みに変わっていった。
「す、すごいです!外の世界には人の言葉を話すポケモンさんもいらっしゃるのね!」
感無量といった様子で、衆目の中、レイカはファオに思いっきり抱きついた。
「ふぁ!?」
「な!?」
驚きの声が重なる。ファオとユウタのものだ。両者とも固まっている。
当のレイカは「逞しい体つきでいらっしゃるのね!」などとファオを撫でまわしている。
村の外へほとんど出たとこが無いレイカは、当然ながら社会常識なるものをあまり持ちわせてはいなかった。
憑神家は伝統ある名家にありがちな礼儀作法にうるさい家ではあったが、それも彼女の本来的な活発さを抑えきることは出来なかったらしい。
村から出れない彼女の立場も、逆にその活発さに拍車をかけているのだろう。
「いやいや、アハハ」
抱きつかれているファオは照れるようすでもなく苦笑いするのみ。
女性に興味のないファオには、別にどうでもいいらしいが…兄たるユウタがそれを黙って見過ごすはずはなかった。
「レイカ、お前一体何をッ…!!」
「あら、お兄様。何をそんなに怒ってらっしゃるの?」
怒っている、と言うより寧ろ動揺を隠せないでいるユウタ。
声が震えている。対するレイカはきょとんと兄を見返すのみ。
「と、年ごろの女子が男に抱きつくもんじゃないッ!しかもそいつは体格こそいいかもしれんが中身は変態だぞ、変態ッ!」
「大尉……」
ビシッとファオを指さしながらユウタがまくし立てるが、レイカは気にする様子はない。
巻き添えを喰らいひっそりと傷つくバシャーモを差し置いて、兄妹の間の緊張感が高まっていく。
『これは一雨くるな…』
横で傍観していたソルがぼそりと呟く。どうやらその予言は当たりそうだ。
「ふん、お兄様はいつも一般論ばかりですわ。その優柔の利かない性格は相変わらずですわね」
「それとこれとは話が違うだろう!いいか、女子が男と接する場合まずは互いに信頼関係を築いた上でだな――」
どうも言い争いでは分が悪いらしい。ユウタの言葉にいつもの切れが無いのは、見ていてとても新鮮な気持ちになる。
兄妹の言い争いはますますヒートアップしてゆく。
「これは“すきんしっぷ”ですわ!テレビで見ました!外の世界では女性と男性はまず抱き合って挨拶するものなのでしょう!?」
「それはイッシュの文化だ!ここはシンオウだぞ!女は女らしく――」
最後の一言は余計だった。地雷を踏んだのをユウタも悟ったらしいが、後の祭りである。
レイカはファオに抱きついたまま(恐らくユウタへの当てつけだろう)、引きつった笑みを浮かべる。
「まぁお兄様……イッシュに行かれて少しはその頑固な性格が変わると期待しておりましたが、どうもその頭の固さは治らなかったようですわね」
「…ふん。そういうお前も非常識な所はかわらんな」
今更後には引けないユウタも、負けじと言い返す。
兄妹の間にバチバチと稲妻が走るのが目に見えるようだ。
板挟みになって困り果てているファオは既に視界に入っていないらしい。
こういうところは兄妹似ているなとジュンが考えていると、レイカがすっとユウタを指さす。
「言い争っていても仕方ありませんわ。ここはポケモンバトルで決着をつけましょう」
「望むところだ。兄たる俺に勝とうなど100万年早い事を教えてやる」
突如勃発した兄妹喧嘩。間に挟まれ困惑するファオ。高みの見物を決め込むジュンとため息をつくソルと、平和な村に一波乱起きそうな気配が漂い始めていた。
****
一方その頃、遠く離れたイッシュ・ホドモエシティの教会では――
(……ここは、どこだ……?)
ぼやけた視界が明瞭になっていく。意識の覚醒と共に波導の感知も無意識に行う。
(横に師匠、後は部屋に3人…いや4人か。……それにこの波導は……)
例えるなら春を飾る清風のような澄んだ波導。ここまで純度が高い波導を、ルカは今まで感じた事が無かった。
しかも、それが人間から発せられているものである事実はルカの意識を完全に覚醒させるには十分な事実であった。
『……ここは…』
「まだ動かない方がいい。心配しなくても、ここは安全だから」
優しくルカに語りかける青年。薄緑の長髪を後ろで結び、帽子を被っている。彼から発せられる波導は、とても心地の良いものだった。
『あの、俺達はいったい…』
ここまで喋ってルカはいったん口をつぐむ。
いつもなら流暢に人間語が出てくるはずだが、どうにも疲弊がたまっているらしい――人間相手にポケモンの言葉で喋ってしまうとは。
しかし驚いたことに、青年は少し微笑むと
「大丈夫、ここにいる限り警戒する必要はない。ヘルメスの治療も終えてある。バトルの傷と疲労が蓄積しているから、しばらくここで休む事をお勧めするよ」
『あなた、俺の言葉が…!?』
驚愕を露わにするルカ。それもそのはず。ポケモンが人の言葉を習得することは稀にではあるが――例えば、人語を流暢に話すミュウから直接教わったルカや人間社会の組織に属するファオのような小数のポケモン達――あり得ない事ではない。
実際、人の言葉の発音をポケモンの口で行うのは想像以上に大変だが、それでも人間社会に溶け込もうと人語を学ぶポケモン達もいるにはいる。多くは翻訳デバイスによる会話に――しかも、機械翻訳の限界か、正確性に欠けるが――頼っている。
が、人間がポケモン語を習得する事はほとんどない。翻訳デバイスの存在もあるが、それよりも現在の人類の文明がポケモン族のそれよりも優位に立っているという事も大きな要因の一つだろう。
ポケモンにとって人語での会話が困難なように、人間にもポケモン語を直接聞き取る事は困難なのだ。
が、今目の前でこの青年はポケモン語を聞き取っている。
驚きでぽかん、としているルカに横から「ふふん」と鼻にかけた笑いが聞こえてきた。
「そんな事で驚いていては私の弟子失格ですねぇ、ルカ」
『お、お師匠さま!?』
振り向くとそこにはミュウがふわりと浮遊していた。手にはお湯の入った洗面器とタオルを持っている、というかサイコキネシスで浮かせている。
(あれだけダメージを受けて技を乱発して、まだエスパー技を使う余力があるのか…)
一休みしたのだろうが、それにしても底知れぬ師匠の体力にルカは内心恐怖さえ感じる。
「心配しなくてもよろしい。ここはイッシュで一番安全な所ですよ。――ルカ、波導を使って周囲を探ってごらんなさい」
何やら意味深な言葉だ。
ミュウの言葉に従いルカは波導を用い周囲を探り始める。まずは師匠ヘルメスのもの、次いで目の前の青年や後ろに控える数人の人間の波導を感知し、さらには部屋の外からの波導を感知しようとするが――
『……!これは…波導が感じられない……どうして!?』
ルカは驚いて周囲を見渡す。一面窓ひとつ無い真っ白な壁。しかし、妙な圧迫感を感じるのはそれだけが理由ではなさそうだ。
「言ったでしょう、ここは“安全”だ、と」
ピッと人差し指を立ててみせるミュウ。師匠の言葉の意味を探らんとルカは壁に駆け寄り、そっと掌を乗せる。
目を瞑り、意識を集中すること10秒。ルカはあることに気が付いた。
『ここの壁、外部からの波導を遮断している…』
本来なら外界の波導が伝わってくるはずが、全くといっていいほど何も感じない。
「ここの壁は外部からの波導をシャットアウトする特殊な防護膜で覆われているからからね。たとえ波導感知能力を持ったポケモンが居ても、外から内部を探ることは出来ないようになっている。その分、内側から外を探ることもまた不可能だけど」
青年が口早に説明してくれた。大方ルカの予想通りである。
(波導を遮断しているのなら、確かに外界から探られることも無いか…)
波導能力に絶対の自信があるルカにしてみれば、なんだか自分能力が封じられたような気分になってしまう。そんなルカの心中を察したのか、ミュウは再び鼻で笑う。
「ここがイッシュ一安全な場所だと分かったようですね」
『でも、お師匠様……ここはいったいどういう場所なんですか?』
波導を遮断するコーティングを施すなど特殊な目的が無い限りあり得ない事だ。
ルカの記憶ではここはホドモエシティの教会で、そういった類の怪しい場所ではなかったはずだが……。
その質問に答えのはミュウではなく、青年の方だった。
「ここは二つの役割を持っているんだ。一つは傷ついたポケモン達の治療。大勢のポケモン達が連日ここに運び込まれている。彼らの心身の回復に努めるのが大きな役目だね…そしてもう一つは……ある“組織”への追跡だ」
『ある組織…?』
嫌な予感がした。師匠がここへ逃げ込んだ事実を合わせれば、既に答えは出ているも同然だ。
それは即ち――
「ボクの父、ゲーチスが率いる『新プラズマ団』だよ」
悲しげな青年にルカは何と声をかけていいのか分からなかった。ただ一つ今の彼にも分かることは、既にルカ達は容易には抜け出せない因縁の沼に足を踏み入れてしまったという拭いがたい事実だけだ――