「南の神竜」
ライトは、ランにここに来るまでのすべてを話した。
「森の中を歩いていたらな、とてもきれいな泉を見つけたんだ。」
「へえ…それで?」
「ええっと…それで…、確かその泉の水に触れたんだ。」
「それで、ここに来た…と…。」
「…ああ、…ん?なんでまだいっていないのにわかったんだ?」
「…お前…意外と鈍感だろ?」
ライトは、今自分の悪口を言われたと思って、「は?」と少し怒り気味に言った。
「私が鈍感だって…?」
「…そこには敏感なんだな……。」
ランは一度そっぽを向き、そして、ため息とついた。
「…あのな、今は私の説明が足りなかったから謝るが…。ふつうお前が今ここにいる現状と、泉に触れたっていう事実があればよっぽどのバカでない限り分からなくはないだろうっ!」
「あ〜!バカって言ったぁ…。」
「………とりあえず…お前に説明しなければならないことがある。」
ランはついて来いと、ライトの手を引いた。
森の中を行き、ライトはその光景に息をのんだ。
「に…人間が……人間がいないっ!?」
何処を見てもポケモンだらけだった。それに、ランに手を引かれ、どこまで行っても人が住めるような街がないのだ。
ライトは、ここをよく知ってそうなランに一つ聞いてみることにした。
「なあ…ラン。ここは…どこなんだ?」
ランは足を止めて、ライトの方を向いた。そして、「それを聞かれるのを待っていた。」…というような顔をして、
「ここは……。ここは、人間無世界だ。」
そういった。
「ライト、お前が自分を人間だといったとき、私はとても驚いた。それに、何の用もなしに人間世界とこの世界をつなぐ泉のゲートが開くとはとても考えられなかったしな。…正直、人間はこんなに愛想がいいなんて思っても見なかったしな。」
「まっ…待ってくれ!もう一回最初から話してくれ…え…え〜と……。まず、ここは人間無世界というのだな?」
「ああ。」
「それで、…私がお前に人間だといって…びっくりしたんだな?」
「ああ。」
「あと、此処と私が住んでた世界をつなぐ泉のゲートが何の用もないのに開いたことに驚いたんだな?」
「なんだ、分かってるじゃないか。」
「そんで、…私は…愛想がいいのか…?」
「…かもな。まあ、お前の性格は私は嫌いではない。」
ランは目を閉じると、何かを思を出したか、静かになった…。
そのまましばらく、時が過ぎた……。
「ラン?」
「ん?…ああ…すまなかったな、それでは、お前が合うべき者のところへと連れて行ってやろう。」
「私が会うべき者?…いったい誰なんだ?」
「それは会ってからのお楽しみだ。」
「……お楽しみ………?」
お楽しみなんていったら、その人…いや、ポケモンに失礼じゃないか?
そう言いたいのを我慢して、ライトはランの後をついていった。
森を抜け……ライトは不思議な階段を見つけた。
「なんだ?これ…」
やけに薄い、ガラス張りのような階段だ。足を乗せたら自分の重みで割れてしまいそうな段が、空に向かって、何百段と続いている。
「ここだ、ここを上るんだ。」
「こっ…これって極楽浄土行きの…。」
「そんなわけないだろっ!私は天使か。」
冗談を交えたランのツッコミに、ライトは苦笑しながらも、階段を上ることにした。
数十分後…
「や…やっと着いた…。」
「これくらいでか?」
「さっ…最近忙しいのだ!」
階段を上るその先に、とても大きな神殿のようなところがあった。
「……!?」
「どうした?」
「なっ…懐かしい……どうしてだろ…ここが故郷みたいに感じる…。」
「………。」
ランは、目を閉じ、故郷の風を感じているライトを黙ってみていた。
しばらくし、ランがライトに話しかけた。
「もう…十分か…?」
「えっ?あ…ごめん……。」
「別にかまわない。さあ、行くぞ。」
ランは、大きな扉の小さな穴に、「南の神竜よ。南部の住人のランだ。入れてもらうぞ。」そういうと静かに扉は開かれた…。
音もないくらい空間をいくと、その奥に大きな白い竜が立っているのが分かった。
体は3メートルくらいあるだろうか?目は青く透き通り、大きな翼と尾、そしてたなびく鬣が特徴的だった。
ふつう、最初に合えば恐ろしさの一つは感じるだろう。
しかし、ライトは恐ろしさの一つも感じてはいなかった。むしろ、その竜から暖かい何かを感じとっていた……。
「久しぶりだな。レシラムよ。」
「そうですね。何年ぶりでしょうか?」
すると、レシラムは、ずっとランの横にいたライトの存在に気づいた。
「ラン、この方は?」
「ああ。」
そういうとランは、ライトの後ろに回って背中を押すと、「さあ、自己紹介タイムだ。」といった。
「えっ?えええ!?ちょっと!」
「なんだ。王女のくせに自己紹介もままならないのか。」
「えっ?だ…だってこの人は私のことを知っ…」
「バカッ!人というなっ!」
「いいのです。ラン、この者と少し二人きりで話をさせてください。」
「レシラム…。」
ランは、少したちどまってから、「失礼する。」そう言って扉のほうへと消えていった。
「緊張しなくて大丈夫ですよ。少し貴女に聞きたいことがあるのです。」
「……。」
ライトは、自分に大丈夫だと言い聞かせながら、レシラムの問いに答えることにした。