銀の輝き
タマゴからは脈動とも言える音が聞こえ、それは小さな部屋に集まった数人の耳にしっかりと響いている。彼らのうち小さい子供二人はこれから誕生する新しい命を前に目に宝石の様なキラキラを伴わせ、一心不乱にピカピカクッションの上に置かれたタマゴを見つめている。それを見守る大人たちは彼らも自分のポケモンを持つ時期になったのだとわずかならぬ感動を胸に目尻を下げ、口元を緩める。
「……あっ」
と声を漏らしたのは誰であったか? 少年かもしれない、少女かもしれない、大人たちかはたまた全員の声だったのか? そんなことを意識する間もなく小さな部屋は生命の輝きに包まれる。温かい、その場にいた全員がそんなことを感じた。
そして、
「…………うわぁっ、ポ、ポケモンだぁ……!!」
「……すごく、綺麗……!!」
少年と少女は思わず感動の声をあげた。その瞳がわずかばかり潤んでいるのは気のせいではないだろう。
窓から差し込み始めていた朝日がちょうどその生まれたばかりのポケモンにあたり、銀の体を更にきらきらと美しく照らす。朝日を浴びて覚醒したらしいそのポケモンはゆっくりと目を開き、幼いながらも鋭さを伴った瞳で少年達を見た。そして大きく、美しく、それでいて軽やかに両翼を広げ『はじめまして』と言わんばかりに美しい鳴き声をあげた。そしてその雄大な姿はもの見事に少年と少女のハートを打ち抜いたのだ。
「……君が、僕のポケモンなんだね……」
未だに朝日の中の雄姿に心を奪われたままの少年はうっとりとした表情のまま、そのポケモンに二、三歩歩み寄る。少女はその後ろで未だに感動に浸り立ち尽くしていた。
少年がそのポケモンの目の前に立った時、自分のトレーナーは誰なのか理解したらしく冷たい首を少年にこすりつけ親愛行動を取る。金属の様な冷たさの中にこのポケモンの持つ確かな温かさが感じられた少年は嬉しさに顔を綻ばせ、若干照れくさそうにしながらも頭を撫でてやる。嬉しそうな鳴き声が聞こえた。
「へへ……、はじめましてエアームド。僕は……ユズキ、よろしくね」