08
「覚えてくれて嬉しいよ。」
「ああ…絶対にお前のことを忘れるもんか!」
モフはここでグランとドンという仲間を失った。多分この先もモフはここのことを忘れないだろう。
「まあ、威勢があってよろしい。どうだね?捕まってしまった気持ちは。」
「最悪だ。」
「ふむふむ…。いやぁ君、師匠と同じこと言ってるね。確かグラン君って言ったっけね。」
そうラインから言われてちょっと嬉しくなるモフ。
「彼らは出所したの?」
「おかげさまで。ちゃんと刑期を終えて出所してます。」
しかし、そんなモフの気持ちを地に叩きつけるかの様なことをラインは口にしたのである。
「まあ、ああいうのは社会のゴミだからな。害だ。」
……………………………。
「断っておくが、別にあくタイプ差別として言ってるのではない。犯罪を犯した反社会的な行動について害だと言っているのだ。」
……………………………。
「第一私にはこれだけの数の盗みを犯した者を再び社会に復帰させる意義がわからん。たかだか1年足らずの懲役刑だけで罪を償ったなんぞ言ってられ――」
「止めろ!」
ラインの言葉を遮って叫ぶモフ。
「グランもドンも、2人とも自分たちの成し遂げたい夢の弊害としてしてしまった罪を反省している。でも、やり方は間違えてたかもしれないけど、2人がやらなきゃ誰もやらない。だから2人とも立派な教育者になろうと一生懸命勉強している。2人ともちゃんと立ち直って――」
「それがおかしいって言ってんのさ。なんで犯罪者が夢を見てるのさ。」
返す言葉はなかった。しかし、モフの中で何かがプッチーンと切れた。
「それは…自分のやってることをわかってて言ってんのか?立場の弱い人達の宝物を権力で奪ったも同然の行動をしやがって…自分で言ってて恥ずかしくないのか?」
「語弊があるぞ。私はそんな泥棒はしたことがない。彼らから買ったものだ。」
「殆どタダ同然だろうが!そんな奴に夢がどうこうだなんて言われたくねぇ!」
気づけばいつの間にか[アイアンテール]を繰り出していた。尻尾に尻尾に思いっきり力を入れて踏ん張る。
ブチっ…ブチブチっ…プッツン
とうとうモフを縛ってた糸が切れた!
「オレは…テメェを絶対に許さねぇ!」
「よく言った!」
空から声がする。
「おお、すっかり忘れてたぜ。」
声の主が徐々に近づいてくる。
「どうやら時間のようだな。オレ自身これ以上罪を重ねたくねーからここでトンズラさせてもらう。こいつはオレがいただいたからな。ソラ!」
「了解![すなあらし]!」
モフの指示と共に強烈な[すなあらし]が屋敷を包む。
「今助けてやる。[アイアンテール]!」
アサヒの分の糸も切ってやり、どうにかしてソラの背中に乗る。
「ありがとな。」
「礼なんかいいから!さっさとこっから消えるよ!」
強い[すなあらし]を抜け出し、3人は村へと向かって行った。