05
モフがライン邸へ向かってとにかくダッシュしていると…
「クロ!」
空からモフを呼ぶ声がした。ソラだ。そのままこっちに滑降してくる。
「話はエンさんから聞いてるよ!一人で走っていくなんて無茶だ!僕も行く。だから早く乗って!」
言われるがままにソラにまたがる。と、そこには見慣れた物があった。
「それ、エンさんから預かったもの。過去に失敗したところに素顔をさらすのは無防備過ぎる。」
確かに、このままの格好て行けば確実に自分を特定できてしまう。《身元不明の怪盗クロ》の方が都合がいい。エンの優しさに感謝して、山高帽を被り、マントを羽織って仮面をつけた。
「さあ、こっからぶっ飛ばすから捕まってて!」
ソラは暗い空へと羽ばたいた。
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一方のアサヒ。当人はいつもどおりだ。そういう真実を知らないってのもあるし、それ以上にこれまで4回の犯行が全て成功を修めているのが自信なのだ。
今日も昨日同様、ターゲットのライン邸から約500mのところに来た。例のごとく予告状によってたくさんの警備員が警備している。
さて、あの警備員をどこまでぶっ飛ばそうかな、なんて思いながら屋敷の方を見ていたアサヒ。その背後から迫る影に気づかなかった。
「[からてチョップ]!」
「ぐはっ!」
警備員のゴーリキーが背後から[からてチョップ]を喰らわせた。刹那、アサヒは気絶してしまった。
「ふん!わざわざ予告状を送りつけてまで来たから骨のあるやつだろうと思ったが…」
「大したこと無かったな。にしても警備範囲を広げといて良かったな。」
音を聞きつけてコジョンドもやってきた。
「な。いつもどおりだったら余裕で奪われてたぜ。…さあ、これをラインさんに報告だ。」
アサヒの首を引っ掴んでゴーリキーとコジョンドは屋敷に戻っていった。
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それから3分後、モフとソラはライン邸の上空を旋回していた。
今回のライン邸の警備は非常に厳重だ。屋敷から約3キロのところから約500mおきに一人づつ、円形状になるように警備員を配置している。その警備員に見つからないように空高い所を飛んでいるのだが、上空から様子を見るとどうもおかしい。警備員だと思しきかくとうタイプのポケモンが屋敷の方に向かって戻っているのだ。
「なんだ?一体何が…?」
「ひょっとして手遅れだったんじゃ…」
「まさか!じゃあアサヒはどこに!?」
「あっ!あれ!」
ソラが指さす先に見えたのは、屋敷に入っていく3つの影。そのうちの1つこそアサヒだったのだ!
「アサヒ君…捕まっちゃったみたい…」
「警備員達が持ってたのはトランシーバーだった。ああいう通信機器の発する電波はエスパータイプの感覚を麻痺させるって聞いたことがある。アイツ、それで逃げらんなかったんだ…」
「で、どうやって助けに行くの?まだ僕たちは負けてないよね?」
そう。警察が来るまではまだこっちは負けていない。改めてその事に気づかされた。
「ああ。こういう作戦でいこうと思ってる。」
そっとソラに耳打ちすると、2人はすぐさま作戦を始めた。
「待ってろアサヒ。絶対助けてやるからな。」