前編 一通の手紙
1月1日。新しい年を迎えたここ《星の里》。やっぱり村中がめでたい雰囲気に包まれた。この家を除いては…。
「モフ!いい加減起きろ!正月から昼まで寝てんな!」
「お正月…寝正月…」
「起きろ![かえんほうしゃ]!」
「うわっあっち!わかった!わかったから!」
「だったら早くベッドから降りろ!」
「あ"〜〜〜っ!痛い痛い痛い痛い!耳に噛み付いて引っ張んないで〜!」
正月から騒々しいモフの家(というよりモフとエン)である。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
そんなこんなで一家揃って初詣にやって来た。
「よっ!クロ。あけおめ!」
「皆さんもおめでとうございます。」
鳥居のところでフレイムとソラに出会った。
「2人共おめでとう。はい、お年玉。」
「「ありがとうございます!」」
「これでちょっとは生活の足しになれば。」
ライが2人にお年玉を手渡す。中身を見て2人はすごく驚いていたが、ライの優しさに甘えてありがたく頂戴する事に。
「ところで…正月早々、その右耳の歯型はどうしたの?」
「まあ、大方予想はつくが。」
モフの姿を見れば気付かない人は100%居ないと言っても過言ではない右耳。さっきのあれである。とりあえずモフは
「まあちょっとね。」
といって誤魔化す。下手に言えば次エンに何されるかわからない。
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お参りを終え、モフは皆でグランとドンの所へ向かう事になった。新年の挨拶を済ませ、ライは例のごとくお年玉を手渡す。その後、ライは町内会の新年会に参加するために先に帰宅。未成年者たちはグランとドンの部屋でしばらく過ごした。
「そういえば、皆は正月に家族に会いにいかなくていいの?」
トランプをしながら何気ないモフが聞いてみる。
「実は明日、オレたちの家族がここまでやってくるんだ。」
「そこの山を1つ越えるだけだからって、僕たちの様子を見にこっちまで来るんだ。」
「へぇ。よかったじゃないの。あなたたちこの村に来てからかなり成長したものね!」
「オレもバクフーンさんたちにお礼言わなきゃだな…」
「あ、そうだ。クロ宛に手紙だよ。」
ソラが持っていたバッグから封筒をクロに渡す。
「実は僕、ちょこちょこクラウンビレッジにもどるんだけど、こないだ家のポストに入ってたんだ。」
「て事は依頼か?」
封筒を丁寧にあけ、中身を読んでみることにした。
《挑戦状
私はあなたの全てを知っている。すぐに新聞で世間にばらまく準備も出来ている。やめて欲しければ1月2日午前3時迄にグレートジャーナル最上階にある新聞原稿を奪ってみなさい。
健闘を祈る。》
「誰からだ?」
「てかこれってマズくね?」
「怪盗クロ=モフって世間にばらまかれたら確実にオレ逮捕じゃねえかよ!」
こうしちゃいられない。モフは早速グレートジャーナルの本社に向かおうとする。
「待て。お前一人じゃ絶対に危険だ。今日は元日だぞ。ほかの街はまだまだあくタイプに偏見を持っている可能性がある。そんなところをブラッキーが歩いてたら確実にお前はボコボコになる。」
ドンが言う。それは正論だった。
「じゃあどうすればいいんだよ?」
モフが尋ねる。なんとしても逮捕は避けたいモフは、なんとかして原稿を盗りに行きたい。
「…オイラたちはこっちに残ってカモフラージュする。クロ、エン、アクア。それと動き方がわかってるフレイムとソラ。5人で行ってこい。」
グランが提案する。
「年明け早々久しぶりの仕事か!」
「この村の一件以来か?」
「あたしモフの仕事しているところ見たことないかも。」
思い思い口にする。
「じゃああれだな。初夢ウルトラスペシャル。日付が変わった頃突入だ。」
「OK!この仕事、絶対に成功させよう!」
《初夢ウルトラスペシャル》大作戦の幕切れである。