09
「実はね。」
そう言うと、ヒカリは《りゅっくさっく》から《あるばむ》を引っ張り出した。
「これは私たちが旅に出るときに御守りとして持ってる物なの。2人の色んな思い出が詰まっている一冊なんだけど…」
渡されたアルバムをペラペラとページを捲っていく。そこにはヒカリとコウキの赤ちゃんの頃からの写真が詰まっている。森のポケモンと遊んでいるとき、家族旅行に行ったとき、ケンカしてるとき。
『これがコウキとヒカリの小さい時?』
『超カワイイ!』
写真を見ながら皆は口々に感想を漏らす。確かに、結構カワイイ。
「このアルバムは私とコウキで全く同じ写真なんだけど…私の産まれたときの写真はあるけど、コウキのはいきなり歩いたときの写真しかないの。」
本当だ。ヒカリの分はわざわざ手形と足形まで丁寧に入っているのに、コウキのは《コウキ 初歩き》からしかない。
「お母さんは、『写真を取れなかったのよ。あなたが小さいから。』って言ってるけど、産まれた病院に聞いたの。そしたら、コウキはお父さんとお母さんからは絶対に産まれない血液型の組み合わせだったの。」
「それって…」
「そう。コウキと私は血が繋がっていないの。」
衝撃だった。と同時にさっきみた《俺の記憶》が夢ではなく確信に変わった。
「でもね、もし血が繋がっていなくても弟としてずっと一緒にいたんだもん。いつまでもコウキは私の弟!だから私はコウキともう一度会いたい。」
ヒカリは強い。俺はそう思った――俺も強くならなきゃ。
「あんさ、スゲー言いにくいんだけどさ…」
俺は自分の見た《記憶》を話した。ありのまま、包み隠さずに。
「そう…。あの子はその事は覚えてないの?」
「多分な。向こうも俺のことをわかってなかった。」
「…とにかく、明日から捜そう!」
「だな!」
俺とヒカリは固く握手し、誓った。
『お前らだけかよ!』
『ボクたちもいるよ!』
『仲間外れにしないで欲しいわ!』
「忘れちゃいねーよ!ほら、来い!」
皆で1つの輪を作る。何だろう。皆でいるとあったかい。
「絶対にコウキを助け出すぞ!」
「『『『オーーっ!』』』」
ポケモンセンターの一室に俺たちの声が響いた。