chapter3 谷間の発電所の悲劇
08
結局今日はもう一度ソノオタウンに戻る事にした。
ヒカリはさっきから泣いたまま。俺がおぶってポケモンセンターに戻った。

「ごめん。1人にさせて。」

ヒカリの希望で今日はヒカリと別れて泊まることにした。

『ヒカリ…よっぽど辛かったんだろうな。』
『そりゃあそうだろ。大切な弟があっちに行っちまったんだからね。それも大事だけど… 』

さっきからハヤシガメとルクシオがひそひそ話をしている。そりゃそうだ。向こうの部屋ではヒカリが独りでいるのだが、こっちはこっちで雰囲気が悪い。
ゴウカザルとブイゼルは自分の相棒が連れ去られたこと、コウキを守れなかったことを悔やんでいる。

『クソっ!』
『コウキ…守れなかった…』

ゴウカザルは今にも床に[きあいパンチ]を撃ち込みそうな勢い。ブイゼルもべそを掻いている。エンペルトもムクホークもコウキとは長い付き合いだ。
しかし、長く一緒にいた訳ではない俺自身も悔しかった。

「本当に済まない…」
『ミドリだけのせいじゃない。』
『ボクたちも何もできなかった。ボクたちの力不足でもあるよ。』
「でも…」

昨日の夜、俺は皆と約束した。絶対にコウキを守る。でも、守れなかった。悔しさと申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
そして何よりも、さっき見た《俺の記憶》とやら。あれが本当に俺の記憶ならば、コウキは俺の相棒。守らなきゃいけなかった…。

コンコン

外から扉を叩く音がした。重い足取りで応対する。こんなときに来た訪問者。それは…

「皆心配かけてごめんね。」

ヒカリだった。

「ヒカリ…気持ちは落ち着いたのか?」
「まだ受け入れられないけどね。」
「まあ、中入れよ。」

さっきまでの表情とは一転…とまではいかないけど、持ち前の明るさが戻っている。何となくだが見せかけではないと思った。

「まずは、私たち姉弟のことで皆に迷惑をかけてごめんね。私は…完全じゃないけどもう大丈夫だから。」
『ヒカリ、皆を代表して言わせてくれ。コウキを守れなくて済まなかった…。』

ゴウカザルが深々と頭を下げた。

「私、皆の言葉はわからないけど、もし謝っているんだったら顔をあげて。」

ゴウカザルが「えっ?」って面持ちで顔を上げると、ヒカリはゴウカザルを優しく抱きしめた。

「大丈夫。きっとまた会えるから…」

その言葉が妙に俺たちを安心させた。



ちゃ ( 2014/01/07(火) 06:54 )