06
それからコウキは「研究員」として活動した。その時はボクもモウカザルもコウキも誰も"悪の組織"なんて疑わなかった。入団の半年後には《アース》の称号を手に入れ、研究所のリーダーとして研究員たちをまとめあげるにまで出世した。
コウキは《シンオウ時空伝説》の実証を研究していた。今思えば無理な研究テーマだったけど、真面目というか愚直というか、コウキは与えられたテーマに真摯に取り組んだ。
そんなある日だった。
「アース。お前に極秘任務を任せよう。」
アカギが突然切り出した。
「極秘任務…ですか?」
「そうだ。と言ってもお前は何も考える必要はない。」
「と言いますと?」
「…極秘だ。」
可笑しな話だよね。自分の任務について何も教えてくれないなんて。
「教えたところでお前はこうなるんだからな! 」
『『!?』』
アカギは突然光線銃を向けたんだ!
『このテメェ!ふざけんな!』
『やっぱりお前は悪いヤツ!もう許さない!』
ボクとモウカザルは臨戦態勢。技を繰り出す寸前。でも…
「邪魔をするな。」
あの時と同じ。懐から出てきた拳銃の銃口をコウキに向ける。またボクたちは何もできないままだった。
ボクたちが何もしないのを確認すると、アカギは光線銃の光をコウキに浴びせた。
「ウガァァァァァァァっ!」
苦しそうだった。でも、ボクたちは何もできないままだった。
光を浴びるだけ浴びきったコウキはそのまま地面にぐったりと倒れ込んだ。
『『コウキ!!』』
ボクたちはやっと動けるようになってコウキのそばによった。
「モウカザル…ブイゼル…僕は一体…」
「気づいたか?」
アカギが近寄って来た。ボクとモウカザルはまた技を繰出す体制をとる。
が、次にコウキの発した言葉にボクは思わず拍子抜けしてしまった。
「あなたは…どなたですか?」
へっ?さっきまで《ボス》って呼んでた人のことをコロッと忘れてるんだ。
「よしよし。このマシンは使える様だな。私の名前はアカギ。この《ギンガ団》のボスだ。お前の記憶を吸い取らせて貰った。」
「吸い取らせて貰った?」
指をパチンと鳴らすと、下っ端がディスクをアカギに手渡す。
「ここにはお前の全ての記憶がある。生活に支障が出る分には複製した。このデータがとれればお前はもうわがギンガ団には用済みだ。立ち去れ。」
パチンと指を鳴らすと、4人の下っ端がボクたちを強引に外へと追い出す。体を羽交い締めにされてるから動けない。
たまたま今までコウキが研究していた研究室の前を通った。その時、ボクたち3人の目に飛び込んできた光景は残酷だった。
「ユクシー…アグノム…エムリット…!?」
さっきのコウキと同様、ヘンな光線銃に侵されている…。叫び声が鼓膜を突き破りそうだ。
「アースさん、あなたはここでこのような研究をなさってたのですよ。」
下っ端がコウキに耳打ちする。その一言で、コウキの中にちょっと残ってる記憶のカケラと融合してしまったようだ。
「う…う…うわぁァァァァァ!!」
自分がこんなひどいことをしたと思い込んでしまったようだ。我を失ったように叫ぶコウキを見て、ボクは何もできなかった。
建物の外に出てからも、コウキは自分の"受け付けられた"現実に苦しんだ。