02
「ナナカマド博士!只今戻りました。」
俺はヒカリに支えてもらいながら何とかナナカマドポケモン研究所にやって来た。
「おお。ヒカリか。やけに早かったな…っとそちらは?」
「博士!彼を助けてあげてください。彼、記憶をなくしてしまったみたいです。」
出迎えてくれた白衣を着た白髪のじいさん――ナナカマド博士にヒカリはカクカクシカジカ経緯を説明する。
「まあ、玄関先での立ち話も難だな。奥に入りなさい。」
博士は俺たちを奥の応接室に連れていく。
「改めまして、私がナナカマド。医学は大学時代に研究したことがあるから心配は無用だ。
…さて、早速本題に入ろう。記憶喪失と聞いたが、記憶喪失を治療をするには刺激を与えるのが一番の治療法だ。辛うじて何か覚えているものはないか?断片的で構わない。」
「博士!その… 」
「ヒカリ!良いんだ。自分で話す。」
ヒカリが話そうとするのを俺は制した。ちゃんと自分の口から言わなきゃね。
「実はその…信じてもらえるか分からないけど、俺が唯一覚えているもの。それは俺がジュプトルだったことなんです。キモリとしてこの世に生を受けた。でも、どこで何をしていたのか、さっぱり覚えていません。」
「…そうか。悪かったの、嫌なことを言わせてしまってな。」
「いえ、そういうところと向き合わなければダメでしょう。」
「人間からポケモンだったら文献があるんだがな…」
「「えっ?」」
俺とヒカリは思わず聞き返す。
博士は一旦部屋を出ると、本を一冊持ってきた。表紙には何やらいろいろと書かれているが、俺は文字が読めないから何が書いてあるのかさっぱりだ。
「何て書いてあるんだ?」
「《時と闇の冒険》…って博士!これはSF小説じゃないですか!文献って言えば文献ですけど…」
ヒカリがガッカリした声を出す。もっとも俺は《えすえふしょうせつ》がわからないから何でそんなにガッカリしているのかわからん。
「このシンオウ地方にはこんな言い伝えもある。『己自身には時空あり。棄するならば汝に罰を与えん』。これはシンオウ時空伝説の1フレーズ。この小説の主人公がポケモンになってしまったのも時空を超えようとしたから…。こじつけかも知れんが、お主はここではない違う世界から来たのかもしれんな。」
博士が言い切ったその瞬間。
「ナナカマド博士!こんにちは、コウキです!」