04
朝になってもクロが部屋から出て来ない。やっぱり昨日のことを引きずっているんだろう。
「俺、まさかとは思ったけど…」
「本当にそのまさかだよね。」
どうしたらいいのか、バクフーンとフライゴンが頭を悩ませるその時。
「クロさん!バクフーンさん!フライゴンさん!おはようございます。エンです。」
グッドタイミングと言うかバッドタイミングと言うか。エンがやって来た。
バクフーンが応対に出た。
「おはようございます。どうしたんですか?こんな朝早くから…。」
「すみません。村長に呼ばれたんです。クロさんを連れて来いって。」
「ああ。そうですか。でもすみません。アイツ、こういう所は[あくタイプ]なもんでして。多分昼頃まで寝てると思いますよ。」
「んな訳無ぇだろうが!もうとっくのとうに起きてるわ!
あ、エンさんすみません朝からこんなんで。支度終わったらすぐ行きますんで待っててください。」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
いつまで泣いていただろうか。クロの目からはもう涙は一滴も流れない。
「ああ、もう朝か…。」
窓の外からポッポのさえずりが聞こえてくる。また夜通しで泣いていたようだ。
どうしても昨日のエンとの再会が忘れられないのだ。でも、思い出す度に胸が締め付けられるように痛い。昨日のエンに対する色々な思いがこみ上げてきて、涙が出なくて泣けないのにものすごく泣きたい。
そんな時だった。
「クロさん!バクフーンさん!フライゴンさん!おはようございます。」
エンだ。エンがやって来たのだ。
色々と応対しているバクフーンの話し声を聞ける余裕もなく、どうしようどうしようと負のスパイラルに陥った。が、そんなクロの耳にふとこんな声が聞こえた。
「ああ。そうですか。でもすみません。アイツ、こういう所は[あくタイプ]なもんでして。多分昼頃まで寝てると思いますよ。」
「んな訳無ぇだろうが!とっくのとうに起きてるわ!
あ、エンさんすみません朝からこんなんで。支度終わったらすぐ行きますんで待っててください。」
あれ?とクロは思った。
さっきまでの変な感情が消えたように感じたのだ。
「悔しいけど、ここはバクフーンに助けられたな。」
クロは帽子を被り、マントと仮面を付け、部屋を出た。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
クロたちは役場に向かって歩き始めた。のだが…
ぐ〜〜〜〜〜っ!
ぐぐ〜〜〜〜〜っっ!!
ぐぐぐ〜〜〜〜〜っっっ!!!
「そういやボク達朝ごはん食べてないんだね。」
「ヤバい。絶対に持たねぇ。」
「ったく。誰のせいだよ。」
「「お前だよ。」」
「うっ……」
何も言い返せないクロ。自分が悪いってことは多少はわかっているようだ。
「あ、でしたらこっちに野生の木の実が成っているところがありますよ。寄って行きましょうか?」
「「「ありがとうございますっ!」」」
こうして3人はエンの案内で木の実の群生地に向かう。
案内して貰ったところは…
「凄い…」
「家族の皆をここで腹いっぱい食わせてやりてぇな。」
バクフーンとフライゴンにはこれだけたくさんの食べ物を(節度を守りつつ)無料でたくさん食べられるのだからかなり魅力的な場所。
そんな二人を見ながらモモンのみを頬張るクロ。
(家族に、ねぇ…)
すぐそこにいるのに、何もできない虚しさが苦しいクロだった。
「どうですか?気に入って頂けましたか?」
エンが勝負を仕掛けた。今、クロとエンが1対1で話している。
「あっ…はい。とっても美味しかったです。」
「そうですか。そりゃ良かった。」
ニコっと微笑むエン。その笑顔はあのときと変わらない。
(エン兄がそうならこっちだって…)
クロも勝負を仕掛ける。
「あの、エンさん。敬語はもう無しで行きませんか?オレの方が年下ですし。」
一瞬考える素振りを見せる。と、こっちを振り向いてこう言った。
「いやあ助かった。マジでいいの?俺こういうのスゲー苦手なんだよ。お前本当いい奴だな!」
(……順応早っ!)
敬語を使わなくていいとなり、肩の荷が降りたのか何なのか知らないが、強烈なマシンガントークを繰り広げる。
でもクロは、礼節正しいエンが見せる意外な姿に新鮮さを感じる。
「じゃあ、お前たちも敬語なしな。年下だからって関係ねぇよ。じゃあ改めて宜しくな!」
「お…おう!宜しく!」
互いにガッチリと握手を交わした。