02
「ったく、進化して仕事がヘビーになるのは良いけどよ、収入が増えないってどういうことだよ!」
村での仕事中、クロとバクフーンのたわいもない話だ。バクフーン的に、働く量はかなり増えたのだが、収入が増えないのがちょっと不服なようだ。
「しょうがない。年齢で決まっているんだもん。」
「そこな。それはオレでもわかるんだけど、せめてボーナス出ても良いと思わねぇ?まあ、それでこの村の平等が崩れるからなんだろうけどさ…」
そう。この村のモットーは『平等』。いくらバクフーンがわーわー言ってもこれに関しては覆る事はないのだ。
(平等かぁ。)
しかしクロにはそれさえ胡散臭く感じた。やっぱり、クロはお客さんだから皆どことなくクロを丁重に扱う。迫害(というべきだろうか)されていたときに比べたら雲泥の差だ。しかし、なんとなく嫌だった。
――皆には家族がいる。家族のように扱ってくれるバクフーン一家の行動は嬉しかったが、自分の本当の家族は《星の里》にいるんだと思うと、やっぱり寂しい。
『やっぱり家族に会いたいんじゃないかな?』
いつだったかバクフーンもといマグマラシが言っていたあの一言が未だにチクチク痛む。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
そんなある日だった。
「クロ宛に手紙だよ。」
「依頼かな。」
いつもの通りにフライゴンが依頼の手紙を持ってきた。
《拝啓 怪盗クロ様
挨拶もそこそこに大変失礼します。
いきなりですが、私たちの村を助けてください!
私たちの村《星の里》は、エンペルトによって買収計画が進んでいます。しかし、彼が提示する条件は我々にとって認め難いもの。当然受け容れることなどできません。
しかし、相手は権力を駆使して、私たちの反対意見に耳を傾ける事無く、計画は最終段階に差し掛かっています。
お願いです!私たちに代わって村を護って…
《星の里》在住 ブースターのエン》
《星の里》…。ブースターのエン…。
「へっ!まさかな。」
「何が?」
「いや、オレの話だ。」
まさかこんな形で再開する事になるとは、運命の悪戯は怖いものだ。
(考えてみればそうだよ。向こうは[怪盗クロ=モフ]って知らないはず。この手紙は怪盗クロ宛なんだ。きっと大丈夫…)
「どうしたの?ずっと黙り込んじゃって。」
「ん?何でもないよ。さ、早速行こうぜ。」
クロはわざと明るく振舞う。フライゴンはちょっと不審に思ったが、そんなことはとは知らず。
「まぁいっか。」
そしてクロ、バクフーン、フライゴンの3人は星の里に向かった。