三章 大切なもの
06
「ふん!コソドロがカッコつけたら誘拐犯か?ここでコテンパンにやっつけてやる。行け!」

メガニウムの一言でベイリーフたちが動き出す。

(オレはビーダルの救助に向かう。)
(OK!じゃあオレはベイリーフたちだね!)

アイコンタクトで互いに役割を確認、すぐさま行動に移す。

「[つるのムチ]!」
「[はっぱカッター]!」
「お前らの相手はオレだ![だいもんじ]!」

マグマラシは次々と襲ってくる草ポケモンを倒していく。相性の良さもあって一人で倒す。

「向こうはアイツに任せた。お前はオレとだ。」
「なるほど。タイマン勝負ですか。」
「嫌か?」
「いいえちっとも。さあ、始めましょうか。」

言われなくても互いにそのつもりだった。互いに一定の間を取る。

「[アイアンテール]!」
「[リフレクター]。」

[リフレクター]。相手の物理攻撃のダメージが半分に軽減される厄介な技。

(この調子だと[ひかりのかべ]も覚えてるんだろうな。効果が切れるのを待つかそれとも…)

「考えことなんかしてていいのかな?[ソーラービーム]!」

([ソーラービーム]ならチャージに時間が掛かるはず…。なら!)

「[あやしいひかり]!」

メガニウムを混乱させてターン数を稼ぐつもりだった。しかし…

「発射!」

(!?早い…)

モロにソーラービームを喰らったクロは地面に叩きつけられた。

「くっ…」
「おやおや。コソドロ2人揃ってやられているのかい?すごい意気込みでやって来た割にはがっかりだねぇ。」
「えっ!?」

はっと後ろを振り返ると、同じように地面に叩きつけられているマグマラシの姿。

「マグマラシ!?」
「オレは大丈夫。そんなことより、オレはこんな奴らに負けたりなんかしたくない。こんな…自分の利益しか考えてないクソ野郎にな!」

刹那、マグマラシの身体が白く光を放つ。

「まさか…進化か?」

そう。身体が更に白く輝く。そして………

「待たせたな。さあ、決着をつけようか。」

マグマラシがバクフーンに進化したのだ!

「喰らえ![ブラストバーン]!!!」

進化と同時に覚えた様。地面の至る所からマグマが噴出。ほのおタイプ最強と呼び声高いこの技は、一気にベイリーフたちを倒していく。

「強ぇぇ…」

クロも思わず黙ってしまった。

「オラ、こっちは終わったぜ。いつまで寝てんだこのタコ。」

進化して口も達者になったようだ。ちょっとクロはカチンときたが、それは後にして。

「さあ、これでアンタだけだぜ。」
「ふん!そっちが[ブラストバーン]ならこっちだって![ハードプラント]!!」
「[ブラストバーン]!!」
「おいしいとこだけ持っていくな!オレだって![あくのはどう]!」

3人の攻撃がぶつかって…

ドカーーーんっ!

爆発とともに衝撃波が生まれ、砂煙がもうもうと立ち上がる。果たして…

「どうやらオレたちの勝ちだな。」

立ち上がっていたのはクロとマグマラシ改めバクフーン。

「もうすぐフライゴンが警察を呼んでこっちに来る。大人しくありのままを喋って更生しろ。」

クロはそう言い放つと、今度はビーダルのもとへ。

「手荒な真似をしてすみません。お怪我は…?」
「いえ、大丈夫です。あの、助けていただいてありがとうございます。」
「それは後にして下さいよ。オレたち、不法侵入者だから早く逃げないとオレたちも捕まっちゃう。多分もうすぐ…」
「おーーい!」

話したそばからやって来た。

「さあ、乗って…ってあれ?マグマラシ、進化したんだ!おめでとう。」

フライゴンは3人を乗せ、警察が来る前に飛び立つ。が…

「うわっ!バクフーン進化したから重いよ…。」
「我慢しろ!大した距離じゃないんだから…ってうわっ!危ねぇよ!」

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ハイルの家に着くと、子供たちが親との再会に喜んでいた。

「お父さん!!」

ビーダルがつくなり、ハイルもビーダルに飛びついた。

「心配かけて済まなかったな。」
「もうどこにも行かないでね。約束だよ…」

ハイルの目に涙が浮かんでいた。

「オレたちも家族に会いに帰るか!」

バクフーンが口火を切る。

(家族かぁ。)

この光景を見ていると、クロもやっぱり無性に家族に会いたくなってきた。 でも、目に浮かぶのは傷だらけになっていく家族の姿。

(オレの都合で家を飛び出したんだ。今更会いになんか行けないよな…)

「オイクロ!いつまでぼーっとしてんだよ。帰り歩きになるぜ!」
「あ、悪い悪い。今行く。」

自分の心に素直になれないクロだった。

ちゃ ( 2013/10/24(木) 00:01 )