三章 大切なもの
05
そして待ちに待った夜。皆は工場の入口に集まった。

「いい?役割分担は夕方話し合った通りだ。あと、グループはグループで、絶対にはぐれるなよ。色んなリスクが高くなるかもしれない。」
「はい!」

皆の返事を聞くと、クロは[アイアンテール]で門を破壊する。

「よし。これで通れるぞ。っとその前に。ピチュー、ピカチュウ、あの配電盤を壊しといてくれないか?」
「お安い御用!」
「わかったー!」
「「10まんボルト!」」

この工場の電気の源を破壊して、電気を通さない状態を作り上げた。

「非常電源が発動する前に最低限の仕事をしよう!」

急いで【1】【2】番建家に向かう。どの建家かはすぐにわかった。

「二手に別れる?」
「いや、これだけ近いんだ。オレに任せな![あくのはどう]!」

クロが放つビームは屈折しながら二つの建家を破壊する。

「流石クロ!」
「感動してる暇があるなら助け出すよ!二手に別れて!」

クロたちは壊れた所から建家に進入。すぐさま従業員を発見した。いきなりやって来たもんだから、中の人たちはかなり怯えてる。

「皆さん落ち着いて。オレたちはあなたがたを助けに来ました。何も危害は与えません。」

クロは冷静を装って丁寧に話す。これはグランがやっていた事を真似しているのだ。従業員たちはおかげで冷静さを取り戻し、外へ誘導した。
片やマグマラシも同様に従業員を外へ誘導した。

「よし。ここからは皆に任せるぞ。フライゴンも頼んだ。」
「了解!」

ここからはフライゴンとハイル達に誘導を頼む。これで捕まっていた人を安全に解放できるのだ。
従業員がゾロゾロとついて行く。と、ここである事に二人は気づく。

「「ビーダルがいない!?」」
「その通りだ。」

背後から歩いてくる気配を感じた。振り返ると…

「これはこれは。アンタが親玉のメガニウムさんか。そちらから登場してくれるとは…。探す手間が省けたぜ…。」

そう。やって来たのは[メガ工業]の社長、メガニウム。

「ビーダルはどこだ!」
「心配せんでいい。ここにいるぞ。」

後ろから2体のベイリーフが[つるのムチ]でぐるぐる巻にしたビーダルを連れてきた。

「この度はよくもこんなことをしてくれたもんだ。これで我社の多大な損失を被ることは確定的だ。はてさて、どう言った形で損害賠償を求めるべきか…。」
「いやぁ、生憎これがオレの仕事なもんでね。そんなことより、あれだけ働かせてるのに無賃金だなんて、お宅も労働基準法…だっけ?そんなのに違反しているんじゃないの?」
「あのまま街で暮らしていてもだな、このような者にはだな…」
「幸せが来ないとでも言いたいの?ふざけんじゃねえよ!」

プッチーンと、クロの中で何かが吹っ切れた。

「テメェ、残された家族はどうなんだよ。見てたんだろ?あれだけ小さな子供達が残されてこれからどうしろっつーんだよ!
それにな、こんなところで働ける喜びを感じるよりも家族と一緒にいられることが何十倍も何百倍も幸せなんだよ!そんな家族の幸せを奪ったお前を絶対に許さねぇ!」
「許されなくて結構。でもそうだなあ。賠償はとれなくてもお仕置きはひつようだなぁ。野郎共、やっちまえ!」

敷地内から飛び出してきたのは、チコリータにベイリーフ、ロズレイドなどと言った、くさタイプのポケモン。

「挨拶がまだだったな。オレは怪盗クロ!息子のビッパ、ハイルの依頼だ。そのビーダルを頂戴しに参上した!いざ勝負!!」

ちゃ ( 2013/10/23(水) 07:06 )