二章 仲間
03
その頃、クロはその私有地とやらにいた。

「私有地ってのはここかよ…。こんなところに侵入する奴なんかじめんタイプしか居ねえって。」

私有地――そこは雑草が鬱蒼と生えていて、地面もグチャグチャ。誰もこんなところに来たくないだろう。現に居るのはここで働いていると思われるガマガルとドリュウズだった。

「ドンさんが捕まったのはここか…」

自分の隣から声がする。

「あなたも見に来たの?」
「あ、オレ?」

突然話しかけられて思わず左を向く。そこに居たのはリーフィアとマグマラシ。

「大丈夫。僕たちはドンさんとグランさんに今回の件を依頼した者だ。君のことも知ってる。っと、場所が悪かったかな。僕たちの村がそばにあるからついて来て。是非話をしたい。」

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リーフィアとマグマラシに連れられてやって来た村を見てクロは絶句した。

「ここってもしかして…」
「そう、貧民街だよ。あ、ちょっと待ってて。」

貧民街…。小さな家々がひしめき合ってる。皆、今を生きるのがやっとって顔をしている。

「おーい村長!ドンさんのお仲間さんだよ!」
「ドンさんの!?わかった。今行くぞ。」

土手を下ったところで作業をしている人の中から一人のコータスが返事をした。
あの人が村長か。貫禄があるな、クロは思った。

「お主がドンの仲間か?」
「はい。クロって言います。」
「クロか…。グランから聞いておるぞ。いい名前だな。」
「えっと…失礼ですが村長は…」
「ワシか?名前などない。ただの[コータス]じゃよ。」

思わず「へ?」と聞き返してしまった。

「ワシたち身分の低い者が名前を付けることは相応しくないからな。
でもな、ワシたちは名前がなくても皆で助け合ってこれたのじゃよ。」
「どういうことですか?」
「ワシたちは生まれた時からこの貧民街の働き手だ。親も友達も皆が職場の仲間だ。名前がなくても皆で力を合わせて働いてるのじゃ。互いが互いをよく知っているから名前などなくても繋がっているのじゃよ。そりゃああるに越したことはないがな。」

ワンテンポ間を空けて、マグマラシが話を始めた。

「だからこそ、今回の依頼の[リーフのいし]は是非とも取り返したかったです。」
「だからこそ、というのは?」
「この下…先程まで村長がいたところで[リーフのいし]の鉱脈を見つけたのです。見つかったならいくらでも掘れるじゃないかと思うかもしれないですが、あの石は皆で掘り出した最初の石なんです。」
「ワシたちのような者達が調子に乗って期待などするからいけないのだ。」
「でも…」

マグマラシとしては何としても取り返したいようだ。
ここまで話を聞いたら、クロは無性にこの貧民街の人達を助けたくなった。
自分の名前もなければ、希望の欠片も失ったのだ。何としてもこの人達にもっと元気になって欲しかったのだ。

「その依頼、オレに引き受けさせてください。」

思わず皆に言ってしまったクロ。でももう悔いはない。
3人の返事を待たず、クロは住処に戻った。

ちゃ ( 2013/10/11(金) 01:52 )