怪盗クロ - 一章 怪盗クロ、只今参上!
08
「さて、私たちのタイプがなんだかわかりますかな?」

唐突に何を言い出すのか、クロには分からなかった。グランのその問に答えたのはワンリキーだった。

「簡単です。あくタイプでしょ。」
「だからそのようなこそドロ稼業でしか食っていけないのだろ?」
「全くその通り。でも、神様は私たちを見捨てなかった。こんな仕事にぴったりのわざをあたえてくださったのですから。」
「わざ?」

エンブオーとワンリキー、クロの頭上にはクエスチョンマークが浮かんでいる。

「それではご覧に見せましょう。[どろぼう]!」
「「「!?」」」

グランの巧みな話術に捕まり、[するどいキバ]に集中していなかったエンブオー。ずっと手に持ったままだった。故に、グランの使った[どろぼう]にはまってしまったのだ!

「あっ!」
「確かに[するどいキバ]を頂戴しましたよ。本当はその[リーフのいし]とかも頂戴するつもりでしたが…外が騒がしいのでまたの機会にしましょう。クロ、行くぞ!」

完全にクロは呆気にとられていた。ここまでの犯行(?)にかかった時間は1分するかしないか。グランの手際の良さにびっくりした。
そして退散も早い。来るときに来たトンネルを潜って外に出た。しかし…

「そこまでだ!こそドロ共め!」

外に出た途端、待っていたのはたくさんのゴーリキーやカイリキーだった。

「残念だったな。うちの自慢の警備員たちだ。こいつらに捕まったらただじゃ済まないぜ!」

後ろからエンブオーとワンリキーも出てきた。

「ひい、ふう、みい…ざっと15体くらいか。だったら任せたぜ!」

グランが突然空に向かって叫んだ。

「ほう、神頼みかな?だか、あくタイプのお前たちにはすがる神様はいないだろうに。」
「それが居るんだな。ほら!」

みんなが上を見上げた。そこには大きな黒い影が写ってた。

「そこのブラッキー、伏せろ!」

言われるがままにクロは伏せた。

「ほらほらほら行くぜ![つばめがえし]!」

黒い影――ドンカラスは次々とゴーリキー達を倒していく。15体が迄はそんなに時間がかからなかった。

「それでは失礼致します。クロ!ドン!行くぞ!」

グランがドンカラスの上から呼ぶ。クロは言われるがままにドンカラスに飛び乗る。
クロが乗ったことを確認すると、ドンカラスは上昇を始めた。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「そこのブラッキー。お前がグランと言う新入りか。」
「はい。クロです。」
「いいよ。グランと同じようにタメ語で。あ、オレはドンカラスのドン。よろしくな。」

やっぱり気さくなあくタイプに違和感を感じるクロ。

「本当、マジサンキューな、ドン。」
「本当だよこの野郎。毎度毎度ぎりぎりのことをしやがって。少しは事後処理の身にもなってみろ!」
「事後処理?」
「ああ。奪い返した物や依頼人からの手紙の運搬はオレが担当しているんだ。実行犯のコイツに足がついたら困るからな。」
「正義とは言え、オイラ達がやっているのは違法行為だ。でも、これはオイラ達にしかできない。なら一人でも多くの人を助けてあげられる方法をとるしかないよね。」
「オレも、あくタイプが皆と仲良くできる世界にしたい。グランの考えに賛同した身なんだ。これぐらいのことは覚悟している。」

クロは、グランとドンの生半可じゃない気持ちを感じた。たかだかこそドロでも、あくタイプであるが故に首がはねる可能性だってある。それでも徹底的に「真の悪」と戦う二人に感動した。

「オレも…二人と一緒に戦ってもいいかな?怪盗クロとして、オレにもできることはあるはず。二人の力になりたい…。」
「オイラは大歓迎だよ!ドン、お前もだよな?」
「異論は挟むつもりはねぇぜ!それなりの覚悟があってそういったんだろ?その言葉、嘘じゃねぇな?」

クロはコクンと頷く。それは『星の里』を飛び出たときより強い気持ちだった。あくタイプとしての覚悟を決めた今、過去を捨てた自分に未練はない。そう、クロは思った。



■筆者メッセージ
名無しさんへ
一読頂きありがとうございます!
一章を完結させる事ができました。
これからも頑張っていきます!
ちゃ ( 2013/10/05(土) 22:08 )