06
しばらく掘り進めていたグランが手を止めた。
「どうしたの?」
「やっぱり、これからオイラが何をしようとしているのか教える。腰をおろして。」
グランが座ったのを見て、慌ててクロも座る。
「オイラはグラン。人呼んで怪盗グラン。」
「…怪盗?」
普段のグランからは全く想像つかなかった。
「あくタイプと他のタイプの隔たりを無くそう、とか言っているのに結局盗みを仕事にしているのか。」
「お前から見たらそうかもしれない。でも…」
「でもじゃないよ!結局自分の悪事は肯定してもらおうなんて考えはあま…」
「頼む!聞いてくれ!!」いつもは温厚なグランが叫んだのにクロは驚いた。と同時に恥ずかしかった。
グランもついついカッとなってしまったことに
「…すまん。」
と言った。我に戻ったグランはいつもの優しい声で話始めた。
「でも聞いてくれ。悪には悪でしか対抗できないんだ。」
「悪には悪でしか対抗できない?」
コクン、とグランは頷く。
「これからオイラが狙うものは[するどいキバ]。」
「なんで[するどいキバ]なんか…」
「依頼主はグライガー。これを使えばグライオンに進化する事だって可能だ。でも、そのグライガーにとってこの[するどいキバ]は大切なものだ。何でもお爺さんの形見だそうだ。そんな大切なものをここの主人のエンブオーに権力と武力で奪われた。」
「エンブオー…。権力…。えっ!?あの有名な…」
「そう。世界的なコレクターのエンブオーだ。貧民街に住んでいるグライガーは大富豪のエンブオーに対抗する術もなく、あっさりと奪われた。オイラはそれを取り返しに来たんだ。
やり方が汚いのは分かっている。でも、オイラが真の悪と戦うには悪でしか対抗できないんだ。それをわかってもらいたくて一緒に来てもらったんだ。」
それを聞いて、クロはさっきグランに不信感を持った事を恥じた。
「グラン、ごめん。グランが言っていた真の悪っていうのは権力を横暴して自分の好き勝手やっている奴らのことだったんだね。」
「そうだ。だからこそ、そういう奴と戦えるのはあくタイプだけなんだ。」
「ねぇ。オレ、何か手伝いたい。役に立つかわからないけど。」
「そうだなぁ。オイラのスタイルは真っ向勝負!一緒に戦ってくれ!」
クロとグランの共同戦線が今から繰り広げられる……。