05
グランが出かけてから2時間。一向に帰ってくる気配がない。
「どうしたんだろう?ケガとかしたのかな?」
外を探しに行きたいのはヤマヤマだが、身体が痛くて動けない。クロにとってかなりもどかしい時間が過ぎる。
「ただいま…」
「グラン!」
思わず叫んだ。
「グラン、どこへ行ってたの?」
「あれ?ちゃんと言ってなかったっけ?バイトみたいなもんだよ。」
「バイト?」
「そう。ケガ治ったら一度クロにも紹介してやるよ。」
そう言ってグランは部屋の奥へ行く。
「オレに紹介したいバイト?」
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グランの懸命な看病のお陰でクロは頬の腫れも引き、立って歩けるまでに回復した。
「うん。大分回復したようだね。」
「まだちょっと痛むけど。」
「無理は禁物だよ。オイラバイトに行くけど、ついてくるとか後をつけるとかしちゃダメだよ。」
「OK!」
グランはクロの返事を聞いて、外に出た。
「とか言って、まあこっそりついて行っちゃうんだけどね…」
外から音がしなくなると、クロはそっと外に出た。
抜き足差し足忍び足…。相手にバレないように歩くのはあくタイプの専売特許。こっそりグランの後をつけて行ったのだが…
「やっぱりね。」
突然振り向くグラン。どうやらグランにはすべてがお見通しのようだ。
「そうなるとは思ったよ。良いよ、早く来い!」
そのままクロはついて行った。
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グランが歩みを止めたのはまもなくの事だった。
「ここが職場?」
それは超大きな大豪邸だった。なんでこんな家があくタイプなんかを雇うんだろうって思うくらい。
「…クロ。これからオイラは法に触れることをする。でも、それをしっかり見てて欲しい。」
「法に触れること?」
「ああ。オイラが今までバイトだと言っていたこと。それは、真の悪との戦いなんだ。」
「真の悪?」
「見ていればわかるさ。」
そう言ってグランは顔に仮面と帽子を付けると、[あなをほる]を使って塀の中に進んでいった。クロも慌ててその穴を進んでいく。
「グランの言う「真の悪との戦い」って…?」
クロにはずっとこのことが引っかかっていた。