04
どれぐらいの時間が経っただろうか。クロはふと目を覚ました。さっきまで店の前にいたはずなのだが、今クロはどこかの部屋の中にいるようだ。
「ここはどこ?」
もっと周りを見ようと体を起こしたとき、身体中に激痛が走る。
「イテッ!!」
「あ、気がついたみたい!ちょっとじっとしててね。治療中だから。」
クロは人の気配を感じた。でも、顔を見ようにも身体中が痛くて振り向けない。
(でも、こんなあくタイプのオレを助けてくれるポケモン…すごい親切な人なんだろうな…)
そんなことを考えながら治療を受けていた。
「あとはこの包帯を切って…よし!終わったよ!」
声の主はクロの顔の方に回る。
「ども…ってえっ!?」
「いや、そんなに驚くこと無いでしょうよぉ。同じあくタイプなんだから。」
「いや、だからだよ!」
クロが驚いたわけ。それは声の主があくタイプ中のあくタイプ、ザキングオブあくタイプ(と前の街の溜まり場で言われていた)グラエナだったのだから。
「あくタイプだってそれぐらいするさ!」
意外だった。前の街にいたときは、仲間同士だろうと助け合うことは一切なかった。こうやって、何も咎めることなくクロのことを助けてくれることが、あくタイプとしてかなり新鮮だった。
「そういえば自己紹介がまだだったね。オイラは見てのとおりグラエナのグラン!歳は13。よろしくな。」
「オレはブラッキーのクロ。歳は12…です。」
「なんだ、一つしか変わらないのか。」
「逆に一つしか変わらないんですね。」
「敬語はいいよ。オイラそういうの嫌いだし。」
「わかり…わかった。」
「ハハハハッ!お前面白ぇな!ケガ治るまでここにいていいぞ。何か食うか?」
不思議だった。あくタイプには人の為に働く何てありえない。こんなことはあくタイプの中ではタブーに等しい。なのに、なぜグランは自分に至れり尽くせりなのだろうか?クロにはちっともわからなかった。
「ねぇグラン。どうしてオレに何でもしてくれるの?あくタイプならこんなことをするのはありえないってわかってるよね?なんでそんな…」
「オイラ《あくタイプだから》とか《あくタイプなのに》とかそういうの嫌いなんだ。あくタイプだから何なの?そうやってあくタイプって隔たりを作っているのは自分たち自身だと思う。だから、オイラはあくタイプの隔たりを無くして、他のポケモン達と仲良くなれる世界を作ること。それがオイラの夢なんだ。偉そうに言ってゴメンな。でも、進化前はノーマルタイプだったクロは分かるはず。」
確かに、とクロは思った。結局、なんで周りから嫌われているのかって、自分たち自身で周りと壁を作っているのだ。何か悪ぶって調子に乗って、最後は孤立する。そうしてあくタイプは嫌われの対象になったのだ。だから、グランはそれを無くそうと行動を起こしているんだと思った。
「まあ、ケガ治るまでしっかり療養に努めてくれ。ちょっとオイラ出かけるところがあるから行ってくるからな。留守は頼んだぞ。」
そういうと、グランは何処かへ行ってしまった。