03
村を出てから2か月が経った。この2ヶ月間、クロは様々な街へ行った。どこへ行っても殴られ、身体がボロボロになっていく。
今クロは、とある街のあくタイプの溜まり場に落ち着いていた。落ち着いていたと言うより、そこしか自分を受け入れてくれる居場所が無かったのだ。
「オイクロ!ジュース飲みてぇなぁ。」
「…わかりました。」
現状、一番の新入りであるクロ。あちこち使われるのは日常だった。
そんなある日だった。ボスのレパルダスに呼ばれた。
「あなた…。ちっとも《悪》の一員としての自覚がある様に思えないんだけど。そのへんどうなのかしら?そのへん試させて貰おうじゃないの。」
「…試すとは?」
「何でもいいわよ。あなたが《悪》の一員かどうか見させてもらうわ。」
クロは正直かなり嫌だった。ここにそこそこしばらく過ごしているが、やっぱりまだ《悪》にはなれない。でも、居場所が無くなる方がもっと嫌だった。
「…わかりました。」
それから20分後、クロとレパルダスは近所の商店にいた。
(これはオレのけじめだ。)
自分にそう言い聞かせてクロは店に入ると、店員からも見えない店の角に進む。ここは木の実とかの売り場だった。クロは周りを確認して、持っていたカバンにオレンのみを3つ詰める。何事もなかったかのように店の外に出た。
「レパルダスさん、これで…あれ?」
店の外にレパルダスの姿はなかった。慌てて周りを見渡していたとき、背後に不吉な気配を感じる。
「お前、万引きしただろ。」
振り返ると、3体のカイリキーがクロを囲んでいた。
「いえ…何のことですか?」
「とぼけるな![からてチョップ]!」
「[きあいパンチ]!」
「[クロスチョップ]!」
「っがァっ!」
この街に治安部隊は無いようだ。だってこんなにボコボコに殴ってても、万引きしても駆けつけてこない。クロはやられるがままだった。身体中から血がながれ、頬は大きく腫れている。
「これだからあくタイプは…。てめぇらがしゃしゃり出てくんじゃねぇよ。」
1人がそう言い放つと、カイリキーは何処かへ行った。その時にはクロの意識は朦朧としていたのだが、レパルダスが戻ってきてこう冷たく言い放ったのは聞こえた。
「満足に万引きもできないなんて、《悪》の風上にも置けないわ。もう一生私の目の前に現れないで頂戴。」
それ以降、クロは何も覚えてない。