第十九話 ”サンシャイン”での死闘!?VSメリィ&ギル!!【後編】
メリィを(あっけなく)倒したホノオは、スカイとめんどくさそうにハイタッチをして、スカイに「作戦(笑)」などと、言われていた。
どうやら、ホノオが戦い終わったあと、ナージに作戦のことを説明し、それを聞いたナージが、スカイにいったらしい。
当然の如く、ホノオは嫌そうな顔をしていたが、ナージに「言わないで、なんて言われてないからいった」みたいなことを言われていた。
「…っと、そんな下らないことより…コーフィは…」
「ええ…未だに一度も攻撃していないわ…」
コーフィは自身の兄であるブラッキー、ギルに攻撃できず、一方的に攻撃をくらったり、よけているだけだった。
「どうして…どうしてっ!!」
「…”シャドーボール”」
「…っ!”凍える風”!!」
このようにさっきからどうして兄と戦わなければならないのかと半分泣きそうな顔で戦っていた。
本当は誰よりもその理由が分かっているのだが、”それ”を認めたくなかったのだ。
―あの日、私たちヴェンスター家のみんなは襲われた。きっとホノオが倒してくれた奴やモクの仲間だろう。兄さんと戦わなければならないのは、きっとそいつらに操られてるだけ―
一旦気絶させればとりあえず”サンシャイン”からは出て行ってくれるはず…
折角会えたのに“敵”として現れるなんて、夢にも思っていなかった。
―でもそれは、私があの一家にいたからに違いない―。
私は、気付いた時には、周りに誰もいなかった。
セブンだって、ギル兄さんだって、本当は、”本当”の家族じゃない。
私は、セブンたちに助けられるような形で拾われ、今まで、幸せに暮らしていた。
拾われた時はきっとまだ2歳か3歳くらいの年だったはずなのに、今でも、鮮明に覚えている。余程心に刻まれていたのだろう。
セブンだってまだその時は生まれたばかりらしく、私より一つ年下だった。
ギル兄さんはヴェンスター家の長男で、私より二つ年上だった。
他のみんなは殆どが私と同じ年で、セブンを合わせて二人くらいが、私より年下だった。
みんなが襲われたのは、私の持つ、”不思議な能力”を、狙う輩が襲ってきたから―
なぜ襲われたのかは知らないけど、その能力を悪いことに利用する、ということだけはみんなも分かっていた。
とにかく必死で戦ったが、その時は、戦いに慣れていなかった訳でもないのに、みんな負けてしまった。たった”一人”相手に―。
今思い返せば、あの一家に私が住み始めてから、ずっとみんなの足を引っ張っている気がする。
襲われた後、私とセブン以外はみんな敵に捕らわれてしまったと思う。
―私はあの時、逃げてしまった。みんなをおいて、逃げてしまった―。
きっとこれからもみんなが私たちの能力を狙い、襲ってくると思う。
今回のこのことだって、当然の報いなのかもしれない。もっとも、こんな報い、この世で一番嫌な報いだけど。
…だけど、これは、逃げた私に対して、捕えられたギル兄さんから、「逃げたくらいなら、今までそこらへんでフラフラしてただけじゃないだろうな」とでも、言っているように、私は、思えた。
我ながら向こうは操られているだろうのに、そう分かっていたのに、そう思えてしまった。
そして私は―
―ギル兄さんに、攻撃を仕掛けた。
「…!!」
今まで私が攻撃していなかったから驚いたのだろう、今までの冷たい表情は消え、目を大きく見開いて、「面白い」と言わんばかりに、再び攻撃してきた。
「こっちだって決心がついたんだから!!”凍える風”!!」
「”電光石火”」
”凍える風”を繰り出してまずは様子を見ようと思ったけど、”電光石火”で素早く移動し、よけられる。
「なら今度は…”吹雪”!」
「”守る”」
…やっぱり簡単に攻撃を当てさせる気はないみたい。まあ、当たり前のことだと思うけど。でも次こそは…と思ったけど―
「”氷のキ…」
「”不意打ち”」
「きゃっ…!!」
「コーフィ!!後ろ!」
”不意打ち”をもろに食らい、バランスを崩してしまった。スカイが私に向かって叫んでいる。
その理由はすぐ分かった。兄さんが”シャドーボール”を今にも撃とうとしていたからだ。
”不意打ち”を打った後、すぐさま”シャドーボール”を作って打つ準備もしていたのだからやはり兄さんはすごい。
でも…私だって!!
「”凍える風”!」
すぐに切り返し、タイミングが良かったのか、”シャドーボール”を打ち返した。
「……っ!」
「今よっ、”吹雪”!!」
「……あッ、がアアああっ…!」
そして、”吹雪”を直撃させた。
かなりダメージをくらったのだろう、兄さんは苦しそうに声をあげた。今は敵とは言えど、兄が傷つくのはやはりつらい。
でも、もう少しで…!?
「…”悪の波動”…!!」
「え…?う、そ……!?」
『コーフィ!!』
…完全に、油断、していた…まさかあそこで動けるなんて…兄さんの”悪の波動”を
もろにくらってしまったから体が動かない…スカイたちや”サンシャイン”のみんなが私を呼んでいる…
…勝たないと。そう自分に言い聞かせても体は言うことを聞いてくれない。
お願い…今回だけでいいから…動いて…
…とその時、〈声〉が聞こえた。
(まだあきらめてはなりません。今は敵の、あのブラッキーを倒すのです。そのために、貴方にこの力を…)
「…今のは…!そうよ、こんなところで私は倒れるわけにはいかないわ…今ある、私のありったけの力をくらいなさい、兄さん!!」
兄さんは私が立ったのに驚いたが、すぐに身構えた。
―私だって、みんなの役に立つことくらい、できる―
私の体が光り、氷のエネルギーが集まっていく。そして、今、その力を解き放つ―。
「”
氷の花火”!!」
それはまるで、兄さんだけを狙っているかのように。
そのすべてが兄さんに直撃した―。