第五話 救世主
生い茂る草の中に倒れこんだまま、目を覚ます気配を全く見せない1人のポケモンがいた。
そのポケモンの表情は、ひどく衰弱していて、何か言葉を発している。
「私のことはいい…から…ホノ…オ達…を…助け…て…」
そう言い残し、硬く目を閉ざしてしまった。
「ううっ…ここは…?」
深い眠りから覚ましたポケモン、ライチュウのスカイが起きた場所はさっきまでいた地面と違い、柔らかい葉の上だった。そして…
「あ、気がついた?キミ、と〜っても弱っていたからここまでつれてくるの、大変だったんだよ?」
スカイは目を覚ましたとたん、いきなり名前も知らないポケモンに話しかけられた。勿論、スカイはいきなりの出来事だったため、困惑してしまった。
「あ、あの〜、君はだれ?」
スカイはとりあえず、そのポケモンの名前を窺った。
「あ、そういえば自己紹介がまだだったね。ボクはセレビィのナージ。ナージ・ヴィーナスだよ。気軽にナージって呼んでね」
そう名乗ったセレビィのナージは今度は逆にスカイに名前を窺った。
「へえ、スカイって言うんだね。よろしく」
2人はそう軽く挨拶をすました。するとスカイは何かを思い出したかのように突然叫んだ。
「そうだ!!バクフーンのホノオとあのグレイシアは!?ナージ、何か知らない!?私のほかにも毒で苦しんでいたバクフーンとグレイシアが近くにいたはずなんだけど…」
スカイが声を荒げたことに少々ビクッとしたナージだったが、すぐにその質問の答えを述べた。
「嗚呼、そういえばそんなポケモンもいたよ。彼らもここまで運んだから、ここまで運ぶのにかなりの時間がかかったよ」
そうナージに言われ、スカイの心は少し落ち着いた。
「有り難う、ナージ。ところで2人は?」
とりあえずナージにお礼を言い、スカイは2人が何処にいるのかを聞いた。
「えっと、確かこの部屋に休ませてるよ。そろそろ起きるんじゃない?あ、それとモモン汁を飲ませといたから、毒はもう抜けてると思うよ」
「そう、良かった〜…もうどうなるかと思ったわ…」
「それじゃあ、2人の部屋に案内するからついてきて」
「ええ、分かったわ」
こんなやりとりをしながら、スカイとナージはホノオたちの部屋へと向かった。
「ううっ、オレはどうなったんだ…?」
そう呟いたのは、ホノオだ。ホノオも目が覚めたらしい。そしてそこに…
「ガチャ」
「ホノオ!!起きてたのね!!良かったわ…本当に良かった…!!」
スカイとナージが入ってきた。ホノオも状況を理解できずに困惑している。
「スカイ…?ここは何処なんだ?」
ホノオがスカイにそう聞くと、スカイは答えた。
「ここはね………かくかくシキジカ……」
「…そうか。オレ達は助かったのか…有り難う、ナージさん」
「いや、いいよ、お礼なんて。それより”さん”付けはやめてね。ボク、堅苦しいの、苦手だから」
「そうか、なら改めて有り難う、ナージ」
ホノオはお礼を言った。それと同時にコーフィが目を覚ました。
「…あれ、体が軽い…それよりここは…?」
コーフィも困惑している様子だ。今度はホノオがコーフィに答えた。
「…そうなの。有り難う。…べ、別に感謝してるわけじゃないんだからね!!」
コーフィの性格を知らなかったスカイとナージは少しの間、固まったという。それとコーフィはあとでスカイ達にツンデレのことをウワサされたことには気付かなかったらしい。
話は変わり、ナージが深刻な顔をしてスカイ達にこう告げた。
「あ、そうだ。君たちに話したいことがあるから、ちょっとこっちの部屋まで来て。」
スカイ達は何の話なのだろう?と思いながら、ナージの示す方向へ向かった。
スカイ達はナージに言われた通りの場所に座り、ナージの言葉を待った。そしてナージが口を開いた。
「コホン。さてと、みんな集まったね。今から話すことはとても重要なことだからよ〜く聞いて」
ナージが話す内容、それはスカイ達にとって、とても思いがけないものだった。
「今から話すのは…
君たちの持つ、
不思議な能力についてだよ」