第三話 僕っ娘とツンデレ
〜「そんなもの、そのグレイシアが持つ不思議な能力に決まってるじゃないか」〜
その言葉を聞いたとたん、スカイとホノオは真剣な顔つきになる。いや、青ざめるといった方がいいのだろうか。
「なんであ・ん・た・が!!不思議な能力のことを知っているの!?」
そして不意にスカイはどなった。その直後、ホノオに呆れられた。なぜなら自分も能力を知っているかのように怒鳴ったからだ。そしてそれを聞き逃すようなエルフーンじゃなかった。
「…キミ、もしかしてキミもその能力を持ってたりする?ならまずキミを倒す必要があるね。そこのグレイシアならすぐ捕まえれそうだから」
「……あ、しまった……」
「あんのバカ……本当にお喋りすぎるだろ……!」
そして狙われる対象となったスカイは戦闘体勢に入る。
その頃ホノオは…
「大丈夫か?」
グレイシアの手当てをしていた。グレイシアはコクン、と頷き、ホノオの顔を見てこう言った。
「あの人は大丈夫なの?」
その問いにホノオは頷いてこう言った。
「あいつは抜けている所が多いが、いざとなるとやってくれるヤツだ。オレはホノオ…お前は…?」
ホノオは自己紹介をした。そしてグレイシアは顔を赤くしてツン、とすましてこう答えた。
「…コーフィ。ちゃ、ちゃんと覚えておきなさいよね!!」
なんと、彼女はツンデレだった−−−。
そんなことを知らないスカイは、エルフーンのほうを睨んでいた。
「嗚呼、言い忘れてたケド、僕はエルフーンのモク」
エルフーンが名乗り、そして2人は戦闘体勢に入る。スカイも自己紹介をしたが(尤も敵に自己紹介なんてしなくていいが)、お喋りの割には、礼儀が良かった。それと同時に(声の高さからして♀ね…つまり僕っ娘か…)と、どうでもいいことを思っていた。実に呑気である。
「それじゃ、僕から行くよ。”宿木の種”!!」
まずはエルフーンなら大抵が使う技、”宿木の種”をスカイに放った。だがスカイはそれを軽やかにかわし、頬の電気袋をバチバチッ、とならした。
「行くわよ、”10万ボルト”!!」
「おっと、”影分身”!!」
スカイが”10万ボルト”を放ったと同時にモクは”影分身”で自分そっくりの分身を作り出し、それで対処した。
もうお察しの方もいるであろう。そう、このエルフーンのモクの戦法、それは―
―エルフーンが得意とする、いやらしい戦い方なのだ。
既にモクはどんどん”影分身”を積み、殆ど、というか攻撃を当てるのが皆無に等しいほどまで積んでいた。
詰んだ。スカイはそうも思った。
スカイには一応、”電撃波”という必中の技があるのだが、この技は電気タイプで、草タイプのエルフーンには効果はいまひとつで、決定的なダメージを与えることができないのだ。
連発しようにもこの技はpp(パワーポイント)が少ない技なのだ。
…かといって連発しても大したダメージにならないのは確かだが。
「もう!これじゃ、何もあたんないじゃない!!取り合えず”電撃波”!!」
そう言い、スカイはタイプ相性などガン無視し、”電撃波”を撃ったのだった。
モクには案の定、”タイプ相性も知らないの?”と言われたがそんなのスカイにはどうでもよかった。
そしてスカイvsモクの戦いから10分が経過した時―
バシィッ!!
そう鈍い音が響いた。スカイがようやくモクに”アイアンテール”をクリーンヒットさせたのだ。
「よしっ!!」
スカイは勿論喜んだ。だがそれはモクの怒りを買うことになってしまったのだ。
「…僕の体にキズを…?冗談じゃない!!お前なんてもう許さないぞ!!」
モクからはすごい勢いで”どくどく”が発せられた。
「…!?まずい、くっ!?」
スカイはギリギリでモクの”どくどく”をかわした。
だがそれは、スカイが狙いだったわけじゃなかった。モクが不適な笑いを浮かべていた。スカイはまさか、と思い、恐る恐る、後ろを振り向いた。
そこには、猛毒に苦しむ、ホノオとコーフィの姿があった。