05
時刻は午後3時を回った。約束の時である。
「ではルールを発表する。」
ドサイドンが俺たちをホームベースのところに集合させ、ルール説明を始める。
「お前さん達はゴーリキーから1イニング以内に1点をとるのだ。1点をとれたらお前さん達の勝利。ゴーリキーを連れていけ。逆に点をとれなかったらゴーリキーの勝ち。ゴーリキーにはこれからも炭坑で働いて貰うぞ。」
「わかりました。お互いいい勝負をしよう!よろしく。」
俺とゴーリキーで握手を交わすと、互いにそれぞれのベンチに向かった。
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1番 ライト
2番 リフィル
3番 エン
4番 俺
5番 エド
「これで今日は行くぞ。良いな?いつもの俺たちの野球をすれば確実に1点をとれる。皆で1つになって戦おう!」
『おぉーーーっ』
ベンチ前で円陣を組んだ。今日はなんとしても勝たなければ!
ゴーリキーの投球練習も進んでいる。キャッチャーはドサイドン。流石高校通算850奪三振。変化球はそんなにないからある意味狙い目かもしれない。もしくは170q/hに真っ向勝負するか。
6球の投球練習が終わったようだ。
「さあ、先頭出塁だ!」
ベンチから打席に向かうライトに声をかける。
「プレイっ!!」
主審のドッコラーのコールと同時にゴーリキーが一球目を投げた。
「《アイアンテール》!」
コツンとボールをかすめる。初球はファウル。しかしよくついていけたな。
続く二球目。ゴーリキーが投げたのは《きあいだま》で球威の増したシンカー。流石のライトもこれは仕留められなかった。が、技あり。何とかファウルに持っていった。これでカウントは2-0。
そういえばそんなに変化球は多彩なわけではないって聞いていたが‥。
三球目はゴーリキー渾身のストレート!さっきのよりも圧倒的に速い。
「《アイアンテール》!」
ポコンという音と共にふらふらっと打球は上がってく。しかし、運がいいのか、センターとレフトとショートがお見合いをしてくれてヒットになった。ラッキーな形で出塁だ。
続くバッターは2番のリフィル。ここは手堅くいきたい。
「ライト!リフィル!」
《送りバント》のサインを出す。しかし二人から返ってきた視線は
「当たりめーよ!あわよくば3塁まで到達しちゃうぜ!」
「もちろん!サイン出さないでもわかってるよ!」
いやあ頼もしい。俺はそこまで心配しなくてよかった。
それが証拠にゴーリキーが一球目を投げたとき。
「《でんこうせっか》!」
「《てだすけ》!」
ライトのスタートはベストタイミング!そして《てだすけ》の効果でスピードUP!なおかつバントをきっちり三塁線に決める。あまりに転がした場所が良すぎたからリフィルもセーフになった。ノーアウトランナー1.2 塁。絶好のチャンスだ!
ここで打席には3番のエン。もちろんフリーのサインを出す。
ゴーリキーが振りかぶって一球目を投げた。
「《ほのおのパンチ》!」
当たりはよかった。しかし打球はゴーリキーのグラブの中に『パシィッ!』と収まった。ピッチャーライナーで1アウト。
「クソッ!すみません。チャンスだったのに。」
「気にするな!まだ1アウト。あと二人残ってるんだ。応援頼むぜ!」
ネクストバッターズサークルですれ違った俺ら。互いに声をかける。
「オラいくぜ!」
バットをブンブン振り回して打席に入る。スゴいワクワクする!
「《きあいだま》!」
セットポジションから投げたのは超速い真っ直ぐ。インコースにズバッと決まる。
「ストライク!」
主審のコールが響く。ここはもう割りきるに限る!今の球を忘れ、気持ちを切り替えようとした。
続く二球目。さっきのフォームと全く同じフォームで投げたのはスライダー。ストレートと同じ位のスピードで横にスライドしたもんだから、スカッ!とバットが空を切る。これで2-0。完全に追い込まれた。
その後、三球目、四球目とスライダーで攻めてきたが、三球目はカットし、四球目はボールだった。カウントは2-1。
そして続く五球目。インコースに真っ直ぐで攻めようとしたのだろう。しかし、ボールは俺を目掛けて一直線。生憎に《まもる》系の技を覚えてなかったから咄嗟に背中を向けた。その瞬間、ボフッと鈍い音がして背中にボールが当たった。
「デッドボール!」
そりゃ170q/hが当たったら痛いで済まないよ。でも、痛がってはいられない。どうにかして平静を保ちつつ一塁ベースに向かった。これで1アウト満塁。超大チャンスだ!
5番のエドが打席に立った。勝負は初球だった。
「《きあいだま》!!」
さっきよりも更に加速したストレート。しかし‥
「《サイコカッター》!」
急所に当たりやすい技、サイコカッター。技の効果を把握していたエドに軍配が上がった!打球はセンターの頭上をグーーーっと伸びていって、バックスクリーンに飛び込んだ!
この勝負、エドの満塁ホームランで俺たちは勝利を修めた。
「おめでとう。いい試合だったね。それじゃあ約束だ。よろしくな。俺はゴウと呼んでくれ。」
「OK。俺はバーン。右から順に(紹介だから中略)だ。よろしくな。」
俺たちは再び固い握手を交わす。
これでピッチャーを一人獲得した。あとはゼル達がもう一人獲得できれば俺たちのチームが成立する。朗報を待とう。